いしずえ

新聞 いしずえ 夏季号 7月1日発行 №32

新聞 №32

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テーマ:このままで、いいのか日本 - ジャンル:政治・経済

  1. 2015/07/01(水) 00:05:54|
  2. 新聞

第二巻受難の巻

 「君は頭がするどいからなあ。君のいうことはいちいちもっともだ。だが、俺には今まで考えも及ばなかったようなことばかりだ。君にくらべると、俺の頭脳なんか単純なものだなあ」

 誘いかけるようにうるさく近づいて来るワンポーツを追いはらいつつ、二人はゆっくり宵闇の中をあるきつづけた。

 園田氏には、もはや妻に対する未練はなかった。あれ程に苦悩の淵をのたうちまわっていた日々が、たわいない夢のようにさえ思われる。

 妻に裏切られたという思いと、妻の愛情が自分の上に残っているという未練にとらわれている間は、苦しみの捕縄に刻々としめつけられるようであったが、ひとたび、男の誇りたって態度を決した今、不思議にも、迷いも悲哀も増悪もわいて来なかった。

 ことに、民族や人類の上に思いをはせて、遠大な理想に生きている友を座右にしては、破廉恥な男女の交情に心をくさらせること自体が、唾棄したいくらい情けないものに思われたのである。

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  1. 2015/07/01(水) 16:27:29|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 人間の心は不思議な魔術師である。心が我にとらわれている時は、愛慾や懐疑や憎悪を生み、心が我をはなれて理想と真理に生きるとき、苦悶は去って希望が生まれてくる。醜は美に変じ、悪は善に返転する。

 愛と憎、苦と楽、善と悪、美と醜、虚偽と真実、この二つの両極を、人間の心は常に揺れうごき、その振幅が人生のさまざまの絵模様を描いているものといえる。

 震動しながらも、人間のゆくべき方面は永遠の中道に定まっているのであるが、凡俗にとってはその不動の線上にとどまることはむずかしい。

 園田は、辛うじてその線上にとどまる事が出来たのである。彼はもはや動じなかった。愛憎をのりこえて、人間として具体的夫婦の道にたって堂々と行動を起していたのである。

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  1. 2015/07/02(木) 13:33:11|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 不可能を可能に

 園田夫妻の旅支度がととのうや、三人は北上し、北京、天津の北支派遣軍部隊を訪れた。

 丁度その頃、北支一帯に頻繁に出没してはゲリラ戦術をもって挑戦してくる中共軍を掃蕩するため首脳部の将校はほとんど留守であった。

 出鼻をくじかれたようで面白くない。しかし、いつ帰るか予定もわからないとあっては待つわけにもゆかないので、書類(日中事変解法案)を高級副官に托し、横山勇司令官に提出して直ちに奉天へと直行した。

 満州は戸松と園田にとっては、第二の故郷ともいうべきところである。日本の勢力下にある新国土の、満鉄という巨大な機構の中で、彼らは血気にあふれた青春を、自由に満喫したものであった。

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  1. 2015/07/03(金) 13:43:36|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 ある時は子供のように無邪気でやんちゃにふるまい、又ある時は堂々と満州政策を批判し、建設的意見を公表しては、その勇気と卓見をみとめられたりした。その頃の指導的先輩の中には、大志と勇気をもつ青年を愛し、かつ、その蛮勇に寛大な人達が何人かあったものである。

 夫人を宿におちつかせると、戸松と園田は、かつての理解ある上役であった鈴木長明理事をたずねた。鈴木理事は錦州鉄道局長の時代、ノモハン事件に遭遇した。その時、世界に誇る満鉄調査局はもちろん大部分の者が日ソ戦争になると判断したに対し、ひとり戸松は日本を牽制するためのデモストレーションであって戦争にならぬと主張したが、理事はその慧眼に敬服した人であった。

 突然、威勢のいい昔の部下が、肩をならべて訪れてきたのであるから、理事もびっくりしたり喜こんだりしていたが、一別以来の中国での運動や今回の計画などを話すと、つよく心をうたれたものか、だんだん厳粛な顔になっていった。

