いしずえ

第二巻受難の巻

 「日本がドイツと行動をともにすることは危険ですよ……日本は孤立主義はとるべきでない。世界の弱小国をひきつれて国際調和を主張すべきです」

 「国会で叫びたいとおもっても、誰もとりあげてはくれない。反対に命があぶないから止めろという。新聞にもかかせない、雑誌にものせてくれない……」と、小さい顔をけいれんさせて憤慨していた尾崎翁――

 戦争を防止するような意見は、今の日本には一切不用であった。日本の叡智はすでにほおむられ、戦争にたいする執念だけが、すさまじい勢いでもえさかっているのであった。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/01(金) 16:02:07|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 国際的展望のきく大家や、軍略の達人は、口をそろえて日本の敗北をうれえているのに、東条を中心とする一群の指導者たちが、必死になって国民を鼓舞しながら突進していくのは一体なぜであろうか。

 無知のためか……それとも国民をここまでひっぱってきた責任上、軍人としてひっこみがつかなくなってしまったのか……あるいは降参と退却を恥辱とする軍人精神のためか……それとも国民を承服させる自信がないのか……もしくは、一か八か、勝てるかもしれないという投機的な気持で希望をつないでいるのか……

 どうやら、この勝てるだろうという希望的ムードが、すべての日本人を支配しているように思われる。

 じっさい、戦いの勝負というものはわからないものだ。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/02(土) 14:15:29|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 ナポレオンモスコー遠征にしても、首都モスコーまでも焼きはらって敗走しつづけたロシア軍が、さいごに奇跡的にも無敵をほこるナポレオン軍を壊滅せしめた例もある。ロシア魂におとらない日本魂が、窮地にたってどのような神通力を発揮するかは予測をゆるさぬことである。

 戸松も大和魂を信じないわけではない。しかし、二十世紀の戦争には、人間の精神力にも限度がある。陸に海に空に、戦域が立体化し、兵器がすさまじく機械化して性能をたかめてきた現今では、大和魂では克服できないものがある。

 それよりも、この戦争が、戦争の目的をのりこえて我執化し、国力をこえて盲走しているようにおもわれるところに、じっとしておられない不安と危惧をかんじるのであった。

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  1. 2017/09/03(日) 18:55:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 俺はあまりいろいろの人に会い、多くのことを知りすぎたのかもしれん……心の底で彼はひくくつぶやいた。多くのことを知れば知るほど、日本が陥入りつつある危険性がわかってくる。これは今の場合、個人的にはかえって不幸なことであった。上にむき下にむいて、狂うように訴えてみたところで、誰もうけつけてくれる者はいない。

 日本は戦争にむかって、国をあげて巨大な武器のように、がっちりと組立てられてしまっているのである。

 もはや、戦争は生活目的そのものとなっている。

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  1. 2017/09/04(月) 14:19:55|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 戦争と関係のない職業は、どんどん廃業させられ、商店はつぎつぎと戸をとざし、失業した人々は洪水のように軍需工場へとなだれこむ。製材工場も織物工場も、どんどん軍需品をつくる工場にとってかわり、日本の産業は完全に軍事化してしまっている。

 精神的にも経済的にも、ここまでうちこんで体勢をととのえてしまったからには、よほどの天才的指導者でないかぎり、急に戦いを打切ることはできないかもしれない。

 国民は必勝を信じている。その上決定的な敗北が眼の前にはっきりと見えているというわけでもない。政府が戦いをやめるといっても、国民はおそらくきかないだろう。

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  1. 2017/09/05(火) 15:59:37|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 又、軍部の強硬派は、単独ででも戦争を継続することだろう。満州事変以来、下剋上は彼らのお手のものになっている。

 おそらく、東条首相は、国内的な大混乱をまねくより、一か八かの世紀の賭に体あたりしていく方が、得策であるとかんがえているのかもしれない。人生にも国家にも、そういう機会が運命的にも必然的にも、ある時期にさけがたい勢いをもってめぐってくるものである。

