いしずえ

第三巻激流の巻

 あのものすごい重圧感と破壊力をもって、地上の生物めがけてせまってきた爆撃機軍の傲岸ともいうべき威容、また入れかわり立ちかわり、軽妙な低空飛行で地上帰射した各種の新鋭機、あれだけの空軍が、無傷のまま日本軍の防衛しているビルマの上空をやすやすと飛んで、泰緬国境ちかくまでやってきたのである。

 これは、比較にならない空軍力の違いを意味するものであった。あの近代的に武装された敵の空軍に向って、四千五百の部隊は、掩護してくれる空軍もなく、旧式の銃をもって立ち向っていかねばならないのである。

 おそらくこの武力の相異がビルマ戦を決定することになるかもしれない……と戸松はおもった。

   (43 43' 23)

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  1. 2018/08/01(水) 13:33:55|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 彼はふと、去年の夏、彼が和平運動をおこして内地にかえっていたとき、陸軍士官学校で物理の教官をやっている長兄が、心配そうにいった言葉を思い出した。

「どうも、日本の兵器は、技術的におくれているように思うが、あんた方の立場からみるとどう思いますか。

 士官学校で、毎日将校達の様子をみていて感ずるのですが、技術学校までが立身出世の方にばかり熱心になっていて、どうも、兵器の研究に情熱をもやしていないように思うんですよ。こんなことで、米英に勝てるもんですかねえ」

   (43 43' 23)

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  1. 2018/08/02(木) 18:41:37|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 日本人は、たしかに人間としての正しい目標をうしなっている。

 人間としての完成をめざすとか、創造的探求に生涯を貫くとか、というような、内面的に充実した人生をしりぞけて、表面的な虚名や立身出世のみをおいたがる傾向をもっている。

 立身や出世や営利にそろばんの合わないようなことはたとえそれが国家や民族のために大切なことであってもかえりみようとはしないのである。

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  1. 2018/08/03(金) 08:10:46|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 学問にしろ、思想にしろ、教育にしろ、政治経済にしろ、その時代時代にうまく間に合っていきさえすればよいのだ。兵器もその例外ではない。

 こういう安易な便宜主義は、いつかは行きづまり挫折する時がくる。今度の戦争が、その時であるかも知れない……と、戸松は思った。

 彼は自分の考えを、星野伍長にも、また日頃したしんでいる五分隊長の笠原軍曹にも、語らなかった。

 しかし……みんなが一様に、日本軍は負けるかも知れないと、危惧をいだく時がやってきた。敵の空襲がいよいよはげしさをまして来たからである。

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  1. 2018/08/04(土) 15:20:50|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 せっかく構築した橋は、片っぱしから破壊されていった。一つの架橋をおえて、次の作業にうつる移動中に、今なおしたばかりの橋が、めちゃめちゃに破壊される事もしばしばであった。

 そんな時には、再び引っ返して修理にかからねばならなかった。

「日本の飛行機は、いったい何をしているんだ」

 がまん強い兵隊たちも、ついに怒りを発するようになっていった。

 その怒りをそそり立てるかのごとく、毎日のように雨が降り出したのである。六月の下旬、ビルマは雨期の最中であった。

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  1. 2018/08/05(日) 14:13:02|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

  最前線の戦闘

 ある日、後方に送られる異様な貨車が通り過ぎていった。いま地獄の底から這い出してきたような、衰えきった傷病兵が満載されていたのである。それ以来、来る列車も来る列車も傷病兵で満載されていた。

 泰緬国境ちかくの野戦病院か、タイ領内の病院に運ばれていくのに違いなかった。

 この十日ほど、敵の空襲も途絶えがちになっていたので、敵もビルマの雨には閉口してしまったのだろうと、戸松は考えていたのだが……この夥しい傷病兵の後送は、地獄絵の如き前線の激闘をしのばせるのに十分であった。しかもそれは、日本軍の死闘と敗北を物語っていた。

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  1. 2018/08/06(月) 15:29:39|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「どうしたんだ、いったい」