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  1. 2015/07/05(日) 14:07:53|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 生きのいいいわしだと思っていた部下が、いつの間にか鯨にそだって、自分の手にあまるほどになっているのに、鈴木理事はまずまごついた。この二人の青年の考えていることは、彼自身には手もとどかない偉大な事業のように思われた。

 まず第一に日中事変解決法案なるものを、関東軍司令部がとりあげてくれるかどうか、第二に司令官が無名の青年に簡単に面会してくれるかどうか、いずれもすこぶる疑問であった。

 満州における関東軍は、国王的権威をもっているといっても過言ではない。この国は皇帝によって統治されている形にはなっているが、それは外見だけの傀儡的存在で、実権は関東軍が握っているに等しかった。

 この関東軍の最高指導者である司令官に、二人の青年が体当りしていくこと自体が、無謀なことのようにさえ思われたのである。

 話しあっている中に、鈴木理事の顏は次第に暗い色にとざされ、陰影をふかめていった。

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  1. 2015/07/06(月) 11:48:28|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 黙って一通りききおわった後、彼は、抱負にかがやく青年の眼を気の毒そうにみつめながら、さとすような口調でいった。

 「君、とつぜん関東軍司令官に面会を申込んでもとても会ってはくれないよ。満鉄総裁でも二、三日前に申込んでおかないと時間をあけてもらえない状態だ。せめて半月前には申込んでおかないとね。それでも会ってくれるかどうかはわからんよ」

 社会の常識的ルールに馴れ、そのルールどおりに行動してきた彼は、青年達に、まずそのルールに従うことをすすめたのであった。

 世知のうとさをとつぜん突かれて、戸松は瞬間ぐらっとなったが、生来負けぎらいの彼はひるむ色も見せず、すかさず、

 「会ってくれなければ、泥棒を装って夜中に梅津大将の寝室にとびこんでやりますよ。今晩は……といって、おどかしてやります」

と、口出まかせの虚勢をはってみせた。

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  1. 2015/07/07(火) 13:15:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 鈴木理事は、その少年のような一途さに思わずにっこりして、「相かわらず元気だね、君は。まあ、その意気ごみでぶつかって見たまえ」と、たよりなげに激励した。

 尊敬し心服していた先輩から、失望的な意見をきかされ、戸松は内心がっかりした。

 関東軍司令官に会って、事変解決方案を具申し、その反応をたしかめなかったら、今回の運動は半分意義を失ってしまう事になる。

 なんとかして会う方法はないものだろうか。満鉄総裁ですら即日会えないとすると、昔の先輩の斡旋や紹介など何の役にもたたないわけだ。

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  1. 2015/07/08(水) 13:41:28|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 はて、なにかよい思案はないものか……戸松の頭の中はその一事でいっぱいになってしまった。もはや先輩とゆっくり話しあっている心の余裕はない。来春再会することを約して、二人は辞去した。

 しかし……彼の心は思わざる衝撃にあうと、いっとき消沈するが、すぐおきあがりこぼしのようにはねかえる。そして次の瞬間から、精神的な排水の陣をしいて、勝利への思案をねっていく。

 「余の辞書に不可能という言葉はない……」と豪語した十八世紀の英雄の魂は、彼の中にもひっそりとひそんでいるようにも思われる。

 宿にかえった二人は、頭をつきあわせて、あの手この手といろいろな方法を検討した。

 結局、突飛のようであるが、司令官宛電報をうって、堂々とのりこんでいくのが一番効果的であるように思われた。

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  1. 2015/07/09(木) 13:43:48|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「そんな事をしても大丈夫かな……」

 園田はいく文不安そうである。

 関東軍司令官相手に、そんな大胆な手を打っていいものだろうか。それに司令官が、電文にこころよく応じてくれるであろうか~園田の常識は、彼の自信と勇気をかきくずす。反対に、戸松は一つの目的をもって立ったからには、相手の名誉や地位はさほど問題にしない。

