いしずえ

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:二 政治行政の能率の低下 弱点)

 大体政治というものは、行政統治を中心にしなければ、その機能を充分に発揮することができないものである。

 古来より民主制、貴族制、共和制などの政治形態があるが、これらはみな統治権力を中心に政治を成り立ててきたものである。

 しかるに近代におこった民主制は、主権在民を楯にとって立法議会を国家最高機関として、これを中心に政治の運営を図ろうとする行過ぎが見られる。


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  1. 2012/12/01(土) 00:06:35|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:二 政治行政の能率の低下 弱点)【続】

 近代の民主政治は、近代文明の進展に伴っておこって来た無組織の、しかも尨大な大衆を基盤として成立する政治現象であって、これを形成する大衆は、伝統、歴史、権威、道義などの独自的価値を捨てて、漸次、選挙権をもつに至ったところのいわゆる政治的に無関心な群衆である。彼等は資本主義と自由競争の中でもまれ、唯物主義一色に塗り潰された類型的大衆である。しかも近代主義的イデオロギーを身につけた利害打算の徒で、暗示によって左右される群衆心理を典型的にもつところの群衆である。かかる大衆に参政権を与え、それを基盤として成立する議会が、われわれに満足するような政治をもたらすということはまずあり得ないことである。政治の本質は、本来政治権力にあるのであるから、政治は統治力として存在する行政を中心にしなければならぬものである。が、民主政治は厖大な無組織の大衆を背景とする参政権におくが故に、行政を副次的作用として取り扱うようになり、且つ大衆を離れて政治することができないため、自然に参政権をもつ大衆順応の形をとり、大衆迎合の、いわゆる利害に身売りするような政治をつくりあげることになる。行政の非能率化と政治の堕落はここに発する。さらにまた民主国家における代議制は、国民から選ばれた単なる地域代表であるため、専門的経済問題や複雑な社会問題を解決してゆくだけの能力がない。故にどうしても議員の外に専門的知識や技能を有する官僚に依存しなければならなくなる。議会で討議される法案や、政策案もみな議会外の官僚や専門家によって立案され計画される。かくの如く、国家意思の決定が官僚や専門の学者や政党の指導者等によって左右されるようになるということは、独り議会の権威を損ずるのみでなく、行政および権力の価値が失われ、一方、官僚をして独善的行動をとらしめ、汚職・賄賂・収賄を横行させ、根本的に政治を崩壊せしめることになる。これらはみな行政を軽視した結果おこってきたものである。


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  1. 2012/12/02(日) 16:34:14|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)

 民主国家における議会政治の動揺は第一、第二の理由によってもたらされたものであるが、とりわけ資本主義の独占化によって促進されている。


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  1. 2012/12/03(月) 00:33:36|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 資本主義は、その勃興期において、特権的な商業資本家等が重商主義の保護制度を固執し、社会経済の発展を妨げていたのに対し、その束縛や制限から自由解放、自由放任を要求し、自由主義を原則として国家権力の干渉政策を覆えし、近代的大量生産組織を築き上げ、自ら無限の地域と富に向って開拓の歩を進め、自由貿易、経済交渉を通じて植民地開拓をして行なったのであるが、十九世紀の後半に至ってこれが行詰り、後退を余儀なくされたのである。

 かくて各国は、武力を背景に帝国主義的対立抗争を続けることになった。

 一方、国内においては、アダム・スミスが予言した如く、利己的動機から出発した資本家等は、見えざる手に導かれて、社会全体の利益を増進せしめることになったのであるが、資本主義の進展に伴い重大な弊害をもたらすことになった。


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  1. 2012/12/03(月) 10:51:02|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 その第一は労働者と資本家の対立であり、第二は恐慌の発生である。

 第三は独占資本主義経済の確立であり、第四は階級斗争である。


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  1. 2012/12/03(月) 15:05:57|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 第一の労資の対立は利潤の分配についておこったもので、

