いしずえ

第二巻受難の巻

  鹿児島男児は怒

 鹿児島では園田氏の知人が加入している南洲会で話すことになっていた。

 旅館におちつくと、園田氏はさっそく連絡にはしりまわり、大体の手はずをととのえた。

 当日までの余暇を、二人は園田氏の垂水の実家をおとずれたり、桜島の雄姿を望見したりして、南国の空気をのんびりと満喫した。

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  1. 2017/10/01(日) 17:11:02|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 このあたりには、戦争の足音がそれほど大きく刺激をあたえているようには見えなかった。食糧に窮している風にも見受けられない。窮迫は東京、大阪のような大都市を遠のくにしたがってゆるやかになっているようである。

 しかし、蔣介石打倒、米英撃滅をめざす精神の武装は例外なくつよくかためられていた。北のはしから南のはしまで、人々の心がかくまで一様に、しかも完璧に統一されていることに、戸松は今さらのように驚嘆をおぼえずにはいられない。

 しかもこの空気は、鹿児島市の西郷神社における南洲会の席上において、戸松の弁説に反撃して火のようにふきあがったのである。

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  1. 2017/10/02(月) 10:12:17|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

新聞 いしずえ 秋季号 10月1日発行 №41

新聞 №41

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  1. 2017/10/03(火) 13:50:21|
  2. 新聞

第二巻受難の巻

 南洲会は西郷南洲を尊敬する人々の集りで、会員のほとんどが翼賛壮年団に参加し、南洲精神から発した愛国心にもえていた。

 戸松が中国からの全面撤兵を主張すると、全員が不満の色を露骨にあらわし、赤星輝也という壮漢が憤然と怒気をはなちつつ反げきしてきた。

 「戦いに勝っているのに、全面撤兵をすることはない。そんな馬鹿な話があるか。それは敗北主義というものだ」

 こういう反げきには大分なれてきているはずであったが、若い血はかっと高ぶり、言葉するどく逆襲した。

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  1. 2017/10/03(火) 14:22:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「戦いというものは感情でやるものではなく、意志でやるものだッ。

 眼の前の敵をやっつけることにだけ夢中になって、伏兵をわすれてはいかん。孫子の兵法でもそれは固くいましめていることだ。

 蔣介石だけを敵だとおもったら大間違いで、その後に大謀略があることを考えにいれておかねばならん。蔣は共産党の謀略にひきづられて戦争したのであるから、日本が負けると一番こまるのは蔣介石だ。日本がアメリカに負けない中に和平の手をうたないと、日本もめちゃめちゃになるが中国もめちゃめちゃになる。

 蔣と手をむすんで、中国の共産軍は蔣にまかせ、日本軍は全軍フィリピンに集結し、その以北制空制海権を握りアメリカとの交渉を有利にするのが一番賢策というものだ。負けていて講和するのではなく、勝っていて和平を申しこむのだから立派なことではないか」

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  1. 2017/10/04(水) 09:27:47|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 途中から彼の声は説得調にかわっていた。しかし、これぐらいのことでは赤星氏を納得させることはできない。

 おそらく、彼はかんでふくめるように話してみたところで、理解しようとはしなかったであろう。彼の顔は怒りに激していた。話の真意をかみわける余裕がなかった。

 「負けていないのに頭をさげる法はない。今時そういうことをいうのは、スパイか非国民か国賊だッ。支那でもアメリカでもイギリスでも、日本にさからってくる国は、叩いて叩いて世界中叩きつぶすんだッ」

 と彼はさけんだ。

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  1. 2017/10/05(木) 10:11:26|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 戸松はもう何を語っても無駄であることをしった。こういう空気になったら、どんな説明も、実証も、なんの役にも立たないものである。

 日本はもう総ヒステリーになっているといってもいい。意見具申する者を暗殺者とみる首相もヒステリーだが、事実を正そうともせず、わずかな言葉じりや行動をとらえて、不敬、反国体、反戦主義をさけんで圧迫してくる憲兵や警察も異常である。

 もはや、明徳も、理性も、意志もほろんでしまい、戦いは感情で行われている。感情が感情をあおり、自からそれを制御することはおそらくできないであろう。

 今、日本は、二世紀前から西洋が世界におこなった侵略主義をまねることに、なんらの批判も疑いもいだかず、使命であると信じてつきすすんでいるのである。

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  1. 2017/10/06(金) 11:21:24|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 戸松はそれ以上赤星氏と論じあうことを止めてしまった。彼の腹中には、上海へ帰ってからの見通しある計画が、あらたに立ちはじめていたから、反撃も罵倒も許せる余裕が生じていた。(終戦後、鹿児島に游説したとき、赤星氏が来会し、あの時は失礼した。われわれはまったく不明であったといって涙をうかべて謝していた。純粋な人であったが、惜しいことにその後病死した。

