いしずえ

第二巻受難の巻

 独伊と同盟をむすべば、アメリカを牽制することができるという近衛氏の考えとおなじ立場にたっていたのかもしれない。

 だが……案に相異して、太平洋に戦いの幕は切っておとされたのである。戦いがはじまったからには国民を鼓舞しなければならなかった。

 中野氏が大衆の中にあって、戦争与論をたかめたごとく評されているのは、彼の年来の夢であったアジアの解放をめざしての主張が、すべて予想をうらぎって逆転していった結果によるものであると思われる。

 敵を見誤ったというか、しかけた罠にかかるはずであった虎は、群をなし牙をむいて、襲いかかってきたのである。

 ガダルカナルの敗退後、東方会員に戦争は負けるだろうともらしたということは、おそらく事実であろう。彼の鋭敏な直感は、日本の運命をいちはやく感じとっていたものと思われる。

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  1. 2016/02/01(月) 14:17:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 血走った東条政府のヒステリックな政治を見、又その裏面に根をはる憲兵暗躍の陰険な現実を体験しては、絶望を感ぜずにはいられなかったにちがいない。

 日本をここまで導いてしまった政治家の責任として、~そうだ~心ある人間ならば、中野氏たらずとも自決せずにはいられまい。死をもって責任をとることによって、中野氏の過去の一切は生きて来るのだ~戸松は今、中野氏の死を真直ぐに相対し、中野氏の決意を無垢な心でうけとめようとしていた。

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  1. 2016/02/02(火) 13:16:46|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

  高貴なる死

 「先生、中野さんが東条に間接的に殺されたと見ることは、中野さんの心を無視することだとぼくは思いますね」

 沈黙を切りやぶるような語気で戸松はいった。

 「……」

 先生は無言のままうなずいた。

 「中野さんの死は、自分の政治的行動にたいする自裁だと思いますが、どうでしょう」

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  1. 2016/02/03(水) 06:00:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「……」

 先生は再び無言でうなずいた。ややたって、

 「そう見るべきでしょう。中野君が最後に達した心境をきいて置きたかったものですね」

 「先生、遺言はなかったのですか」

 「なんでも頭山さん宛に大きな封書が一通あったとききましたが、中味のことはまだきいていません」

 「頭山先生宛にですか。そうですか。中野さんもやっぱり最後には帰るべきところに帰ったんですね」

 惜しい男であった……三人の心は一様にその思いに集結した。

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  1. 2016/02/04(木) 15:25:56|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 戸松の頭には、顎をふるわせて怒っていた中野正剛氏の顏が再びうかんできえた。あの気概あの気魄~さぞや壮烈な最後であったろう。

 「先生、もちろん、日本刀で死んだんでしょうね」

 「そう、悲壮な最後であったらしい。中野君は立派な武士でしたよ」

 異常な最後をとげた教え子の死を悼むしっとりとした声であった。

 (中野正剛氏の死は昭和十八年十月二十七日であった)

 時の総理、東条大将に率直に意見具申することが、こんなにも困難であるとは、中国にいるときには思いもかけないことであった。

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  1. 2016/02/05(金) 15:40:04|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 心あてにしていた先輩が、東条のことになると、ことごとく「さわらぬ神にたたりなし」というのか、そっけなく逃げてしまう。逃げるという言葉が見識ある男にふさわしくないというならば、あきらめてしまっているといってもよかった。

 安部先生の熱意にうごかされた永井柳太郎氏が、どの程度閣僚に働きかけてくれるか未知数であったが、戸松には、これもそれ程期待がもてなかった。

 しばらく様子をみて、見込みがなかったら第三者をたのまず、直接東条首相に面会を申込んでみるつもりである。無名の青年の直接交渉が、いろいろ誤解を生ずるであろうことはわかりきっていたが、その覚悟なしにはとても志をはたすことはできそうにも思われない。