 資本家側は、
 (1)労働時間の延長
 (2)賃金引き下げ
 (3)機械力による雇用者の縮小を計る

 ということであるに対し

 労働者側は、
 (1)失業者対策
 (2)労働時間の短縮
 (3)賃上げ
 (4)貧困者対策

 をもって対立する。


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  1. 2012/12/04(火) 12:59:54|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 第二に恐慌は周期的に発生し、それが漸次増大延長され、やがて多くの企業が破産することになり、また恐慌のあとには決まって不況がおこる。


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  1. 2012/12/04(火) 13:39:03|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 第三に独占資本主義への移行によって、自由競争の結果、弱小企業は淘汰され、大企業間の競争が激烈化して共倒れの危機を孕む。

 そこで大企業は競争を避けて利潤を確保するために、相互に独占を形成するようになる。

 企業連合(カルテル)金融共同体(コンツエルン)企業合同(トラスト)の形で現われる。


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  1. 2012/12/04(火) 13:51:14|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 第四は階級斗争であるが、独占資本主義が労働階級に反映し、自己防護のために階級を武装化して、これに対立するようになる。ここにおいて資本主義初期の希望と楽観は全く崩れ、自由放任と自由競争は終息し、外に在っては帝国主義を取らざるを得なくなり、内に在っては階級の対立による階級斗争を尖鋭化せざるを得ないこととなる。この段階に至るともはやすべてが階級中心となり、階級利害が支配的決定力となって、あらゆる心理や原理をも歪曲せられるようになる。自由は放縦となり、競争はルールを否定して斗争と変り、私有や所有は独占的支配となり、自然的調和は権力的支配と隷属に変るのである。従って政治上における政党、政策、イデオロギー、多数決、議会政治の諸原理等みな階級的に歪められ、個人の人格、民族共同体の如きも認められず、対立する政党に至っては仇敵の存在として取り上げられ、一致すべき一点をも見出すことのできぬものとなるのである。政治は抗争の別名と化し、いよいよ貧困化してゆくことになる。もはや政治はその本質的な機能を発揮することができない。ここにおいて人々は、社会秩序を取戻すために、国家権力を強化し、集中的に統治行政権の安定を図り、権力的統治作用を再認識するに至るのである。


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  1. 2012/12/05(水) 10:26:51|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 民主主義、民主国家、大衆政治の根底に流れ、現代を支配している思想が何であるかについて少し説明を加えておく。

 近代主義は個性と権威、伝統と歴史を破って性悪的面を解放し、性善的面を退け、人間を欲望と利害に狂わせ、快楽と権利主張の虜にした。

 近代主義は自己支配の欲求が行過ぎて自己破壊をやった。

 自由平等を理想としながらそれを否定し拒否した。

 そして消耗、無責任、末梢化を遺産として残し、精神的なもの倫理的なものを退けたあとに機械主義、合理主義、実証主義、唯物主義、多数決主義を持込み、人間を支配した。

 それは創造的精力の涸渇を意味するものである。

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  1. 2012/12/06(木) 13:23:27|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 近代主義の中には自己絶滅的なものが含まれており、人間を生命の精神的源泉から引離すものが加わっている。

 従って現代人は精神的、道徳的、神的統一の価値および権威を認めない。

 近代主義は歴史的伝統を担うものでなく、むしろこれを中断する性格をもっており、断絶する志向をもっている。

 人間と歴史を断絶させ、人間と人間を対立分離させ奴隷と専制的支配を不調和のまま結合した新種の人間を生んだ。

 そこには精神的涸渇と荒廃と分裂があるだけである。

 これは人間の完成ではなく、生の手段である機械、物質、実証、合理、多数決の勝利であり、人間の奴隷化を意味するものである。

 近代主義は機械的組織と賤民根性をもって、有機体と権威の存在を退けた。

 機械と賤民は有機体と倫理を破壊し去った。

 それはこれまで人間を指導し、進歩せしめて来た創造力と統一作用を削減し破壊するものである。


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  1. 2012/12/07(金) 10:21:41|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 現代人は人間完成の代りに機械と物質に道を拓いた。

