いしずえ

第三巻激流の巻

 戸松の出勤に一番おどろいたのは、わたくしの母であった。

 これから面会にいくと云い張るのを思いとどまらせ、とにかく両国駅で待っていて、通りすぎるのを見送ろうということになった。

 兵営を出発するのが六時だというから、両国駅を通過するのは八時近くになるだろうという計算をたて、七時すぎには両国駅のプラットホームに出て待機した。

 千葉方面から汽車や電車が入ってくる度に母とわたくしは気狂いのようになって窓という窓に眼を血走らせ、車輛から車輛へと走りまわった。

 わたくし達は落胆と疲労にへたへたになり、くずれるようにホームのベンチに腰をおとした。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/01(金) 09:10:15|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 十時になった。しかし二人ともまだ帰る気になれなかった。もしや出発が遅れたのではないかもしや……もしや……という未練を捨てきれず、とうとう十一時までホームをうろつきつづけたのである。

 戸松が部隊を出発したのは、五時前であった。出動を命じられたのはわずか十九名で、戸松は要注意の兵隊として、第一番に指名されたのであった。前田中傷が彼のために聯隊を訪問するという前ぶれが、かえって上官を刺激し、面倒な兵隊は一日も早く戦地に追いやってしまえ、と云うことになったのかもしれなかった。

 彼らが両国駅をすぎたのは七時頃であった。わたくしと母がかけつけたのは、その十四、五分あとだったのである。

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  1. 2018/06/02(土) 18:22:01|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戸松らの一隊は下関で野戦鉄道司令部鉄道第十一聯隊に編入された。この部隊は一ケ月まえに津田沼で編成され下関で渡航待機中に十九名の病気による落伍者を出し、原隊に補充をもとめたのであった。

 戸松らが下関にかけつけたときは、すでに十三隻の輸送船に分乗して、まさに船出せんとしているときであった。すでに岸壁をはなれかけていた船をひきもどして乗りこんだのであるが、その船は船団の主力、帝亜丸であった。

 十三隻の船団は、帝亜丸を中心に、一群となって南へ南へと進んでいった。二日すぎ、五日すぎ十日、十五日と、平穏な航海がつづいた。

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  1. 2018/06/03(日) 14:18:57|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 明くれば見渡すかぎりの一面の海原に、南国の太陽がきらめき、暮るれば無意味な黒い波のうねりと、秘めやかに星のまたたく静かな空がながめられた。しかし、心はつねに一つのことを予期し覚悟していなければならなかった。

 いつ、敵の潜水艦や魚雷艇が、船団を発見せんともかぎらないのである。半月以上も、何ごともおこらず、しかも天候にめぐまれた航海がつづくこと自体が奇蹟であった。

 二十日目、シンガポール沖にさしかかるまでは、戦争をわすれてしまいそうな、南洋どくとくの気怠い茫洋とした日がつづいたのである。

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  1. 2018/06/04(月) 11:00:53|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

  海軍護衛艦の犠牲

 日をかさねるにしたがって、船室のむし暑さは息苦しいものになっていった。航行二十日目の夜は、暑さも頂点に達したかとおもわれるほどであった。

 明日の朝、昭南に入港するという通達が全隊員に流された。

 もう昭南のちかくまで来ていたのか、どうりで……赤道をゆびさすように突き出ている細長いマレー半島の地図が、戸松の頭にうかんだ。その先端の昭南、かつてのシンガポールに、明日の朝上陸するというのである。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/05(火) 10:57:25|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 内地を発つときの戸松の予想では、彼のぞくする工兵隊は、サイパン島の陣地構築のために派兵されるものだとかんがえていた。彼が上海でえた情報によれば、アメリカのサイパン反撃は、来年か、早ければこの秋頃になるみこみであった。