 生命をかけてうちこんできた内地での活動を一応うちきった今、彼の心には別の角度から東条をみつめる余裕がうまれていた。

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  1. 2017/09/06(水) 13:20:07|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 あぶないけれども勝つかもしれない……という心理は、日本人ならば、戦争反対論者も和平論者も、それぞれ心の片隅にいだいている一褸の希望であった。

 勝敗を超越しているように、一度もそれを口にしたことのない頭山満翁でさえ、やはり同じような考えに立っていたようである。

 茨城から帰った翌日のこと――

 戸松は頭山邸に電話をかけて、熱海でたのんでおいた書ができているかどうか問い合わせてみた。すでに用意されているという秘書の返事だったので、さっそく常盤松の邸にたずねていった。

 翁はどこかへ出かける予定であったらしいが、寸時をさいて会ってくれた。

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  1. 2017/09/07(木) 14:22:40|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「三ヵ月の間、走りまわってみましたが、内地における工作はすべて徒労に帰してしまいました。休暇は六ヵ月とってありますが、このまま滞在していても活発な活動はできませんから、一先づ上海にかえろうと思います。

 今後は活動の場を中国において、アジアの恒久的平和のため努力してみるつもりであります」

と、報告とも挨拶ともつかないような調子でいうと、翁は

 「うむ……」とふかくうなづいて、

 「中国の問題は、そのまま日本の問題じゃよ。わしのやりたいことはいま秀三がやっているから、あんたは一つ秀三に力を貸してやってもらいたい。秀三をたすけてやってもらいたい……」

と、念をおすように力をこめて云った。

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  1. 2017/09/08(金) 11:43:34|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 戸松もこれに応ずる言葉のかわりに、つよくうなずいて、

 「今後ますます、中国問題は非常に重要なことになると思います。

 勝てば今の状態では、軍が中国を思いのままにしようとして、漢民族の怨恨を深めるようになるでしょうし、負ければ、日本軍のかわりに中共軍に席をゆずる結果になって、ますます混乱するでしょうし、この問題には大才能が必要だとおもいますが、日本の指導者の中には、そういうことを考えている者はいないのではないかと思います。

 われわれがしっかりしなきゃ駄目だと、つくづく感じます」

というと、翁はすかさず、

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  1. 2017/09/09(土) 10:22:50|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「負けるようなことはあるまい……負けることはあるまいと思うが……」

 しばし、思案するように言葉をきって、

 「問題は飛行機じゃよ。ちかごろの飛行機はずい分と性能がすぐれているというから、航空力が問題じゃ。

 飛行機の生産は、どういうふうになっているだろうか?」

 いつも受身の翁が、めずらしく戸松に問いかけてきた。

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  1. 2017/09/10(日) 18:53:14|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 負けることはあるまいが、なにかしら不安である……という翁の心理は、やはり他の人々と共通なものであった。理性をもった愛国者ならば、それはむしろ当然のことであった。

 昭和十四年のノモンハン事件のときにも、日本はロシアの最新式に機械化された武装におそれをなしたばかりである。

 文明の先端をあゆんでいる米英相手では、どのような武器、どのような航空機が立ちむかってくるかわからない。それに対応するだけの用意ができているのか、どうか~翁の不安もその一点にあるようだ。

 依頼しておいた書は、同じ文体で六幅かいてあった。六尺程の紙に「慈雨仁風編宇宙」と太々とかいてある。

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  1. 2017/09/11(月) 14:37:06|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 翁は自分の意中を中国の良心にうったえているのであろうか。翁自身が文字に変じてしまったかと思われるほど、頭山の広大な風格、力づよい胆力を一巻の紙の中にありありとうきだしたものであった。

 この書はやがて周仏海の客間の壁に、能剣東の応接間の壁に、あるいは胡宗南をつうじて蔣介石の手にもわたり、そこを訪れる中国の頭能たちに、日本人の真の理想を訴えつづけることであろう。