 従って誰彼の差なく唯物の信仰者となり、賛美者となり、野犬の如く常に空腹感に襲われおののいているのである。

 これは自己喪失、人間性の否定、人格精神の無視、神と権威の破壊を意味する。

 かくて良心は麻痺し、制度は硬化し、神秘と権威は無残にも蹂躙され、神聖にして尊厳の存在は心なきものに暴露され、すべてのものが俗悪化されるに至り、全人類の野獣化が実現することになるのである。

 理性主義と唯物主義は感激と信仰を阻み、精神の弛緩と倦怠を経験させつつある。

 自己喪失と自己破壊は人間を利害の徒に化し、階級を要寒として自己の権利と利益を主張する。

 人間はただ社会的階級のための武器となり、手段となって働き、唯物主義の賛美者として屢々その犠牲に供せられることになるのである。


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  1. 2012/12/08(土) 15:07:20|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(一 民主国家の弱点:三 民族共同体の分裂・弱点)【続】

 利害関係と集団的階級はなんら人道・倫理と関係あるものではない。

 階級斗争は人をして精神的・人格的・倫理的生命作用を忘れさせると同時に、民族共同体の存在を疑わしめ、無関心にする。

 これが個人主義・自由主義と結んで無政府主義・世界主義を結成し、人格の原理と国家民族の原理および歴史伝統の原理と結びついて、人類の進歩と完成に不可欠な要素を破壊するのである。

 そればかりではない。

 近代主義と近代精神は、人間性と創造、統一、建設の精神と力を、邪悪なもの、憎悪すべきもの、否定すべきものとして破壊する。

 近代主義は人間をして帰一するところを失わせ、内的分裂をおこさせ、創造的生命力を涸渇させ、階級に席を譲り、集団と利害の奴隷となってこれに服従し、人間の人間たる所以を忘れさせ、神性を捨てて物質に隷従し機械に屈服せしめた。

 そこにはもはや、不道徳、無責任、無自覚、無節操、無礼、無分別、背信、偽瞞、裏切りしかなく、恰も機械的人間の如き感情の歪んだそして情操の貧しい人々しか見出されない。

 これが民主国家時代の人間であり、これを基盤として参政権者として、国家を構成し、政治を運営してゆくわけである。

 民主国家の弱点のすべてはこの中に含まれている。


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  1. 2012/12/09(日) 19:51:25|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)

 現代政治を形成する参政権が無組織にして無訓練の大衆であって、しかも、一般地域代表の抽象的代議制である。

 ここに近代自由主義における理論の観念性と不徹底さがある。

 それは社会階級の矛盾対立を無視して、ただ参政権の地域的普及を考えただけであった。

 人間の社会生活が単純で創造的で建設的な、しかも民族全体が共通の目的をもった統一的秩序のある時代においては、抽象的地域代表で充分であるが、今日のような複雑多岐な、しかも利害相反する対立分化した錯雑な社会においては、どうしても新しい指導原理と能率の高い政治運営の方法を成り立てなければ、秩序づけてゆくことができない。

 ここにおいて代議制と共に行政の問題が根本的に再吟味されなければならぬことになった。


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  1. 2012/12/10(月) 09:45:54|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 無組織にして原子論的分析主義と抽象的世界主義を根底にもつ尨大な大衆を率いて、しかも限りなく自己の権利を主張し、万人の機械化・平均化を欲求し、かつ与えられた権利と欲求を具体的に綜合統一する方法が明治されていないため、収縮作用を失って右往左往するこれらの現代人を組織化して、秩序ある社会を成り立てるためには、新しい政治行政の機構および指導原理が不可欠とならざるを得ない。

 かかる段階においては、近代黎明期に見られたような、理性主義を万能とする個人主義と世界主義をもって、三権分立および自然秩序からくる調和を基本とする主知的な自由民主制、大衆政治の機構はもはや過去の遺物でしかない。

 近代の初期において、あれ程激烈にして横溢した精神は今日どこにも見当らない。

 また進歩発展の要素となる統一と創造も、統治と自治の分も、均衡と牽制も、見出すことができない。

 近代の特質である個人主義、世界主義、自由主義そして合理主義、実証主義、多数決主義は、今やそれは最悪の存在として人間に迫り、個性と人間性を破りつつある。

 この崩壊の一途をたどりつつある基盤から選ばれた議員をもって構成される議会を中心として、あらゆる対立分化した利益を代表するこれら数百名の議員が、議会で討論し論争して国家意思をつくり出すということは、非常に困難である。