 病中、御見舞に推参して夫人に紹介され、それが縁になって戦後赤星夫人(よし女史)は輝也氏の意思を継ぎ國乃礎運動が開始されるや率先して鹿児島県下の教え子(高等女学校教師時代)を初め、知人を説得し組織化に垂範奮闘してくれたのである。

 内地に失望してしまった戸松は、帰心矢のごとく、一日もはやく上海に帰りたいという欲望にとらわれ、翌日からは渡支の手つづきにいそいだ。

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  1. 2017/10/07(土) 14:31:23|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 ところが、海路も陸路も空路も、なかなか切符を手にいれることができず、鹿児島の宿(市役所前の磯の家)で二十日余もじりじりしながら待たされることになった。

 やっとのことで船の切符が手に入り、四ヵ月の間行動を共にした園田氏に袂別し、長崎港から出港した。

 船は上海港に直航せず、朝鮮の港々によっていくため、なかなか運航がはかどらない。敵の潜水艦が近海にひんぱんに出没するようになったため、自由に航行できないのであった。

 彼は自分の危惧が、近い将来事実となってあらわれるのではないかという不安にかられながら、故国の安泰を祈らずにはいられなかった。

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  1. 2017/10/08(日) 14:42:39|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

   戸松帰る

 「上海はやっぱり暖かいなあ」

 厳冬のあいだ、食う物もろくに食わずに、日本内地を南北にかけて飛びあるいてきた戸松は、その一言に、もろもろの感慨を要約していった。頬と眼のまわりの肉がおち、きびしい陰影が顔をくまどっている。労苦をきざみこんだような顔だ。

 彼が上海に帰ってきたのは、二月も十日をすぎた頃であった。

 玄関に彼をむかえた時、わたくしは、そのきびしい陰影に圧倒された。

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  1. 2017/10/09(月) 16:59:41|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「おかえりなさい」

と、一言声をかけただけで、あと何をいっていいのかわからなかった。身近に彼を迎えながら、心と心の距離がはじけるような勢いで遠のいていくのを感じた。

 別居中は、彼と自分をへだてている者は、彼をとりまく牧谷や青年達であると考えていた。また、生いたちの相違や、性格のちがいであると思っていた。

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  1. 2017/10/10(火) 06:18:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 だが、六ヵ月ぶりに彼と視線を交えた瞬間、彼と自分をへだてているものが、他人とか、過去の環境とか、性格の相違などというあいまいなものではなく、もっと直接的な、二人の立っている位置の相違であることを感じた。つまり、現実と必死にたたかいつつ前進しつつある者と、現実に堕して停滞している者とのちがいであった。

 わたくしはたじたじと後込みしたまま、素直に彼の前にとび出して行けなかった。そういうわたくしに、ちらっと一瞥をくれたまま、彼は埠頭まで出迎えた青年たちにとりかこまれたまま、どんどん階段をのぼっていく。わたくしは無視されているような卑屈感を感じながら、おずおずと後にしたがった。

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  1. 2017/10/11(水) 06:18:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 彼は人々を客間にまたせておいて日本間に入っていくと、パッパッと洋服やチョッキをぬいでは片っ端からの壁の衣紋掛にかけていった。駈けよって行っては見たものの、手をさし出すすきもない程、機械的ですばやい、馴れ切った動作であった。手持ち無沙汰で其処につっ立ったままでいる妻をあてにしようとはしなかった。半年のあいだ、身の廻りを一人で処理してきたのである。習慣というものはおそろしいものだ。

 わたくしは上空を翔る鷹の羽ばたきでも見るような、まぶしい思いで、そうした彼の姿をみつめていた。

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  1. 2017/10/12(木) 06:19:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 「着物は……」

 声をかけられて、あわてて丹前をとりあげ、後から彼の肩にかけてやった。次の帯をとりあげ、さし出した。

 すると、帯を持ったまま両手を、ぐっとつかんで引きよせた。

 「どうしたい、元気がないじゃないか。どこか悪いのか……」

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  1. 2017/10/13(金) 06:19:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 言葉とはうらはらな、少年のように悪戯っぽい笑顔であった。にぎった両手に、ぐっと力をこめて、