 規則的な汽車の振動に身をまかせつつ、彼の思いは、目的もなくあれやこれやとゆっくり動きまわっていた。

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  1. 2017/09/12(火) 14:00:17|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 やがてそれは、不思議にも心の中に蜂起していた不快や悲憤の山をなでくずし、かわりにしずかな安堵が、潮のようにひたひたとみちてきた。

 とにかく、やるだけのことはやったのだ。日本人として、俺はせずにはいられないことをやってきたのだ。日本の遭遇している歴史的危機に、俺のとった行動は真心と勇気にみちた行跡として、俺自身の人生に記録される。そして、俺自らが自分の人生に誇りを感ずることができるのだ。

 それだけでもよい。それだけでも十分価値のあることだ。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/13(水) 15:12:29|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 彼は自分の行為を正義と誇りにむすびつけることによって満足した。その時をまちかまえていたかのように、心地よい睡眠が、彼の全身をつつみこんで、彼を無意識の世界へと、しずかにしずかにひきずりこんで行った。

 三十一日は二見ヶ浦に出て、海岸ぞいの朝日旅館におちついた。

 障子をあけると、縁側のガラス越しに、まばらな松林にそうて長くのびている防波堤が眼にとまり、その向こうに黒ずんだ海が白い波がしらを見せて、雄大にしかもあらあらしく動いていた。

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  1. 2017/09/14(木) 15:27:05|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 空は曇りがちであるが、風があるから多分明日は晴れるにちがいない、そして見事な日の出を見ることができるであろうという期待がもてた。

 あけて昭和十九年元旦、二人は早朝眼をさまし、いそいで着替えをすると、宿をとびだして親子島の日の出を見にいった。

 防波堤のつきたところに、岬のように岩山が海につき出している。その下は岩根が縁側のように海にはり出していて、平らな歩道をつくっていた。

 そこには、すでに三、四十人の男女がつめかけていて、初日の出の荘厳さに心をうばわれているところであった。

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  1. 2017/09/15(金) 10:46:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 太陽は今、海のかなたに顔を出しそめたばかりである。じょじょに、じょじょに、拡がりをましていく光の波は、水平線の一端から大空に大海原にと、ほのぼのとのびていく。

 黎明の神秘さは、無言の迫力にみちて、無限の広さへとひろがっていく光のつくりだす美にあった。それは自然が巧まずに描いてみせる一大芸術であるといってもよい。

 二人は太陽が、丁度親子島の間に見える位置に立ってみた。

 大きな鳥帽子をうかべたような父島と、低くて小さい小鳥は、二十米ほどの間隔をおいて並立し、太いしめ縄でむすばれあっていた。

 岸からそうはなれているわけでもないのに、太陽を背景としたその黒い姿は、遠くちかづきがたい神島という感じをあたえている。

   (43 43' 34)

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  1. 2017/09/16(土) 13:01:59|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 太陽は一刻一刻海をはなれ、やがてのこと、その全貌をあらわした。大きな赤い光の球……これは太陽と間延びしたよび方をするのはふさわしくない、まさに日輪、そのものであった。

 生きとし生けるもの、生命をつかさどる不可思議な力を無限にたくわえながら、尊大さもなく、てらいもなく、ありのままなる権威と力にみちて、大らかに、華やかに、しかも清らかに上空をめざしてのぼっていく。海はそれを祝賀するかのごとく、金色にかがやく波をうねらせ、荘重な調べをひびかせていた。

 「きれいだなあ……」

 「うん、見事だ……」

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/17(日) 16:40:39|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 二人の男はみじかい平凡な賛辞をかわしながら、じっと見つめつづけていた。心の中には新鮮な感動がみちていたが、まわりの人々のように、ただちに両手をあわせて拝むという動作にあらわすことはできなかった。

 くっきりとした赤い日輪が、広漠とした白光にかがやく太陽に変貌していくさまを、ゆっくり見ている時間のない二人は、間もなく宿にひきかえした。いそいで朝食をとり、宇治山田駅に出て荷物をあずけ、それから皇大神宮に参詣しなければならない。