 しかるに自由主義を信条とする現代政治および議会は、個人の自由権に捉われて生存権の問題を見落し、具体的利害関係を無視して尨大な大衆を政治に参加せしめ、しかも参政権が拡大すればするほど、政治組織は行政中心にせねばならぬにも拘らず、統治や行政や権力を弱体化し分散化して、政治の革新を称え、公明選挙を叫び、国家の最高機関は議会であると嘯いているのである。


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  1. 2012/12/11(火) 14:20:39|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 参政権が拡大すればするほど政治組織の頂点は尖ってこなければならない。

 また参政権の拡大化は、必然それに応じてなんらかの形で権力の集中化をやり遂げねばならない。

 それは現実政治が何よりもよく説明している。

 議会での討議は委員会に移り、本会議は委員会の決定を再確認するところとなり、議員の発言は個人の独立的立場からではなく政党員としての発言となり、その発言によって相手を説得させるということはまず殆んどない。

 議会は政党と政党との権力斗争場となっており、そうでなければ国民大衆に対する一大政治的宣伝場と化している。

 同時に一切の議案は専門的知識と経験に富む官僚ないし学者および専門家によって作られるようになっている。


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  1. 2012/12/12(水) 16:46:01|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 国民大衆、参政権、代議制、議会などによる政治が、民主国家・大衆政治の理想であるかの如く考え、議会を国家の最高機関なりと讃え、議会を中心にしている如くであるが、議会はただ政府行政の基礎条件ないしはその土台であるにほかならない。

 政治の中枢機関はあくまでも行政でなければならない。

 ここに現代政治を高めるために、新しい政治組織が必要となる。

 これまでの政治組織は大体において、
  1.団体主義 
  2.多数決主義 
  3.代議制
 の3つをとってきた。


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  1. 2012/12/13(木) 14:36:58|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 1.団体主義というのは契約説に発するもので、一切の団体は各自の契約によって組織化されたものであるという考え方である。

 各人の人格権が、契約によって団体に委ねられ、人民全体の権能の代表的行使であるとして人民主権論を成り立てた。

 これは君主に対立すると同時に、また君主は逆に人民全体の委任によって国家権力を行使する代表であるにほかならないという結論を引き出すに至った。


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  1. 2012/12/14(金) 13:21:05|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 2.多数決主義というのはこの団体の主体的統一性を確立するためにおこってきたのである。団体が満場一致で目的を決定するということはなかなか困難な問題である。そこで満場一致に近い決議を採ることになる。それが多数決である。この場合問題になるのは、多数決に反対した少数は無視されるか、それとも自己の意見や主張を捨てて多数に合流するかであるが、この問題は資本主義の進展に伴ない、階級対立の激化するに従って、ますます深刻化してきた。多数決主義は目的決定のための手段としてではなくなり、それ自体が目的となり、多数を頼んで政治権力を弄び、多数の横暴を極めるようになる。一方少数は全然無視されるのみならず、多数のための政治となる惧れと危険がおこってくる。この欠陥を補うためにおこって来たのが、一方においては組織機構の問題であり、他方においては指導原理の問題である。ここに自由主義・資本主義の主張する自由権の問題から、社会主義・共産主義の欲求する生存権の問題へと変ってゆく理由が成立するのである。この傾向が過激になると独裁制、全体主義に進むことになる。いずれにせよ現段階ではそこまではゆかないが、しかしなんらかの形においてその方向に進行しつつある趨勢は否めない。

 自由主義・資本主義は初め社会関係を自由に放任しておくという原則から発足したものであるから、国家権力を牽制し、自由競争を無限に確保するために、三権の分立が必要であった。しかし、ある一定の目的の下に積極的指導と計画性を立てる立場から見ると、三権分立制度は、必ずしも妥当ではない。現実のような社会生活が自由競争よりも、計画統制を必要とする時代には、当然権力の分立が制約を受けることになる。自由放任、自由競争、自由の行過ぎからきた放縦自堕落の政治社会にあっては、必然的に権力の分立が否定され、行政を中心とする統治方式がとられるようになる。団体生活の統一方式が多数決主義から三権分立を通じて独裁的、全体的、または一体主義的方向を辿ることになる。