 「元気を出せ、半年ぶりに会ったんじゃないか……東京の話は今夜ゆっくりしてあげよう」

 帯をぐるぐると腰にまきつけると、彼は柔道家のような歩きぶりで、ずかずかっと客間に出ていった。

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  1. 2017/10/14(土) 06:20:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 人間同士の肌のふれあいというものは、不思議な感応を呼び醒ますものだ。四本の手がからみ合って、結び合ったただそれだけのことであるのに、心の位置ががらりと音をたてて崩れてしまう。今までの人間的な距離や食い違いが、失せてしまって、ぐっと身近な親しみがわいてくる。

 ほっとしたような、又ほのぼのとしたような心のはずみが、全身をみずみずしいやさしさに包む。男女の肌のふれあいというものは、そうしたものなのであろうか。

 ぐっと握りしめた夫の掌には、言葉や表情にならない感情がこめられていたような気がする。わたくしは、新たにそれを感じとろうとして、自分の両手をじっと見つづけていた。

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  1. 2017/10/15(日) 08:14:03|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 わたくしは、もはや夫に怖れを感じなかった。きびしい陰影のただよっている顔にも、威圧を感じなかった。さっきまで、彼の後でおどおどと怯えていたことが、まるでうそのようであった。

 客間では、大勢の男たちが、戸松をとりまいていた。村上が連れてきた見知らぬ青年もいた。王震亜もいた。通訳の王某もいた。彼らは長い間、戸松の話にうえていたのだ。

 彼らの心は飢えは、戸松と握手し肩をたたき合っただけでは満たされない。彼らは夫婦のように、肌をふれ合うだけで充実感をうることは出来ない。彼らはきかねばならない。戸松が半年のあいだ、何をしてきたか、また、これから何をしたいとねがっているかを……。

 翌日、戸松は半年ぶりに軍に出勤した。転地療養許可の期間は、去年の八月末から六ヵ月のあいだとなっていたから、そろそろ期限が切れる頃であった。司令部には菅野と山田の二人だけで殆ど部員が変っていた。班長は陸軍部へ、鈴木、長谷川は金華作戦に出勤したままであった。

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  1. 2017/10/16(月) 05:49:40|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

 昭和十八年から二十一年敗戦帰還する迄の四年間はわたくしたち夫婦の受難時代であった。しかしこの受難時代に戸松は「永遠の道」(日本固有の神ながらの道)生存法則論の原理を築いたのである。第十三軍司令部時代前田参謀長に日高爾々彦という老国学者(軍司令部顧問)を紹介され、国学神道を学ぶことになり、これが縁となって今泉定助翁、筧克彦博士、藤沢親雄氏、磯部忠正氏、作田壮一博士を知るに至った。この道が彼の一生を決定することになるのである。

 少年時代英雄伝を読んで感動し、大政治家たらんと志して上京し、政治経済学を学んでその基礎を固めたが、戦争と敗戦は民族精神恢弘の道に転換させ、遂に「永遠の道」を切り拓き先人未踏の大道を開明する大業に身命を捧げることとなった。人の運命とは不思議なものである。わたくしの運命もまたこの受難時代に定ったといってよい。

   第二巻 受難の巻終り

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  1. 2017/10/17(火) 09:35:11|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第二巻受難の巻

  著 者 略 歴

大正六年五月七日 島根県太田市五十猛に生る

昭和九年三月十七日 群馬県前橋高等女学校卒

昭和十一年三月二十三日 群馬県女史師範学校卒

同年四月より群馬県下小学校教諭として奉職し、十三年長兄が陸軍士官学校教官に転じ、東京に赴任すると共に、退職して後海軍省に勤務。結婚のため辞職

昭和十八年四月二十二日戸松慶議と結婚、二子の母となり、戦後は夫を援け、国民精神運動に傾注し、機関紙「婦人と現代」を発行し、その主幹となって活動した。昭和五十七年結婚四十年記念日を目前にして三月二十六日死去。

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  1. 2017/10/18(水) 09:27:11|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

  第三巻 激流の巻 出版にあたりて   戸 松 慶 議

 かつて英国の芸術家バーナード・リーチは「日本には世界のあらゆるものがあるが日本がない」、「世界でもっとも反日的国民は日本人である」と語ったことがある。

 明治以来、富国強兵・近代化を急いだ日本は、ことごとに西洋を模倣し、西洋化に力を注いで来た。その拙速、消化不良がやがて日本人から自主性・主体性を失わしめ、ついには西洋への精神的隷属を招いたのである。