 ガダルカナル、ラバールの壊滅的物量戦を、中部太平洋にもちこまないうちに、蔣介石を説得して中国と和をむすび、さらに蔣をしてルーズベルトとチャーチルを説かしめて和平にもっていくべきであるというのが、去年の夏いらいの彼の運動の主張であったのだが……いま一兵卒として南方に拉しさられる身には、もはや大局的洞察も不可能となり、一ケ月まえの彼自身の運動すら、霧の彼方の出来事のように無縁のものになろうとしているのであった。

 彼らの部隊がビルマ防衛の第十五軍団に編入され、インパール作戦に参加するということは、航行中にすでに知らされていた。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/06(水) 09:53:03|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 インパール作戦とは、いったいどんな目的をもった戦いなのか、戸松にはよくわからなかった。インパールという地名すら、初耳であった。

 二年前の十七年八月、日本軍のビルマ占領によってビルマルートをうしなってから、連合軍は重慶への物資輸送のため、新しいルートをインド領内につくりつつあるということはきいていたが、、あるいはその基地を攻略することが目的なのかもしれない、と彼はかんがえた。

 彼は自分の部隊がこれから参加する作戦を、つまびらかに知りたいと思った。目的も方法もたしかめずに行動することに、彼は人間としての屈辱をかんじた。しかし、彼は自分のそうした感情をおさえねばならなかった。おさえる努力をしなければならなかった。彼は一兵卒なのだ。一兵卒にゆるされていることは、上官の命に忠実であること、ただ服従することのみであった。

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  1. 2018/06/07(木) 09:39:19|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 自分の理性と意志を質入してしまったような精神的不自由に、彼はいまだに苦痛を感じないではいられなかったのである。

 船室のむし暑さは、そうした彼の心をいよいよ醸成するかのごとく、息苦しさを加えつつあった。時計の針は、すでに零時をわずかにまわっていた。

 彼は船室の空気がたえがたくなって、甲板にでていった。航行中甲板にでることは、原則として禁じられていた。敵の海と化した太洋を航行するには、厳格な集団生活が必要だったのである。

 甲板は月影もなく、一面の闇にとざされていた。しかしそれは、うるしを流したような濃い闇ではなかった。帝亜丸の後から起ってくる船団の他の船が、影絵のようにうかんで見えた。

 戸松は後甲板の欄干によりかかって、暗い海に大きく息を放った。海は黙々として、闇の彼方にひろがっていた。その大らかな沈黙は、海綿のごとく、戸松の心のいらだちを吸いとってくれた。

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  1. 2018/06/08(金) 10:52:20|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 潮をわたってくる風も、新鮮で心地よかった。大気が澄んでいるせいか、星のきらめきもあざやかで美しかった。

 とつぜん、ドンと船に何物かがぶつかったような大きな動揺があった。

 何事だろう?

 放心したように、海や空をながめていた戸松は、はっと我にかえり、とっさに敵の襲撃を感じた。

 いよいよ敵に出会ったか……。

 そのことを待ちうけていたかのように、彼の心は勇み立った。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/09(土) 10:58:15|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 船尾にいる彼の眼に、二列になって縦走していた船団が、急に弧をえがいてちらばるように疾走していくのがわかった。

 ふと見ると、すぐ横を走ってくる護衛艦から勢いよく火がもえ上っている。だが、敵艦らしいものは何も見えない。海は何事もなかったように、黙然として黒い静かなうねりをくりかえしているだけである。

 ひょっとしたら、いよいよ戦地に入るので敵の攻撃をうけた時の演習をしているのかな……と、戸松はおもった。

 しかし、そうでもなさそうだった。戸松ののっている帝亜丸は、全速力をゆるめるようすもなく、反対に護衛艦は、ぐっと速力をおとし、火焰はますます燃えさかっていく。

 魚雷にやられたな……と気づいたとき、燃え上る甲板の上にずらりと並んで白い帽子をふっている海軍兵の姿が眼にうつった。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/10(日) 09:21:17|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 「陸軍さようなら……陸軍さようなら……」