 「梅津大将が本当に人物ならば会ってくれるだろう。国家の運命に関する問題だ。これに無関心で、かえりみないような人間なら、会ってみたところで仕方がないじゃないか。人物ためしの第一弾だ、まずうってみよう」

 戸松は伝聞を考え考え紙片に書いてみた。

 「亜細亜同盟 代表二人 明日 日中事変解決法案 ヲ持ツテ 梅津司令官ニ 面会ノ為 出頭ス 戸松 園田」

 この電文ならば、梅津司令官といえども心を動かされるにちがいないと確信した戸松は、親展電報にして送り、二、三時間後にはその後を追うようにして奉天をたった。

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  1. 2015/07/11(土) 15:23:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 たたけよ、さらば開かれん

 翌日新京に着くや、軽く朝食をとり、さっそく関東軍司令部に梅津美治郎大将をたずねた。九時五分前である。

 門衛から玄関までの間は、四、五十米もあろうか。小砂利をふみしめる二人の靴音が朝の清浄な空気の中に力づよいリズムをきざんでいく。戸松には、そのリズムが、新しい歴史をひらく前奏曲のようにさえひびいてくる。

 中程まできた時、戸松はふと足をとめて、うしろの園田をふりかえった。園田はいつもの癖で、多少俯きかげんにあるいている。

 「おい、園田」

 声をかけると、なんだ?……というような顔をして近より、肩をならべてあるきながら次の言葉をまっている。

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  1. 2015/07/12(日) 22:45:27|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「園田、俺達の事業が将来実をむすんで、われわれの理想とする社会や文化が成立し、アジアの平和が確立したならば、後世の人間はなんというだろう……われわれを土佐の坂本竜馬ぐらいの人物だったというかも知れないよ。今日のことなども、読みものにしたり映画にしたりしたら、面白くなるかもしれないなあ」

 さっきから、戸松の胸は、そくそくとつきあげてくる新鮮な感懐に躍動していた。この行動が、新しいアジアをひらく動機になれかしと、わが心に彫りこむように念じつづけていたのである。

 だが、園田は、俯いたまま、ニヤリと笑っただけであった。

 彼には戸松ほどの感激はない。ただ梅津大将に会って、うまく事がはこべばいいがと心配している。

 玄関で取次の将校に名刺をわたすと、既に上部の意がゆきわたっているのか、自分から先にたって、司令官室の隣りになっている応接間に案内した。そして、

 「ちょっと、お待ち下さい」

と言葉少なに一礼して引下ってしまった。

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  1. 2015/07/13(月) 14:31:22|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 ややたって、参謀中佐があらわれた。武人らしい威厳の中にも、慇懃をきわめた丁重さで、

 「昨日電報をいただきましたが、今日はどうしても時間がとれませんので、明朝九時にお訪ね願いたいのですが……」

と云って、自分の名刺をさし出した。

 「関東軍司令官補佐官井上忠男」と、きざまれている。

 今日は面会できなかったが、しかし、明日は必ず会えるという確証はえたわけだ。まず第一弾は命中した。

 万歳~戸松は心の中で思わず歓声をあげた。司令官が会って話をきこうという誠意をもっている以上、もはや面会の目的の半分は達せられたようなものである。

 やっぱり大物はちがうなあ~若い心は、梅津大将に会わない前に、すでにその人物に満足した。

 だが、そうした思いは微塵も顔には出さず井上中佐に送られて二人は意気揚々と司令部を出たのであった。

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  1. 2015/07/14(火) 15:54:24|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 関東軍梅津司令官に説く

 翌朝九時少し前に、関東軍司令部についた。

 昨日とおなじ応接間に通されて、まつことしばし……今日は高名な梅津大将にあえるのだと思うと、刻々と心の緊張がつのってきて戸松は全身にかすかなふるえさえ生えはじめた。

 沈黙したままでいると、それにとらわれて、いよいよひどくふるえてくるような気がする。何かしゃべった方がよさそうだ。

 こういう時、園田のような相棒がそばにいるのは都合がいい。戸松は園田に、自分の緊張を半分分けあたえるかのように云った。

 「どうも胸がたかまっていかん。俺はよっぽど緊張しているらしい」

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  1. 2015/07/15(水) 01:50:19|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 すると、園田は、