 ところが、その覚悟をことさらに強いるかのように、この一両日頻繁に特高が戸松の部屋に出入するようになった。部屋の外に二つの椅子が運ばれ二人の特高が監規についた。

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  1. 2016/02/07(日) 13:56:30|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 二時間おきぐらいに室内に入ってきて、何をしているか様子をさぐり、外出しようとすればどこからともなく現われてついて来る。これでは生活を憲兵に牛耳られているようなもので、自由な動きをすることができない。

 おそらく、永井氏が政界に働きかけたことから、憲兵隊の注意が戸松に一層きびしく向けられるようになったものであろう。

 東条首相に会って意見具申する前に、すでに注意人物としてマークされてしまったのである。これでは、胸の中にもえるような愛国心をもっていても、堂々と正論を吐き行動することはできない。日本人の言動は、東条の能力と狭量な人物の埓内に、ことごとく牽制されてしまうもののようである。

 ことに中野正剛氏ほどの剛の者が、東条に圧死させられたという噂が、秋風にのってひそやかに身辺をながれはじめると、気の小さい人間はいわれもなく東条に遠慮し、戦局を内々で批判することすらさけるようになった。

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  1. 2016/02/08(月) 14:03:54|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 良識ある指導的人々のこのような情熱の欠如と日和見主義は、いよいよ東条をいんけんな独裁者に仕立てあげてしまっていたのである。

 日本に人なきがごとく、東条ぐらいの人間に国の運命をまかせきっているとは、一体なんということだ。かつて野にあって政府をしのぐ一大勢力をきずいていた頭山満翁のごとき実力者でも、現政府の非をさとらせることはできないのであろうか。

 翁はなにを考え、なにを為しつつあるのか。戸松はすぐにも頭山翁に会いたいと思った。しかも、その心の奥底には、憲兵につきまとわれている忌わしさからのがれて、もっとも安心で賢明な策を得たいという願いがひそんでいた。

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  1. 2016/02/09(火) 09:36:16|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 頭山翁を説く

 十月の末日、戸松は常盤松の頭山邸をたずねた。

 少年の頃、頭山満伝を読んでこの不思議な人物に興味をおぼえ、数年後に上京して面会していらい、戸松と翁の間には、一種の師弟のような関係ができあがっていた。

 翁は無口で多くを語らない。だが、ときたま吐く短い言葉の中には、万言にもあたいする内容が要約されていた。

 その言葉を咀嚼する力さえあったなら、人は、翁に会うたびにその心境をふかめ、真理の門をひらくことができるであろう。

 以前、翁に会うには、多くの面会人が先着順に用件をすませる間、気長にまっていなければなかった。が、この日はすぐに会うことができた。

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  1. 2016/02/10(水) 16:05:34|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 翁は泰然自若、石のごとく黙したまま上座に端座していた。

 喉をおおいかくしている白髪は雪のごとく、茫洋とした風貌の中に、細長い二つの眼が一切を見とおしているかのように深い光をたたえていた。

 八十という齢は、この精神的天才をすでに神仙化してしまっているのであろうか。翁を中心として、部屋一面に神気がたちこめているようである。小さいながら、ここに一つの宇宙の雛形が形成されていた。

 この小宇宙の絶対的権威のまえに、戸松と園田は膝をならべて対座した。

 こちらが黙っていたら、一日たっても翁の方から口をひらくことは先ずあるまい。

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  1. 2016/02/13(土) 10:11:57|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 そこで、戸松は、支那事変解決法案をくわしく説明し、この案をもって関東軍、朝鮮軍の軍司令官及び東京の先輩を説得してきたいきさつを話し、さらに政府と東条首相に体当りしていく決意であることをのべた。

 辛亥革命いらい、四十年もの長いあいだ、一貫したアジア主義にたって中国を友とし兄弟としてきた頭山翁にとっては、戸松の事変解決法案などいちいち説明をきかなくても、結論だけでわかるはずのものであった。