「どこから送られてきたんだ」

「多分インパールだろう。敗けたのかも知らんなあ」

 安東部隊の兵隊たちは、口々に囁きあったが、誰も確かな情報を知っているものはいなかった。

 それからというもの、三、四日おきに後方にかえってくる貨車には、必ず傷病兵や瘦せこけて疲れきった兵が乗っていた。

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  1. 2018/08/07(火) 09:25:05|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 それらの送還兵のなかには、貨車のなかでおいおいに元気を取り戻し、手当を必要としない兵も何人かあった。彼らは、一応後方まで連れ戻されたのち、それぞれ鉄道沿線の守備隊や工兵隊に編入された。

 安東部隊にも、前線の渡河作業や、密林の中に進路をきりひらく苦業をかさねてきた工兵が入ってきた。彼らの原隊は、ちりぢりに分散してしまって、今では有名無実の如き状態になっていた。

「きいたか、前線の惨敗を……」

「わが軍は、インパールで、ひどい負け方をしたそうじゃないか」

 送還兵の話は兵隊から兵隊に伝わり、今ではインパールの敗退を知らない者はいなかった。

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  1. 2018/08/08(水) 09:57:46|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「インパール攻略戦はめちゃめちゃだったらしいが、なんでそんな馬鹿な敗け方をしたものだろう」

 雨中の作業でずぶ濡れになった服を、焚火に乾かしながら、五分隊長の笠原軍曹が、どうも理解しがたいといった表情でいった。

 彼は、皇軍の必勝を信じ切っている一人であった。

「インパール盆地へでるまでの一ケ月の労苦は大変なものだったそうだよ。獣も通わないような山岳や密林を、死にもの狂いで切り開いていったというのだからねえ、人間わざではないよ」

 敗走兵から直接話をきいたという四分隊長の星野伍長が、顔をこちらによせるようにしていった。

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  1. 2018/08/09(木) 07:08:09|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 笠原軍曹も星野伍長も、勇敢にして沈着なことにかけては、軍人の手本のような男であった。たがいに気風がぴったりあっているせいもあって、戸松と彼等とはよく一座にあつまって話し合った。

 女の話、食べ物の話、賭博の話、その他もろもろの道楽娯楽の話の多い工兵隊の中にあって、思想、政治、外交、軍事を掘り下げて話し合えるのは、限られた少人数に過ぎない。彼らも、そうした真面目なグループの一組であった。

「やっと、印緬国境をこえてインパールを包囲したときには、弾丸もろくになく、食糧もろくろくなかったということだ。敵を包囲して敵が弱まっていくのをまって総攻撃するつもりだったらしいが、敵は弱るどころか空中補給でますます戦力が充実し、反対に我が軍は補給が全然ないため、どんどん衰弱していって飢餓状態になってしまったというんだ。

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  1. 2018/08/10(金) 11:02:35|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 そこへ連日の雨だろう。敵は頑固な建物や築濠の中にいるから、何日雨が降ったって平気だ。我軍は野営だからたまらない。服がびしょ濡れになっても、敵の目標になるから、火を焚いて乾かすこともできない。着替えもなし、食べ物もなし、悲惨きわまるものだったらしい。そのうえ、マラリヤ患者はどんどんふえていくしね。

 空中から敵の陣地に、どんどん食糧がおとされるのを羨みながら、このまま飢え死するか、病死していくことになるだろうと、泣き言をいい出す兵隊もいたそうだ」

「飢え死するくらいなら、敵陣に突入したらいいのではないか」

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  1. 2018/08/11(土) 14:55:39|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 笠原軍曹は、星野伍長の話をさえぎるように、憤然といった。星野伍長はこれを制して、

「なにしろ、道から橋から、谷から、濁流が溢れているんだよ。それに食う物も弾丸もなくて、どうして敵の陣地に突撃できるかね。栄養失調でふらふらになっている兵隊や、マラリヤで高熱を出している兵隊が多いのだ。指揮官も突撃しろとはいえんだろう。それは犬死しろという号令と同じようなものだからねえ」

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  1. 2018/08/12(日) 13:13:53|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 焚火はぶすぶすとけぶってばかりいて、なかなか燃え上らない。芯までしけっているのである。それを積み上げて吹きつけ、積み直しては吹きつけて、なんとか火勢をもたせようとして真剣になっていた兵隊たちも、何時の間にか手をやすめて聴きいっていた。

 褌一つの裸姿にも、この頃ではすっかり馴れきってしまって、作業をする時も休むときも、裸でいることが多くなっていた。

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  1. 2018/08/13(月) 13:19:06|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 それでも夜に入ると冷えこんでくるから、ぬれた衣服は乾かしておかねばならない。物資のとぼしいことにかけては、前線も後方も大して変りはなかった。只、後方におれば、食べものだけは、粗食ながらもなんとか不自由はなかった。