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  1. 2012/12/16(日) 09:47:03|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 3.代議制というのは、古代の参政権の直接行使としての民間組織機構に対する中世の遺族会議から発した、いわゆる代表政治参与の制度を意味する。代議制の特質は、権力の一般国民への分配を国民の自由な選択の表現形式としての投票と選挙を限度としてなされる点、そして現実の権力行使はその代表に委託される点にある。代議制は代表を通じてなされる合意による支配の形式である。代議制の権力支配において中核部分をなすものは議会であるが、中世の貴族会議が単なる諮問機関であるに対し、立憲議会は立法機関であると共に決議権をもっているところに違いがある。また、代表者の選挙方法も階級代表制ではなく、選挙区制による地域代表制をとっている。

 代議制の理論的根拠は代表という概念であるが、代表とは本人に代って委任された法律行為を執行することである。その委任が単純にして限定的内容をもっている場合には、本人の要求が完全に表現され、また、本人も表現された結果に対して責任をもつことができるが、委任内容が白紙委任の如き漠然としたものである場合は、代表者は本人の要求を表現することが困難であるのみならず、本人たる国民参政権者もまた現れた結果に対して責任をとることが殆んど不可能である。ここに代議制度の矛盾と困難と欠陥が見られる。司法、行政と異なって立法議会の委任行為は甚だ困難であるといわねばならない。従って議会が国民のためであると虜って議決したことでも、国民の意思に全く反している場合、本人であるところの国民がこれに対し抗議することは認められないし、人民の過半が議決に対して反対し、その決議を停止せしめようと望んでも、非合法手段である革命かもしくはクーデターに訴える以外に実現の方法はないのである。従って代議制は、国民に対して極めて無責任になり易く、堕落に陥ることになり、結局国民が議会に対して全責任をとらねばならなくなる。これが革命であり、革新改革である。

 イギリス、アメリカにおける「議会の寡頭政」から「帝政的指導による一般投票的民主制」への形は、議会中心から行政中心に変化したことを意味するもので、独裁制、全体主義とは異なるが、現代政治の要請に基づいて権力を行政中心にしていることを物語るものである。この傾向は世界一般の趨勢である。


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  1. 2012/12/17(月) 11:07:24|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 1.アメリカの政治制度は、初め三権分立の原理に立脚した立憲政治であったが、その後政党政治の発達によって実質を変じ、大統領は国家の元首であると同時に政府の首班であり、事実上政党組織によって通常は議会の指導者である。大統領は議会から選ばれるのでなく直接国民から選ばれる。その地位は議会の信任如何に拘らず保障されている。ケルゼンはこれを「民選のカイゼル-選挙された皇帝」といっている。

 アメリカも初めは厳格な三権分立制を採用した。分立制は権力の集中に伴う権力の濫用を阻止することにあった。特にアメリカが留意したのは、彼等の独立の経験から、行政府抑制に重点をおき、実質的には立法府優位の構成をとったのである。ところが行政府の権力簒奪も専制におもむくものであるという事実に鑑み、その後複雑な抑制均衡の制度をとった。つまりその時その時の具体的な力関係(大統領と連邦議会と連邦司法部)によって決定する方法である。このような三権分立による抑制均衡制は弱体政府の思想実現であり、且つ豊かな自然の上に発展してきた資本主義国の要請に応えるものであったが、フロンティアの消滅と共にアメリカ資本主義の矛盾の克服には、強力な集権的な機能への要請を意味するものである。