 しかし、翁の無言のまま、微動だにせず、一言一句を正確にききとろうとしているもののようであった。

 ここでは、戸松ののべる言葉は、翁を説得するための用具ではなかった。それによって、かえって戸松自身の才と力をはかりとられていたのである。

 この若さで、これ程のことが考えられたら先ずよかろう。後は行動によって自分の力を試してみたらよい~翁の沈黙はこう語っていた。

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  1. 2016/02/14(日) 13:52:03|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 戸松は更に、この和平運動の中国側の中心人物である周仏海や熊剣東の名をあげた。この運動がいいかげんな思いつきではなく、筋がたしかであることを知ってもらうためである。

 「先生、周仏海は軍部からにらまれているそうですが、周仏海にいわせれば、軍部の中堅層はかちかちのわからずやで、意見がちがうとすぐに殺して片付けようとするから、危険千万だというのです。

 その上、上層部は物わかりはいいが、さっぱり頼り甲斐がない、大事をはかるには物足りないというのです。

 そこで、われわれ青年に期待をかけ、立上って指導的人々を説得して、日本政府をうごかしてくれというのです。われわれの工作金はほとんど彼がひきうけていてくれます。

 日本側の方が見込みが立ちそうであったら、ただちに熊剣東から胡宗南を通じて蔣介石をとき、具体化をはかるという計画になっているのですが、工作中は周と熊の名前は絶対に出さない約束になっております。

 憲兵や軍の中堅の気の早い連中の耳にでもはいったら、周はもちろん、われわれもおそらく生かしてはおかんでしょう。

 この工作が失敗して、われわれが捕らえられ死刑になるようなことがあっても、周との関係は絶対に口外しないという約束であります」

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  1. 2016/02/15(月) 14:20:27|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 翁はかすかにうなずいた。が、今までの話に賛成するでもなく、又不賛成というわけでもなく、一言しんみりとした口調でいった。

 「支那と日本は夫婦みたいなもので、今は小姑が多すぎて、はたからいろいろつつくからお互いに背をむけて寝ているが、その中にはどちらからともなく抱き合う仲じゃ」

 事変も戦争もすべてを肯定し、その中に芽生えている未来への可能性を、しっかり見きわめている自信ある言葉であった。

 日本と中国をむすんで、アジア百年の計をたてたいという意慾をもつ人間がたえないかぎり、かがやかしいアジアの未来は、単なる理想ではない。翁はそれを予測し、確信しているもののようである。

 戸松や周仏海の動きも、アジアの明日をつくる一つの流れであると見ているのである。

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  1. 2016/02/16(火) 12:53:02|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「先生、われわれは目下憲兵につきまとわれて困っております。

 われわれがどういう筋と関係をもって動いているかが、彼らの関心事なんだと思いますが、どうでしょうか。こういう場合、御子息の秀三さんを中心に事変解決工作をしている事にしたらどんなものでしょう。

 秀三さんが中心人物であるということになると、彼らも警戒をゆるめるのではないかと思います。もし、われわれが憲兵隊に拉致されて、資金面を追及されるようなことがあっても、頭山から出ているといえば、立派に名目がたちますから、周との線をかぎつかれなくてもすむわけです。どんなものでしょう」

 「うむ……」

 翁はあいかわらず賛否のはっきりしない返事をしただけであった。だが、この「うむ」という言葉にならない声の中に、同意がふくめられていることを戸松はしっていた。今までの経験では、翁は反対のときには、はっきりと「ならぬ」と一声で制するからである。

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  1. 2016/02/17(水) 14:22:43|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 往年の翁ならば、秀三氏をたのむまでもなくこういう時こそ、底知れぬ力をかしてくれたことであろう。

 しかし、今眼の前に巌のごとく端座している白髪の老人は、すでに死を待つばかりの高齢に達してした。

 万世を見ぬく心眼はあっても、時代をうごかす力があふれているとは思われない。

 ふと、戸松の胸中を、寂寥たる思いがしのびやかに通りぬけていった。

 「こうして先生にお眼にかかっておりますと、先生が年とっておられるのが残念でなりません。

 先生が若かったら、一身をあずけたつもりで共に行動するのですが、先生はもう九十に近い老人で、われわれと共に働くというわけにはいきません。

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  1. 2016/02/18(木) 15:16:19|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 先生をおいては、アジア問題の権威者といえば、萱野先生がいるわけですが、萱野先生は目下スパイと目されて動けないでおります。