 「フ……」

 鼻でひくくいたずらそうに笑って、

 「会ってから震えて、言葉にならんのじゃないか」

と、からかった。

 園田は感情の起伏が乏しいだけに、こういう瀬戸際にたっても、とくべつ緊張しすぎるということはない。

 計画をねる時は、戸松の大胆さと勇気に膛目し又躊躇することもあるが、いよいよその場にのぞむと、あきらめでもなく勇気でもなく、それらを超越した自己本来の性格の上に安座して、風にたわむれる春の海のようにのんびりとした顔をしている。

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  1. 2015/07/16(木) 16:31:49|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 梅津大将が面会を承諾してくれたからには、臆することなく大将の前に出て、名将と友人のやりとりをゆっくり見物しよう……と、彼はむしろ興味しんしんたる思いである。

 この第三者的神経の友のひやかしは、効果的であった。

 「なにっ……」

 瞬間、戸松の全身は、この言葉に敏感に反発した。俺のすることをそばで見ておれっ……と、さけぼうとした時、井上補佐官が入ってきた。

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  1. 2015/07/18(土) 09:11:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「お待たせいたしました。どうぞ……」

 先に立って廊下に出、補佐官室を通りすぎて司令官室へと招じ入れた。

 そこは、丁度玄関の真上あたりと思われる位置である。整然とした広い部屋だ。

 ぱっと、戸松の眼をとらえたものは、真正面の大きな机に端然と座してこちらを見ている梅津司令官の姿であった。

 この二、三日来、この人にぜひ面会したいという欲求にしばられていたためか、あるいは、大将の武人として鍛錬をかさねた人間的威厳にうたれたのか、わずか五尺に足らない一人の人間が、部屋いっぱいの大きさに見えたのだから不思議である。

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  1. 2015/07/20(月) 13:44:15|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 とたんに、戸松の内部にも、本来の自己がむくむくと頭をもたげ、この重々しい威厳に堂々と対抗していく威力が全身にみなぎってきた。

 彼はずかすかっと、司令官の真正面に立つと、喰い入るように相手の眼をみつめた。大きい柔和な眼だ。そして、ゆったりとした威風をただよわせているわりに、小ぢんまりした体軀である。

 園田も戸松にならって、進みでて並んで立った。

 「亜細亜同盟の代表、戸松慶議です」

と名乗をあげると、園田もつづいて

 「同じく園田幸撰です」

と、落着いたしっかりした口調でいった。

 申しあわせたように、二人がそろって頭を下げた。

 大将はやおら立ち上り、

 「わたしが梅津司令官です」

 にこやかに挨拶をかえすと、応接セットの方にゆっくりとすすみよった。

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  1. 2015/07/21(火) 14:05:16|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「どうぞ、こちらへ」

と、手をさしのべて椅子をすすめると、自分もその一つに深々と腰をおろした。

 この方が、軍務用の机にすわっておられるよりは、ずっと親しみやすい。

 心をつつんでいた緊張の殻が、ポロリと音をたててはずれ落ちたような気がする。そして、この機会に遠慮なく大いに話したいという意欲がもりもりとおきてきた。

 「梅津司令官閣下、わたくしどもは率直に意見を申し上げます。露骨にすぎて、軍誹謗、または反軍思想の者と誤解されるかもしれませんが、志すところは日本のためでありまして、決して、批判をもって満足するものではありません」

 一気に云って、戸松は司令官の眼をぐっとみつめた。

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  1. 2015/07/22(水) 11:33:57|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 司令官は温和な顔を厳粛にひきしめて、無言のまま奥深い眼差しで次の言葉をうながした。