 その弊害は、明治の鹿鳴館や大正のデカダンのみに及ぶものではない。むしろ国粋主義を振りかざし、鬼畜米英を唱えた昭和の軍国主義によってこそ、日本の固有性は見失われたのだった。

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  1. 2017/10/19(木) 14:05:29|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 天皇を神聖視し、神国を標榜しながら、帝国軍人は白人のアジア・アフリカへの侵略に追随し、自らその轍を踏んだ。この歴史的逸脱は、外にあっては人間の競争本能に依存する帝国主義となり、また内にあっては利己的競争による立身出世主義として現れたのである。

 およそ人間とその社会を支える本能には、競争本能の外に、協力本能・情意本能のふたつがある。しかし、我・知・欲・即ち自我と個性、知識と意思を本質とする西洋近代の文明は、自由主義、個人主義に傾き、競争本能に片寄りがちの性格をもっている。

 こうした生存競争にもとづく流れが、帝国主義を生み、また反作用としての社会主義・共産主義を生み、近代の世界歴史はとどまるところを知らぬ闘争の歴史を歩んできたのだった。

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  1. 2017/10/20(金) 09:13:35|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 日本近代の過ちは、自己の独自性を忘れてこの生存競争を正当視したところにあった。模倣は創造性を失わしめ、創造力の涸渇は社会国家を動脈硬化へと導く。

 私が日中和平運動の中で知り、或いはビルマ戦線で感得したものは、軍官をはじめとする日本社会の硬直化であった。そして敗戦の最大原因は、この模倣、競争、立身出世主義による主体性の喪失だったのである。

 だが敗戦と占領による清算は、さらに固有文化の否定と破壊を招いた。伝統否定、西洋への隷属は進歩主義、マルクス主義に形をかえていっそう病根を深め、生存競争は貿易摩擦、エコノミック・アニマルの蔑称を生んで今なお世界の批判と非難を招いている。

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  1. 2017/10/21(土) 08:59:17|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 日本の固有性は「真中を立て分を明らかにして結ぶ」随神の道である。西洋の「我・知・欲」と東洋の「没我・信仰・禁欲」を合体する中心を立て「分・信・節」を成り立てることによってともに生かしてゆく神道の本分は、生存の競争に非ず、生存の法則を明らかにし共存共栄してゆくことにある。

 生存の法則を明らかにして立てることなくして、あの敗戦を真に反省することはできず、また現今の思想混乱の時代を切り開くこともできない。

 日本の根本問題が理念、原理にあることを認識して以来、私は現実政治にたずさわる道を断念した。政治によってこの生存競争の文明を克服することはできないからである。

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  1. 2017/10/23(月) 15:58:54|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 要するに今次大東亜戦争の直接敗戦の原因の、人事の不調・作戦の謬り、補給の不足不備にあったが、根源的遠因は西洋模倣による自主性・主体性の喪失と立身出世主義による生存競争、弱肉強食にあった。模倣と立身出世は、生存原理を乱し競争本能に狂わせるおそれがある。これを改めない限り、日本は武に敗れ文に滅ぶであろう。戦後の荒廃はすべてこれから出ているのである。

 日本の固有性に基き新しい文明を開かんとする国民運動、國乃礎運動の理念普及に生涯かけることを私は敗走の南方戦線の中で抱懐し、確信した。そしてこれらの問題は、つねに私たち夫婦の語り合ったことがらである。

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  1. 2017/10/24(火) 15:27:10|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

   応 召

  憲兵も特高も我が同志だ

 夕方からは歓迎会をひらくことになっていた。戸松自身は内地の和平運動が失敗におわったいま、歓迎会は必要ないとこばんだが、青年達がきかなかった。封建的人情のあつい村上などは、こういう場合、合理的な考え方の出来る男ではない。成功しても、失敗しても、無事帰海したことに、まず祝盃をあげずにはおられない。

 そこで、内々で心ばかりの祝宴をはることになった。

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  1. 2017/10/25(水) 10:30:18|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戸松はいたずらに酒宴をはることを好まないたちである。日本では古くから、飲み食いしながら歓談の中に、話の核心にふれ合う懷柔的で老獪な方式が多く用いられてきたが、こういうあいまいなムードの中で重要な問題を決するということは、彼のもっとも好まないことであった。