 それに秀三さんは、上海では月の家や、東語あたりをあそびまわっていて、非常に評判がわるく、真剣に中国問題ととりくもうという気魄がうかがえません。

 秀三さん自身は何かやろうという意志もあり、事実又何かやっているのかもしれませんが、まわりに沢山の支那ゴロがとりまいていて、昼間から料理屋にくりこんでいる状態ですので、一般からはひどく不評を買っております。

 見わたすところ、日本の上層部の人達が、只成り行きにまかせているだけで、身をもって戦争の解決にあたろうという情熱を失っているように思われてなりません。

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  1. 2016/02/19(金) 14:08:27|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 史上未曾有の大業を、日本民族が命がけで行なおうとしているとき、これを綜合指導する一人の偉人も指導者もおらないということは、なんという不幸なことでありましょう。

 先生、ここらで秀三さんにも、本気になってもらいたいものだとおもいます。

 今日は一つ、先生が裁判官になって、秀三さんとわたくしが中国問題について議論してみたいとおもいますが、いかがでしょう。

 負けた者は勝ったものの意見にしたがうことにしたら、どんなものでしょう」

 云いおわって戸松は、翁の眼をじっと見つめた。

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  1. 2016/02/20(土) 15:35:05|
  2. 遺言状(救國法典) 戸松慶議著

第二巻受難の巻

 翁の表情は微動だにしない。その眼だけが宇宙の深源に通ずるような底知れぬ光を発している。

 やがてのこと、翁の頭がゆっくりと大きく前に動いた。無言のまま「諾」の意をあらわしたのである。つづいて一言、

 「連れてきなさい」

といった。

 戸松の心は勇躍した。

 よし、今日こそは秀三氏と真剣勝負をやってみせるぞ。彼をかならずや俺の案にひき入れてみせるぞ~彼はさっそく座を立つと、目黒の秀三氏宅にとんだ。もちろん園田も一緒である。

 園田は口重であるから、先輩の前ではほとんど語らない。しかし、影の形にそうように、只なんとなく戸松についてあるいているように見えながら、それでいて結構彼の役割を果していた。彼のいかめしくむっつりとした重々しい風貌が、熱心に語りつづける戸松の背景をなして、その主張を一段と力づよく感じさせていたからである。

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  1. 2016/02/21(日) 13:28:53|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 頭山秀三の力量

 二人は勢いこんで秀三氏宅をおとずれた。秀三氏は頭山翁の三男で、翁の意志をそのまま受けついで中国問題にとりくんでいた。興亜同盟という組織をつくり、重慶との和平交渉をしていたが、これは日本政府の立場を重慶に理解せしめようとする程度にとどまっていて、中国民衆の現実と理想を見きわめて、アジア百年の計を立てるというような深遠なものではないように戸松には思われた。

 昭和の初め、蔣介石が一年ほど日本に亡命していたとき、頭山翁の世話になっていたという縁故もあるので、秀三氏ならばなんとか蔣をなだめてくれるだろうという安易な望みをかけて、日本政府はひそかに興亜同盟を応援してきた。

 だが、動乱の中国は蔣介石と頭山秀三の親交関係ぐらいで思いどおりに動かせるものではなかった。日本の立場を理解せしめんと思えば、まず中国の立場を理解しなければならない。中国を理解するには、第一番に日本が自己の考えと態度を改めてかからねばならない。自己の態度を改めることなくして、日中の永遠の平和とアジア統一を夢みることは、鯨を網でとらえんとするにひとしい。

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  1. 2016/02/22(月) 13:49:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 日本の日中事変にたいする根本的な考えをかえること、戸松はそれを主張しているのであった。この事を日本政府に意見具申して、中国にたいする態度、方法を大転回させねばならない。日中の和平交渉はこれなくしては成立たないと彼は考えているのであった。