 「第一に、アメリカと戦争をはじめた上は、中国に軍をとどめる愚をやめねばなりません。前面撤兵すべきだと考えます。

 すみやかに撤兵して中国およびアジアに領土的野心のないことを明らかにすべきであります。

 第二に、日中事変の性格を明確にしなければなりません。

 戦争とするか、それとも革命にするか。わたくしどもは、アジア革命のための出兵であったと内外に発表すべきであると思います。

 日本は中国を、国家組織をもたない政治能力のない国として軽蔑し、国家としてみとめようとしておりませんが、中国は孫文以来、いまだ革命が成就しておりません。

 革命をはばんできた中国内の軍閥の対立や、共産党を排除し、中国を侵略し無能化させている西欧帝国主義と殖民地政策を追放するために、彼らに手つだってやるための出兵であったと意義づけるべきであります。

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  1. 2015/07/24(金) 13:26:58|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 だいたい日本は、国内の革新をいそがねばならない段階にありますのに、それには全然手をつけようとしないで、国内のゆきづまりを外にかまえて解決しようとばかりあせっております。これは、将来日本が世界的に大きな失敗をまねく原因となるものと思われます。

 日本人はほとんどといっていいくらい、東条の思想を信奉し、大東亜新秩序の理想を遂行するために暴戻支那を膺懲し、その背後にある英米を打倒しなければならんという考えにかたまっておりますが、自国の悪弊を革新もせずに、いたずらに外へ外へとむかって他民族を薙ぎ倒していってみたところで、東亜の新秩序がなりたつものとは思われません。

 日米戦争を、神功皇后の三韓征伐にたとえて、得々としている軍人が多いですが、歴史にむかってすすむことは過去への逃避であって、前進する者のとる賢明な態度であるとは思われません。

 歴史は前進発展するための土台となるもので、人類のすすんでいく方向を暗示するものでありますが、そのまま現代の基準にはなりません。

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  1. 2015/07/27(月) 14:09:44|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 日本は、今こそ思想転換すべきときであります。日中事変をすみやかに中国革命に切りかえ、蔣介石と手をむすんで、彼を通じて太平洋戦争の有利な中に講和への道をひらくべきであります。

 その上で、日本国内の革新を断行し、中国革命をも成就せしめるべきであると思います。

 これをやらずして大東亜建設は、単なる空論にすぎません。

 日本は他に要求し強制する前に、もっと自己に対してきびしくしなければいけないと思います。

 日本は、思想的にも政治的にも、経済的にも外交的にも、軍事的にも、あらゆる面にわたって、われわれ青年の眼から見ても矛盾と欺瞞にみちみちております。

 そういう自国の正体をみきわめようともせず、井底の蛙大海を知らずというか、近視眼的に自己本位に外国を見、相手の全貌と実体を深く見きわめる眼力を失っているかのように思われます。

 それに、相手の力量をはかる精神的余裕を持とうとしておりません。もし、その余裕があるならばここらで新段階にすすむべきであると思います」

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  1. 2015/07/30(木) 15:08:59|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 戸松の弁説は、勢いついたトラクターのように相手の肺腑の中にのめりこみ、その内部を掘りおこしていくような勢いでつづけられた。

 彼が~アジアの新秩序の理想は、日本の国内革新と中国革命の成熟の段階をへて、はじめて達成されるのであって、それなくして理想をとなえても、それは空論にひとしい~と、日本のアジア政策の欠陥をつきはじめた頃、それまでゆったりと構えていた司令官は、「おっ」と、内心にさけんだかのように、急に上体を真直ぐにおこした。

 瞬間、顔面の筋肉が、ぴりりっとひきしまっていくのがはっきりと感じられた。

 今までの「きいておきましょう」という態度から、「きかねばならぬ」という態度にかわってきたのである。先輩にたいするような謙虚さだ。

 それまで、大きな岩に体あたりしていくような、闘争的な気持にささえられていた戸松は、司令官のこの態度をみると、おのずから落着きと自信が深まってきた。

 それは彼の音声にもたちまちあらわれ、同志にでも説ききかせるかのように、一言一言にかんでふくめるような口調にかわっていった。

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  1. 2015/07/31(金) 15:38:22|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

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國 乃 礎

Author:國 乃 礎
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マスコミ横暴撲滅
国賊売国奴殱滅
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