 二人が五十鈴川の流れを見渡しながら神宮橋をわたったのは、八時ちかくであったろうか。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/18(月) 13:58:20|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 前にも後にも、人の波がぞくぞくとつづいている。どの顔もあらたまった真面目な顔をしている。伊勢神宮に詣でなかったら、新年をむかえたような気がしない、という人生に真剣な人達ばかりのようである。中には、父や子や兄や弟を戦場におくり、神にすがらずにはおられない切実な心の人も多いことであろう。

 これでは神前にぬかづいて、心しずかに新しい年をあらたなる決意をちかうことはできそうにもない。未明に来るべきであった……戸松は心の中で後悔した。

 神橋をわたると、道は右に折れ、流れに並行して川上にむかってすすんでいる。そのはるか前方には大和の山々であろうか、晴れわたった空にくっきりと藍色の曲線を描いている。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/19(火) 09:36:15|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 その山の端を眺めながら、人の流れについていくと、道はさらに左に折れ、そのあたりからは急に木立がふかくなって、進むにしたがって鬱蒼たる深山の感がふかまってくる。

 やがてのこと、左手の方に簡素な社の建物がみえ、人の波は左折してなだらかな傾斜をなして神門につづき、そこからは、混雑をさけるために仮設したものとおもわれる通路をまわって参道へとひきかえしている。

 樹木ののびるにまかせ、枝の茂るにまかせた奥深い神域は、自然と神との一致をおもわせ、自然と神と人間が調和一体化するにふさわしいところであった。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/20(水) 10:49:31|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 人影の少ない時刻であったなら、ここに立っただけで神を感じ、単純で素朴な建物に、神々しい美を見出すことができたであろう。

 ゆるい傾斜の石段をのぼって、神門の前にたったとき、二人は人をかきわけて前にすすみ出た。

 眼の前に一すじの帯のように、つややかな玉砂利の参道が、はるか前方の鳥居をくぐってその奥の社殿にむかってのびている。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/21(木) 10:30:22|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 きよらかな砂利を一面にしきつめたすがすがしい神苑の向こうに、色彩もなく、巧んだ線もなく、素朴な清浄さをただよわせてしずまっている御魂屋を拝したとき、戸松はそこに、日本人の魂の真の故郷があることをしみじみと感じたのであった。

 御神体は三種の神器の一つの鏡である。鏡そのものは一つの物資にすぎない。しかし、その鏡にむすびつく長い歴史と、鏡に象徴された民族の思想は、幽遠にして偉大なものである。

 これは、単なる物資ではなく、思想そのもの、神そのものに昇華した存在であるといえる。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/22(金) 14:22:43|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 この鏡をみること吾を見るがごとくせよ――と大御神が仰せられたという素朴な説話は、科学や宗教をこえて人間の根本をついている。

 鏡を見ることは自分を見ることである。自己の中に神を発見することである。神を外にもとめるのではなく、自分自身が神を自覚するとき、鏡の中にうつる自分は、大御神と一つになる。――すなわち、この鏡を見るとき、わたし(大御神)のごとくになってくれ、神の心にかえってくれというわれわれの先祖の永遠の祈りである。

 鏡によってあらわされた大御神のたかい徳性を民族の基本としたということは、単純なようで汲めどもつきない深さと偉大さをふくんでいるといえる。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/23(土) 14:07:20|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 共に床を同じくし、殿をひとつにして……といわれた大御神の教えは、ときどき神をおもうのではなく、寝てもさめてもつねに神といっしょに生活せよと、もとめている。

 しかも、罪や汚れをとりされば、ただちに神を見ることができるという、人間の汚れない生地そのものが重んぜられ、この社の質朴さ、技巧と無駄のないわびそのものの風情は、人間の生まれながらの素直さ、清浄さを尊んだものであるとおもわれる。

 鏡を見て神を思え——という教えは、キリスト教の十字架を見て神を思え——という思想とはおよそかけはなれたものである。十字架は人間の罪を意味するものであり、十字架の罪は死によってあがなわれるものである。