 秀三氏は上海と東京の間を頻繁に往来する人であるが、丁度この時は在宅で、直ぐに会うことができた。

 顔を見るなり、

 「やあー戸松君か」

 豪快な中にも親しみと温かさのあふれる声である。その表情や素振りには、近づいてくる者をことごとく広い胸に抱きとめていく力づよさと頼もしさがあった。

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  1. 2016/02/23(火) 14:36:55|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 人間を超越したような翁にくらべ、この人は又なんと、男の体臭と魅力を生々しく感じさせることであろう。

 この人に翁の才分がそのままつたわっていたならば、自由奔放、洒脱に時代を指導し、日中の緊迫をやぶってアジアを一まとめにしてみせてくれたかもしれない。

 一見ゆったりとしたまるい顔は、内面からぐっとひきしめられていて、苦味ばしった影をただよわせていた。それは上目づかいに睨む三白眼のせいであるかもしれない。その謎のような眼光は不動の圧力をもって相対する者の胸板にするどくつきささってくる。おそらくこれは、五、一五事件で入獄した折、一点を凝視したまま、黙想しつづけていたためではないかと思われる。

 上海ではとかくの評判のある人ではあるが、こうして一対一で対座していると、人の将たる見識と度量を感じさせる人である。ときどき会いたくなる部類の人だ。

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  1. 2016/02/24(水) 15:09:18|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「これから常盤松まで御同行ねがえませんか」

 というと、

 「なに事が起ったのかね」

と、三白眼を一きわ大きく見ひらいた。

 「いや、今日は貴方と僕が、先生の前で日中事変解決について議論することになったのです。原告が僕で被告は貴方で、裁判官が先生です。先生がまっておられますから直ぐ来て下さい」

 あっけにとられたような顔をしていた秀三氏も、すぐ「は、はあー」と思いあたったのか、

 「そいつは生憎だった。今日飛行機で満州に発つことになっているのでね……

 親爺にもその旨をつたえておいてくれないか。またいつかその機会もあるだろう」

と、あっさりと逃げてしまった。

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  1. 2016/02/25(木) 16:05:46|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 そこでこの機をとらえて、資金の出所を秀三氏から出ていることにしてほしいと頼んでみた。すると、いとも気軽く、

 「ひきうけた。俺を利用してすむことなら、大いに利用したまえ」

と、人物の大きさをみせて、先輩らしく激励した。

 戸松はこの先輩に忠告されたことがある。上海で交りがかなり親しくなってからのことであった。或る日彼は戸松に対し、

 「君は香りは天下一品、日本一であるが、しかし喰うと味のない男だ。それは君に遊びがないからだ。家に床の間あり廊下あり縁側がある。これみな遊びであり余裕である。部屋だけならば牢屋か留置場になってしまう。

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  1. 2016/02/28(日) 17:16:30|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 君は真面目だから四六時中張り切っている。夢の中まで天下国家を考えているのではないか。一日二十四時間、八時間寝て、八時間働いて、八時間雑事休養にあてるが一般である。一日一時間だけ天下国家を考え、あとはゆったりと遊ぶのだ。人類の半分は女である。この女を相手に捉われなく遊ぶようになれば味も出来るであろう。

 君が天下国家を論じている間は俺の家来だが、香りと味を身につけた時は俺が君の家来になる。一生俺の家来になるか、それとも俺を家来にするか。どちらかを採るか?君が世人から戸松は堕落して花柳界で遊び戯れてばかりいるということが俺の耳に入ったら、俺はその時から君の家来だ。君はそういう人間なのだ。天下に並ぶものなき見識、経論、手腕をもった男だ。尠くとも君は君自身を知るべきである。それを自覚し、悟るのだ。」

 戸松はよくこう人に語り、翁も偉いが、秀三も偉い、我々年代で真の将の将たる人物は秀三をおいて外にないと心から心服していた。

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  1. 2016/02/29(月) 13:25:56|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

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國 乃 礎

Author:國 乃 礎
   綱 領
政官財・癒着根絶
マスコミ横暴撲滅
国賊売国奴殱滅
現行憲法廃棄
日米安保破棄

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