 彼らは必死に叫びながら、帽子を力いっぱいにふっている。

 帝亜丸は、火焰につつまれようとしている護衛艦を見すてるかのごとく、必死の全速力で走りつづけているだけであった。

 「陸軍さようなら……陸軍さようなら」

 その声は海霊のよび声のように、次第に次第に彼の彼方に遠のき、やがて、火焰とともに海のしじまの中に没し去っていった。

 戸松は自分が夢をみているのではあるまいか、疑ってみた。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/11(月) 09:35:53|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 静かな星の夜に、おだやかな海原で、突然におき、あっという間に消えていった衝撃的な出来事を、そのまま信じるには、あまりにも海は静かすぎ、しかもすべてのことは詩劇のごとく雄大にして流麗にすぎた。

 それにしても、あの海軍兵の最後のわかれの声は、どうしたものであろうか。あれが火焰につつまれ、船もろともに沈んでいく武人の、この世における最後の声であるというのか。沈着にして乱れのない、親愛にみちたあの声が。

 助けてくれ、助けてくれ……泣きさけぶ人間むきだしの声であったならば、火だるまになって沈みゆく船を、胸かきむしられるような悲痛な思いで見つめたにちがいない。

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  1. 2018/06/12(火) 11:20:07|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 だが、あの陸軍さようならさようならという雄叫びのような別れの声には、生命に未練をもやす人間のもがきは感じさせなかった。むしろ、全力をつくして生きてきた者が、後事をたくして誇らかに云い送る激励の声をひびいたのである。

 こんなに明るく、たくましい死を、戸松はかつて一度も見たことがなかった。

 人間のきたえられたる魂が、死にのぞんで雄然として、その死を気高く美化し理想化していくものであることを、戸松は今更のごとく実感したのであった。

 翌朝、昭南についたという報らせに、兵隊たちはいっせいに甲板に出ていった。

 その時はすでに、船は岸壁をめざしてゆっくりとすべっていた。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/13(水) 14:50:10|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 港内を一望して、まずまっさきに戸松がおどろいたことは、艀にのった黒ん坊が、あっちにもこっちにも、水の上にはね上った黒い魚のように、ぴちぴちと動きまわっていることであった。彼らの何人かは、帝亜丸のまわりに漕ぎよせてきて、ものめずらしそうに見上げていた。

 真黒の顔に、眼だけがきらりきらりと光り、赤い唇が精力的に突き出ている。彼らの肉体には、野性的なエネルギーと迫力がみなぎっていた。それは、英米人の逃げさったあとの昭南港に、南アジアの力と権利を印象づけているかのようであった。

 陸に眼を転ずれば、コンクリートの岸壁が傲岸に行く手をはばみ、巨大な倉庫が海岸ぞいにきらめく太陽の光をあびながら、ものものしく建ちならんでいる。英帝国のアジアにおけるかつての富と力を偲ばせた。

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  1. 2018/06/14(木) 17:25:30|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 昭南が日本軍の手におちたのは、二年まえの十七年二月十五日の夢であった。その時いらい、シンガポールという英名を、昭南という日本名にあらためたのである。

 シンガポールはシンガポール島の南端に面している近代都市であって、イギリスのアジア政策の基地であった。

 この島は、マレー半島のとっ端に、ジョホール水道をはさんでぽっかりと浮んでいる小さな島であるが、全島が堅固な要塞になっていて、英国が世界にほこっていたセレター軍港、セレター海軍飛行場、カラン飛行場、ヤンバワン飛行場、テンガー飛行場、日本軍が苦戦したブキテマの要塞、パシルパンジャンの要塞が、シンガポールを囲みまもるかのごとくならんでいる。

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  1. 2018/06/15(金) 05:00:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 英国はこの島の各所に、豊富な戦争物資と強大な兵力をたくわえ、大英帝国の名誉にかけて、いかなるぎせいも惜しまぬ覚悟で、まもりつづけていたのであった。