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  1. 2017/10/26(木) 20:31:53|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 彼は祝盃をあげながら無事帰宅をよろこばれるよりも、むしろ飲食にとらわれない透明な精神で、運動の前途を語り合い論じあいたかったのである。

 彼のこうした仕事にたいするきびしい態度は、事ある毎にそれにかこつけて酒盃をあげたい食いざかり飲みざかりの若者達には、多分にけむったかったにちがいない。だが、今の場合、彼のために祝盃をあげることは後輩の義務であり礼儀でもあった。

 テーブルをつなぎ合わせ、椅子をよせあつめて十二、三人分の席がととのったところで、外から中国料理の大皿が数品運びこまれてきた。こういう料理をつくる店が、この近くにあったことさえ知らなかったわたくしは、魔法の御馳走のように、つぎつぎとあらわれる魅力的な料理に、眼をみはるばかりであった。

 日本酒や支那酒がほどよく燗をされて運び出された。

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  1. 2017/10/27(金) 09:41:52|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戸松がマントルピースを背にして席につくと、誰がさしずしたというわけでもなく、めいめいが思い思いの場所に腰をおろした。メンバーは家の者と、外から村上が一人加わっているだけであった。牧谷や青年達は戸松を中心にして一かたまりになり、夫人達は子供を中心にして一かたまりになっていた。

 みんなの盃に日本酒がつがれ、牧谷の音頭で乾盃がおこなわれた。あとは日本酒を飲む者、老酒を飲む者、それぞれ勝手である。牧谷や村上のように、酒の豪者は日本酒より老酒の方をよろこんでいた。

 戸松は日本酒を二杯のむのが精一杯である。三ばい目からは、薬をのむよりつらくなる。下戸が酒飲みの相手をするには、まず腹ごしらえをしてかからなければならない。彼は一ぱいの酒を、苦い薬でも飲み下すように、顔をしかめて一気にのむと、さされた盃を手にしたまま、めしを所望した。

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  1. 2017/10/28(土) 09:27:53|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 満腹してしまうと、眼の前の酒も料理も、彼には用のないものであった。めし前のいっぱいの酒は、一升も鯨飲したあとのように、顔面をカッと紅潮させ、彼の舌は、油をそそいだ車のように闊達にすべりはじめた。

 昨日はアジア同盟の同志であるといっても、中国人である王達がいるため、軽率に口できないこともあった。しかし、今夜は胸襟をひらいて語ることができる。肉親的同志ばかりである。彼は自由に、しかも切迫した面持でかたった。

 内地では軍報道部が、敵機の撃墜や敵艦撃破をはなばなしく報道し、国民の戦意をかりたてている。にもかかわらず、民間の識者のあいだでは、谷底のせせらぎのように、ひそひそと日本軍の敗勢が語り流されていた。ガダルカナルの敗退や、ソロモン群島の敗北、飛行機の絶対量の不足、アメリカ軍の機械化の優劣等、軍部の中にさえ憂えている者は多い。

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  1. 2017/10/29(日) 14:19:14|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 ヨーロッパでは、ドイツ軍が十五、六年ごろの猛虎のごとき勢いはどこへやら、じりじり、じりじりと各方面で撤退をよぎなくされている。それに相呼応するかのように、日本もぐんぐん太平洋戦域をしぼられつつある。戦いはすでに南太平洋から中部太平洋へとうつされた。今年中に内南洋で激戦がおこるにちがいない。(サイパン戦はその頃の識者の予想より半年あるいは一年も早く、六月におこなわれた)ここで破れるようなことがあれば、戦いの前途は危ない。

 日米戦の天王山であるサイパン戦は、両軍とも必死の攻防戦を展開するであろうから、戦いは熾烈をきわめるだろう。マリアナ群島は日本の垣根のようなものだ。ここを破られたら敵は窓下におしよせてくる。そうなったら窓ガラスを破って中に入るのは簡単だ。日本としては、死守しなければならんところだ。おそらく、七度生まれ代っても護りぬこうという悲壮な決意でかかるだろう。

 アメリカ軍は日本軍の超人的な戦いぶりに恐れをなして、本土への進攻を躊躇するようになるだろう。

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  1. 2017/10/30(月) 13:44:04|
  2. 永遠の道 戸松登志子著
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國 乃 礎

Author:國 乃 礎
   綱 領
政官財・癒着根絶
マスコミ横暴撲滅
国賊売国奴殱滅
現行憲法廃棄
日米安保破棄

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