「ばたばたと病患がでて、進むこともできず、といってはこのまま包囲をつづけることも無意味だというので、なんとなく戦意がくじけている時、とつぜん退却命令が出たというのだ。この期におよんで、おめおめ退却するとは情ない、とぶつぶつ怒る者もいたそうだ。ところが、それからが大変なんだ」

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  1. 2018/08/14(火) 11:40:23|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 兵隊たちは、焚火が消えそうになるのも気づかぬ様子で、星野伍長の顔を見守っていた。

 それからの彼の話は、全く想像を絶するものであった。

 インパール攻略戦に参加した十五軍「烈」「祭」「弓」の三兵団の総退却が開始されたのは、七月十五日であった。

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  1. 2018/08/15(水) 23:25:59|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 そのころは雨期も最高潮に達し、河川は氾濫し、道も樹間も濁流が渦巻き、自分の足で退却できる者は、半数にも足りなかった。しかも、部隊の全員のほとんどが、マラリヤ、アメーバー赤痢、栄養失調、脚気にかかっていて、歩けない戦友を助けながら退いていくことのできる者は、数えるほどしかいなかったのである。

 烈兵団の宮崎少将の支隊だけが、患者を担架で五百キロ後方のジビウー山脈まで送り、更に空いている担架で、路傍にたおれている各師団の患者をひろっていくという、たくましく勇壮な例もあったが、他の部隊のほとんどの将校は、わが身一つを持ち運ぶのさえ容易ではなかった。

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  1. 2018/08/16(木) 10:03:07|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 退却は一応の秩序をたもって行われたのであるが、半数は無統制と混乱に陥り、ある者は密林のなかに迷い込んだまま飢え死にし、ある者は泥土ふかくはまりこんで、助ける人もないままにもがきながら息絶え、又ある者はマラリヤ熱のために歩けなくなるというように、到るところに皇軍の屍がむなしく散乱したのであった。

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  1. 2018/08/17(金) 09:58:57|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 重患者が自決する銃声を、後ろにききながら「明日は俺の番かも知れない」と、人事のように考えながらも、「生きるだけ生きねばならない」と歯を食い縛って歩いていたマラリア患者の兵隊も、その三、四日後には、泥水の中にのめり込んだまま息も絶え絶えとなってしまうのである。

「苦しいよう……いっそ一思いに殺してくれ……」

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  1. 2018/08/18(土) 16:06:39|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

と、一緒に逃げてきた戦友に頼んでみても、彼らとて、助けようにも手の施しようもないのだ。まして、今迄いっしょに逃げのびてきた戦友を殺すことなど出来そうにもない。ただ憐みと苦痛にみちた眼差しで、じっと見つめるだけである。そして、

「後から来いよ」

と、むなしい言葉をのこしたまま、自分自身もよたよたと這うようにして行ってしまうのであった。

 一、二時間後に、再び二、三の敗兵の群がやってくる。

「頼む、殺してくれ、らくにしてくれ……」

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  1. 2018/08/19(日) 14:25:41|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 病兵はもう一度、かすれた声で嘆願する。兵の中の決断力と元気のあるのがおれば、さっそく、

「よおし、今楽にしてやるぞおっ」

と云いざま、病兵の後頭部を狙ってダーンと小銃をぶっ放す。病兵は感謝の声もなく、事切れてしまう。

 確かに、再び苦しむことはない。楽になったのだ。戦場ではこういう救済の方法もありうるのだ。

 しかし……こうした非情の倫理ともいうべきものは、豊富で平静な感情では実行できうるものではない。戦場は人間の精神を極端に単純化し、野性に環元してしまうようであった。

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  1. 2018/08/20(月) 10:08:56|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 秩序と補給がたもたれ、よき指揮官をえた場合に、その単純化した精神は、高貴なまでに純粋へと高まり、ぎせい的愛国心に結晶してしまうのであるが、ひと度、指導者と秩序をうしない、飢えと苦難にそうぐうした場合には、野性の動物へと転落してしまうのである。