 そのため、シンガポールのさいごの抵抗線パシルパンジャン丘の一角がやぶれるまで、軍司令官パーシバルは、頑強に抵抗しつづけたのである。

 当時、シンガポール陥落、山下(奉文)パーシバル両軍司令官の会見の報道は、日本人という日本人の血をわきあがらせ、歓喜せしめたものであった。

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  1. 2018/06/16(土) 08:00:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 今、昭南港の埠頭からは、かつての激戦のあとは望むべくもなく、また眼のあたりには戦いの傷あとも見あたらなかった。記念すべき戦跡にはるばる到着しながら、戸松らは感傷にふけるいとまもなく、細羊の群がおいたてられるように、黙々と船をおりていったのである。

 彼らがつれていかれたところは、昭南郊外の競馬場であった。競馬のすきな英国人のつくったものだけに、それは規模においても美観においても広大にして整然とした感じであった。

 ここではじめて、戸松は彼のぞくする鉄道第一聯隊の最高識者、安東恒夫大佐の訓示をうけたのであった。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/17(日) 13:39:25|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 がっしりとした軍人らしい風貌の大佐は、四千五百人の将兵の視線を一身にあびながら、まず冒頭に沈痛な声でいった。

 「昨夜零時十分、わが船団はとつじょ敵の潜水艦の襲撃をうけ、危険な状態におちいったのであるが、海軍の護衛艦が身代りとなって敵の魚雷をうけ、全艦火焰につつまれたまま沈没していった。わが部隊が今日こうして無事昭南の地に上陸することが出来たのは、護衛艦乗組員七十二名の職務にたいする責任感と愛国的ぎせいによるものである」

 会場はしゅく然として声はなかった。中には昨夜の出来事を全然知らずにいた者も多かった。彼らはひとしく、無意識のあいだに自分が危険にさらされ、他のぎせいによって危険を脱していた事実に愕然としたのであった。

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  1. 2018/06/18(月) 10:53:37|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 人間の生というものが時間空間の複雑きわまる変化流動のなかで、いかに微妙にむすばれていくものであるかという事実を、彼らは不思議な思いでみつめてみたにちがいない。

 戸松は事件を目撃していただけに、その思いは一しお深かった。

 陸軍さようならさようならと、白い帽子をふりながら、火焰につつまれていった海軍兵の姿は、戸松の胸にふかぶかと焼きつき、彼の人生にぎせいの偉大さと尊さをほりきざんでくれたのであった。

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  1. 2018/06/19(火) 13:35:05|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 安東大佐は、さらにこれからの軍の任務について、手短に話してくれた。三日間休養ののち、マレー半島を縦走してタイ国に入り、さらにタイを横断してビルマに入り、泰緬鉄道の守備構築を担当して、インパール作戦を可能ならしめるのが、部隊の任務だというのである。

 ビルマにおけるわが軍は、米、英、重慶の連合軍をむかえ、非常に重大なときに遭遇している。全力をつくして任務をまっとうする決意をもってもらいたいというのが、部隊長の要望であった。

 安東部隊がこれから参加するインパール作戦というのは、すでに三月上旬から開始され、日本軍はもはや敵陣まぢかまでせまっていた。しかし、戸松らが昭南に到着した五月末には、日本軍の苦戦は深刻きわまるものとなっていたのである。

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  1. 2018/06/20(水) 11:02:31|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

  戦場のインパールへ

 とにかく、インパール攻略戦というのは、ガダルカナルにつぐ悲惨きわまる敗退におわった。敵を包囲したまま、決戦をせずして退却したのである。この一戦で、日本は決定的に英国に勝利をゆずりわたしたものといえる。しかも、日本の全面的な敗戦をはやめるきっかけともなったのである。