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  1. 2012/12/18(火) 12:56:37|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 2.イギリスには本来政治制度の根本を規定した憲法はない。その根本体勢ないし基本的人権を保障するものは、形式的な尊厳性を与えられた憲法ではなく、国民の精神の中にあるといえる。それは伝統的に対する強い信念となって現われ、できるだけ伝統ある形式を生かそうとするところにある。これはあくまでも実質を追求する態度を生みだすと共に、他面古い形式に拘泥することにもなる。イギリスの政治制度の特色は、一般に議会優越にあるといわれているが、これは議会がなんらの掣肘をうけることなく、専制的に行動できることを意味するものではない。議会が内閣の信任を決めることができると同程度に、内閣自身その解散権によって議会の存続を決することができるし、また、地方自治体は広汎な自治権をもち、中央との関係は統制、服従よりはむしろ協働関係とみるべきである。さらに複雑な近代国家作用の中において、特に大衆政治の今日、専門的な行政権の実際上の優位と強化という在り方は、世界一般の趨勢であり、とりわけ立法権を議会から政府に委任する「委任立法」の現象は、いずれの国でも見られるところである。イギリスもまたその例外ではない。イギリスの特質は国王の存在とその役割にある。国王の政治的機能は現在の君主制一般と同じく矛盾の調和である。イギリスにおいては、支配階級と被支配階級の対立、支配階級内部の対立、本国連邦構成各国との対立がある。これらの対立を表面化しないためには、統治・被統治および支配・被支配の二者を含む共同的、統一的なものを必要とする。国王はこうした機能を果たすものである。即ち、形式的には両者を調和せしめる尊厳性をもち、実質的には支配関係を融合せしめるものでなければならない。国王は極めて大きな権力をもっている。宣戦・講和・軍隊の統帥・栄誉の授与・法に対する裁可の拒否・政府の罷免等であるが、現在では大臣の助言なしには行動できないようになっている。この状態を「君主は君臨すれども統治せず」ということになろう。国王が政治に参与するのは、内閣に比べて時間的な継続性をもち、従って、広汎な知識をもっているところにある。


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  1. 2012/12/19(水) 10:20:32|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 3.ソビエト連邦の政治組織は、代議制度でありながら、権力の分立を認めない。

 これがソ連の人民民主主義-ソビエト社会主義共和国同盟-の政治制度である。

 これは立憲政治の規範ではない。

 権力の集中を主張する点では一種の専制政治であり独裁政治であるが、従来のそれと異なる点は、権力の行使者が君主や一人または少数の独裁者ではなく、人民全体を代表する機関がこれを掌るというところにある。

 代議制をとっている立憲制度と変るところはないが、立憲代議制の欠点である人民代表の擬制的要素を排除するに、党の組織をもって補い、権力を指導し監視している。

 即ち、党が権力行使の具体的指導とその育成強化に当っている。

 立憲政治は、政党の交代政権であるから、どうしても多数決を露骨に現実化し、量・数が一切の権威となる。

 ソ連の党治制度にはその弊害がなく、多数決がもたらす禍にも悩まされることがない。

 民意が正しく権力に反映するか否かは、党活動の問題に属することとなる。


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  1. 2012/12/20(木) 10:34:17|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 ソビエト社会主義共和国同盟の政治制度の基本構造は、一九三六年のスターリン憲法に基づく。

 この憲法は柔軟な憲法であって、絶えず修正され、十六共和国連邦からなっているため、極めて複雑な構造をなしている。

 基本的性格は、(一)勤労大衆の国政参加。

 百五十万にのぼる代議員が各ソビエトで活動しており、数千万の勤労者が常設的大衆団体(常任委員会、市街委員会、行政機関協力委員会)の活動に参加しており、それぞれの行政部門には専従員積極分子会議がおかれている。

 (二)諸民族が同権である。

 ソ同盟内には約六十の民族がその特質に応じて自治を保障され、原住民をもって構成され、その母語により活動する統治機関をもっている。

 (三)民主主義的中央集権主義である。

 ソ連では権力の分立および官僚主義的中央集権主義は排除され、民主主義的中央集権主義がその基本的原則となっている。


そしてその構成上の原則は

第一 共産党と国家との人的結合

第二 行政機関がソビエトにより構成されている

第三 行政機関がソビエトの統轄下にありソビエトが責任を負う

第四 下級機関の上級機関への従属

第五 基本的事項の計画化と指導が中央集権化されており 執行処分等の事務的機能が地方分権化されている

第六 上級機関による下級機関の監督と点検


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  1. 2012/12/21(金) 13:47:36|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 最高機関たるソビエトは、一九一八年ロシヤ共和国憲法ではソビエト大会と称せられ一院制度であって、各自治共和国以下、都市や村落に至るまで積み重ねられ、ソビエトから漸次互選された代議員をもって、上級ソビエトを構成する仕組になっていたが、ソビエト同盟の成立により、ロシヤ共和国憲法も、また修正せられ、ソビエトはすべて人民の直接選挙に改められた。