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  1. 2017/09/24(日) 14:24:51|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 キリスト教では、神を思うとき、人間はまず自分が罪ふかい者であることをはじいり、神の許しを乞わねばならない。そして、神の子を十字架にかけた罪を永久に負いつづけ、そのつぐないを誓わされるのである。

 二人がふかく礼拝して頭をあげた時であった。

 つよい風がさっとふきつけて、はるか向こうの社殿の前の白い幕がぱっと上にふきあげられ、その奥がちらっと見えた。戸松は心の中に念じている思いが、神に通じたような気がした。

 「大御神のみ心を顕現した道義国家をきずくことにわが生涯をささげよう。いつかは必ずその理想に達してみせる……どうか、我に力をあたえたまえ……」

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  1. 2017/09/25(月) 09:04:24|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 天津神吾れ愛で給う吾れはただなすべきことを為せば足るなり(安部磯雄)

 天の安河流れ伝えよこの道を覚むれば聞こゆ大神の声(戸松慶議)

と、彼は心の中にとなえつづけていたのである。

 ふたたび群衆の中に流れこんだ二人は、急設の通路をわたって参道におりていった。

 人の波はいよいよはげしくなり、刻一刻とふえていくようである。

 二人は人混みの中をすりぬけながら神域を出、さらに外宮を参拝して宇治山田駅にかえってきた。

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  1. 2017/09/26(火) 14:09:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 ここから汽車で名古屋にひきかえし、熱海神宮に参詣した。

 この社の御神体は草なぎの剣である。鏡が神をあらわしているのにたいして、剣は世の不正、腐敗、汚濁の根をきりすてて神の世界を実現する、意志と断行と秩序をあらわしている。

 自分の利得のために剣をふるえば邪悪となるが、神の道をひらくためにふるえば正義となる。草なぎの剣は、至誠にして勇壮なる行動を意味している。

 この剣の起源は日本武尊の物語をさかのぼって出雲神話の中に発している。

 戸松は須佐之男命が出雲の国を統一したしるしとして、天照大御神にこの剣を献上したという物語りのなかに、真心をこめてうちこんだ出雲民族の誠と、くもりなき宝剣に表現された須佐之男命の至誠を感ずるのである。

    (43 43' 23)

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  1. 2017/09/27(水) 10:53:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 剣は直である。心の中に草なぎの剣を帯びて、日本を正すため、アジアを正すため、直の行動をおこすのだ……戸松は社前にちかった。

 二つの社に参詣して、彼は精神的にすべたがととのったように満足であった。

 だが、不思議なことに、三種の神器のうちの他のもう一つ、玉のことには考えがおよばなかった。

 八尺曲勾玉は、天皇が継承してまつるものであって、国民にはあまり関係がないと思っていたからである。

 玉が命をあらわし、命のいとなみを意味し、生きとし生けるすべてのものに共通なものであるということには考えが及んでいなかった。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/28(木) 10:55:34|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 己のいのちを自覚せよというのが玉の思想であり、神代といわれる遠い昔から、連綿とつづくいのちの継承の偉大さをあきらかに示したものが、万世一系の天皇であり、いのちの伝承とともに、鏡の精神をあわせもってつたえたところに玉の真意があるのであるが――戸松はまだそこまで突っこんで考えてみたことはなかった。

 彼は命をいだきながら、命の自覚にはまだ思いいたっていない。ましてや、命のいとなみをみつめるほどに、精神がきめこまかく練れてはいなかった。

 天皇は皇統の継承者であり、国家の最高権力者であるという大づかみの認識はあったが、その中にながれる深い思想(永遠の道・神ながらの道)は未だはっきりとつかみとってはいなかった。

 とにかく、年頭に日本の二柱の祖神の精神にふれたという満足感は、これからの一年にたいする期待を大きくふくらませ、二人は意気ようようとして鹿児島にむかったのである。

   (43 43' 23)

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  1. 2017/09/30(土) 09:15:04|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

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國 乃 礎

Author:國 乃 礎
   綱 領
政官財・癒着根絶
マスコミ横暴撲滅
国賊売国奴殱滅
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日米安保破棄

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