 そのため、この戦いについては、戦後それぞれの立場にたった色々の批判がなされているようである。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/21(木) 09:36:35|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 そのころの首相兼陸相であった東条大将と、第十五軍司令官の牟田口中将とが計画した無謀な大冒険であったと攻撃する説---牟田口中将が功をあせり、ひそかに大将昇進を夢みてがむしゃらに軍をすすめ、多くの将兵を犬死させたものであるという説---軍の統帥が無能ででたらめであったと非難する説---インド独立軍の志士、チャンドラ・ボースに東条が刺戟されて、危険な戦いに突入したとなじる説---軍の上下の考えが一致していなかった、つまり軍の人事の不手際にあったという説---。

 戸松も戦後になって、インパール戦の全貌をしり、その作戦の無謀さにおどろいたのであるが、当時は一兵卒として戦いの嵐にもまれながら、戦争というもの、日本陸軍の実体そのもの、もっとつきつめては日本人の教育、日本人そのものの人間性について、とことんまで見きわめることができたのであった。

 ところで、インパール作戦というのは、どのような経過をへてなりたち、これまでに進展してきたものであろうか。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/22(金) 14:54:54|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 昭和十九年は、十八年のガダルカナル、ラバウルの敗退、アッツ、マキン・タラワの玉砕のあとをうけて、日本が敗戦への道をころがりおちるように向っていった年であった。

 つまり十六年暮から十七年秋にかけては、日本軍の進攻の年であり、それ以後終戦までは、敗退の年であったといえる。

 日本軍はさいしょの一年間に、敵をおいまくりおいまくり勢いに乗じて、南はオーストラリアまぢかくニューギニア、ガダルカナルまでおいつめ、北はキスカ、アッツ島に、西は支那大陸の奥深くせめいり、南西にむかってはマレー、ビルマを占領してビルマルートを断ち切り、敵をビルマ全土から一人のこらず追いはらってしまったのであった。四面にむかって、実力以上の戦域をひろげのばしていたのである。

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  1. 2018/06/23(土) 10:55:55|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戸松は軍事には素人であったが、周囲を敵にまわしたこの戦争は、無謀な戦いであるとしかおもえなかった。

 彼はたまりかねて和平運動に立上ったのであるが、それがかえって召集されるきっかけとなり、敗戦への道にかりあつめられたのであるからまったく皮肉というべきであった。

 インパールという町は、これまではあまり人に知られない、へんぴな町であった。インドとビルマの国境をはしる大山脈の間の小さな盆地にあって、文明からはおいてきぼりにされたまま眠っていた小さな町であった。

 そこへイギリス軍とインド軍が集結しはじめ、十八年の秋から冬にかけては、国境の大密林をきりひらいてビルマ領内にむかって軍用道路を建設しはじめたのである。

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  1. 2018/06/24(日) 11:34:37|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 というのは、その年の一月、カサブランカにおけるチャーチルとルーズベルトとの会談、世にいうカサブランカ会談で、米英共同の作戦をどうするかが相談されたさい、日本軍に占領されているビルマをうばいかえす作戦がきめられたのであった。

 それ以後、ただちに米、英、重慶の連合軍は、ビルマ反撃作戦にとりかかり、ビルマ東部の国境からは重慶軍が、北部国境からは米、重慶合同軍が反攻の準備にかかり、西部のインパールに集結したのが、英印軍だったのである。こうして連合軍は、三つの方面から、じわじわと国境にせまってきたのであった。

 しかも、十九年にはいってからは、連合軍の空軍はいよいよ勢力をくわえ、毎日のようにビルマの空を我物顔にとびまわっては、思いのままに爆撃をくりかえしはじめたのである。それは、ちかぢかに、彼らが国境をこえてビルマ領内に反撃をくわえることを意味しているものであった。

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  1. 2018/06/25(月) 13:25:06|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 そこで、ビルマ防備にあたっていた第十五軍の牟田口軍司令官は、連合軍の総攻撃の間近いことを予期して、そのまえに、こっちから攻撃を開始していくべきであると考えたのである。攻撃は最大の防禦であるというのが、日本陸軍の鉄則であった。