 かくて最高ソビエトは二院制度となり、その一院は人民の直接選挙により、他院は同盟共和国の各最高ソビエトから派遣される、若干名の民族代表者をもって構成されている。

 実際の権力の運用において、中心的役割をもっているものは最高ソビエトと大臣会議(ソビエート幹部会)即ち常任委員会である。


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  1. 2012/12/22(土) 15:31:12|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 4.中共の政治組織は民主専制と呼ばれるプロレタリア、労農階級の独裁政治である。

 人民民主専制を貫徹する現実の政治体制は、3つの基本的条件を基礎として成立している。

 「古い権力機構の徹底破壊」

 「古い権力の基礎であった半植民地半封建経済、官僚独占資本主義経済の清算と新民主主義経済の建設。人民民主主義は新民主主義経済の集中的表現であり、同時に新民主主義経済を組織し発展させる権力体制である」

 「人民民主統一戦線組織の強化拡大」

 これらが人民民主主義の実現を可能ならしめる政治的組織の基礎である。


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  1. 2012/12/23(日) 13:44:36|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 第一は全国人民代表会議である。

 国家政権は人民に属する。

 人民の政権行使機関は選挙によって成立する人民代表大会(全国人民代表会議)と、それから選出されそれに対して責任を負う人民政府である。

 国家最高の政治機関は全国人民代表会議である。

 人民会議の目的は、
(1)地主階級と官僚資本家の絶滅ならびにその選挙権、被選挙権の剥奪である。
(2)自由権は人民にのみ保障され、反動派の反人民的言論、集会、結社はすべて弾圧される。
(3)言論、出版、宣伝、教育の諸手段ないし諸機関は、人民大衆に解放されると共に、労働者階級の指導する人民運動の展開。
(4)労働者農民の経済的解放などである。

 全国人民代表会議に全権力が集中され、これの代行機関として人民政治協商会議がある。


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  1. 2012/12/24(月) 10:37:27|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 第二は、人民政府委員会である。

 これは全国人民代表会議の常任委員会ともいうべき性質のもので、全国人民代表会議によって選出され、その休会期間中における国家最高機関である。

 現在現実政治は全権力がこれに集中している。

 それ自体立法機関であるだけでなく、政務院(内閣)、最高人民法院、最高人民検察署、革命軍事委員会を選び且つ罷免する権能をもっている。

 そして人民および人民代表会議に対して責任を負う。

 人民政府委員会の執行機関である行政、裁判、検察、軍隊は委員会に対して責任をとるのみでなく、集中制によって反人民的分裂行動を防止する。


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  1. 2012/12/25(火) 10:09:17|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 第三は、司法権の独立である。

 裁判は原則として独立すべきであるが、過度的段階においては、反政府、反人民裁判を防ぐための人民政府委員会の指導監督下におく。

 この方法は独り司法工作にとどまらない、国家機関のすべてに行なわれている。


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  1. 2012/12/26(水) 09:18:41|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第七 現代国家の政治理念(二 現代政治の指導理念)【続】

 第四は、人民民主統一戦線組織である。

 国家機関の活動は何よりも大衆の全面的協力によってのみ達せられる。

 人民は選挙による主権の行使のみでなく、日常の行動にすべて現われるのであるから頼られる人民であり、国家と人民は結合し、人民のための組織形態であることが人民民主主義政治制度である。

 国家の政策は人民に発し、人民が人民政府と一体になって政策を実現し、且つ人民を不断に全面的に政治に参加させる基本的在り方が人民民主統一戦線組織である。


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  1. 2012/12/26(水) 09:27:46|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著
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