 最初は、第二のビルマルートの基地といわれるレドを占領して、重慶の喉もとをしめることを考えたのであるが、この道はもっともきびしい山岳と大樹海がつづいていて、物資を補給する方法がまったくつかめないため、大本営の反対にあって実行することができなかった。

 そこで、次に考えられたのが、インパール作戦だったのである。ところが、この作戦もレド作戦とおなじように、補給路の問題でゆきづまったまま、なかなか実施されなかった。大河あり大山脈ありで、道らしい道はなく、重砲や大砲などはとうてい持っていく見込みもたたなかったからである。

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  1. 2018/06/26(火) 05:15:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 しかし、日に日にはげしくなる空襲によっても、敵の空軍が増強していることが、手にとるようによくわかった。それは敵の戦力が完備してきていることを物語っていた。

 機械化された連合軍の大軍が、三方からどっとおしよせてきたとしたら、ビルマ防衛の五個師団では、ささえきるのは容易なことではない。

 牟田口軍司令官は、もうこれ以上、じっとして連合軍の総反攻をまってはいられないと思った。彼はかつて、猛虎の勢いでマレー半島を縦断して、しゃにむにブキテマの堅陣をぬいて、シンガポールを陥落せしめた猛将である。彼は大本営や参謀たちの常識的な考えでは、この国境線に勝ち抜くことはできないと考えたのである。

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  1. 2018/06/27(水) 05:15:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 彼はまた、山岳密林戦では、すべてを機械化に頼っている英印軍は不利であって、日本軍の不屈の精神力と銃剣突撃の方が有利であると考えていた。大本営や参謀たちの不安を嘲笑するように、彼は自信にあふれて云った。

 「インパール攻撃は、大河ありけわしい大山脈ありで、補給の方法もつかず、重砲や大砲も持っていけないと心配するが、そんな心配は無用だ。快進撃で敵の前線をふみやぶって、敵の砲をぶんどればよい。食糧もそうだ。敵の貯蔵している食糧をぶんどるのだ。わが軍には、困苦欠乏にたえる大和魂がある。それは銃剣突撃は、密林戦には有利である」

 また、従軍新聞記者の質問にたいしても、

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/28(木) 06:00:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 「東京の連中はくだらぬ心配ばかりしている。インパールが一ケ月でとれるかとたずねてくる。なあに、あんなところを攻めとるのに一ケ月もいらん。三週間で十分だ。

 大本営の連中は、敵の物量や科学機械兵器をおそれて心配しているが、今度の戦争はそんなものは役にたたない。敵の空軍力についても心配はいらん。密林の中におれば空からは見えないから、敵機が何千機いてもおそれるにたりない」

と確信にみちて云った。

 しかし、東条陸相はこの作戦に不安をいだいていたため、なかなか決断を下さなかった。彼の決意がやっとかたまったのに、インドの独立運動の指導者として、ネールとともにその名もたかいチャンドラ・ボースの影響が甚大であった。

 そのころ、ドイツに亡命していたボースが、ドイツと日本の潜水艦をのりついで日本にやってきた。彼はいった。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/29(金) 13:29:55|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 「もしも、日本軍がインド作戦を行う時があったら、自分はインド国民軍の先頭にたって、祖国へすすむであろう」

 彼はシンガポールにわたるや、ただちにインド国民軍の指導者となり、熱狂的な人気と支持をえて、インドの首都デリーへの進撃の気勢をあげたのである。

 大本営はこれに刺激された。そして、ひょっとしたら、インドの民衆がボースに呼応して反英ののろしをあげるのではないかと期待をいだいたのである。

 伊藤正徳氏は、その著書のなかでこうのべている。

 「チャンドラ・ボースが、もしいなかったら、インパール作戦はあるいはおこらなかったかもしれない」と……。

 しかし、ボースの有無にかかわらず、インパール作戦は実施されたにちがいない。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/06/30(土) 09:58:45|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

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