 日本軍の兵隊のなかには、敗軍の混乱にのぞんで、さいごまで、誇りたかき人間として、あるいはヒューマニストとして、貫いていける者は少なかった。戦争は民族の人間性を暴露し、秩序をうしなった敗退は、更にその自己慾をみにくいまでに露出せしめたのであった。

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  1. 2018/08/21(火) 13:38:23|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 飢えと病魔にゆきだおれた兵隊の衣服や持ち物の中から、時計や食べものを盗みとる野盗のような仕業は、まだしも許される。山野の土塊のなかに、朽ち果ててしまうよりは、同胞の誰かが使用してくれることを、死者もおそらく望んだであろう。

 だが、許されないのは、退却にあたって渡された、取って置きの僅かな米を大切に持ちつづけている同胞を、後ろから射殺して米を奪った事例である。

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  1. 2018/08/22(水) 15:25:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戦闘配置中に、後ろから上官を狙い撃ちするという例は、大東亜戦争中には各所にいくつかあった。これなども、日露戦争当時には絶対に無かったことである。日頃の上官の冷酷な横暴に対する反抗と復讐の執念がさせたわざであって、狙われる上官にも半分の責任はあった。

 しかし、自分の飢えを凌ぐ為に、同じように飢えに耐えながらも、最後の一握りの米を大切にしている罪なき戦友を撃ち殺して、それを奪いとるという仕業は、もはや許さるべきものではない。それは人間以下のものであった。

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  1. 2018/08/23(木) 16:06:26|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 指揮棒のふりようによっては、崇高なぎせい的戦士となり、個々別々に放ってしまえば、餓鬼道にまで彷徨いこんでいく、この人間性の振幅をなんと解釈すべきであろうか。

 日本人の教育には、もっとも大切なものが一つ忘れられている……と戸松は思うのであった。

 インパールの敗兵は、九月も終わる頃になっても、なおも一団づつ後送されてきた。その都度無統制にして悲惨な敗退の模様が、兵隊の間で話題にのぼった。

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  1. 2018/08/24(金) 14:07:35|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 日本軍の実質そのものに、もっとも根本的なものが訓練づけられていない……戸松は軍の盲点をこれでもかこれでもかと見せつけられるような気がした。

 あとから送還された兵隊の話によると、日本軍の退却を知った英印軍が、泥土の中を懸命に逃げていく退却軍をめがけて、猛然と追撃しはじめたとき、インパールの惨劇は、言語に絶する程に悲惨をきわめたものになったという。

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  1. 2018/08/25(土) 20:30:20|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 枕に縋り、四つんばいに這いながら、逃げのびようと必死になっている病兵を、敵の巨大な戦車が、雑草でも踏み倒すように踏み躙りながら突進し、迫撃砲弾が、前方を走る日本兵めがけて雨霰のごとく降り注ぐ……それは最早、戦いではなくして、一方的な惨殺そのものであったというのだ。

 戦争とは一体何だろう……滅多に口に出来ない問いを戸松は心の中で何度も呟いてみるのであった。

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  1. 2018/08/26(日) 12:07:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戦争は国家相互間の利害や支配欲の衝突を解決せんとする、手段にすぎないのではないか。だが、しかし、現代は、力によらなければ、何一つ国家間の困難な問題を解決することの出来ない段階にあるのだ。戦争はまさしく必要悪である。

 兎に角、世界は今、弱肉強食の思想的基盤にたつ力の世紀である。人間社会のことごとくの問題が、権力、武力、物力、金力いづれかの優劣によって決せられているといってもよい。しかも、それらは、更に強大な力へと進展し、人間をいよいよ冷酷殺伐なものに化そうとしているのである。

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  1. 2018/08/27(月) 18:05:28|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 人類は、世界の一切の問題の最も根本的な解決を、何に求めるべきかを未だに見出さずにいる。それは武力でもなければ権力、金力でもない、永遠にかわらざるただ一つのものである筈だ……戸松は遙かインパールの空を見つめ乍ら、じっと考えつづけるのであった。

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  1. 2018/08/28(火) 10:50:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 彼はふと、個人的に何の恨みもない人間同志が、獣のようになって殺し合わねばならないことに嫌悪を覚えた。

 しかし次の瞬間、彼はあわてて、自分の弱い心の陰を振り払った。祖国の危機を眼の前にして、理想と現実の矛盾にとまどうこと自体、ゆるされるべきことではない。今の場合、矛盾をそのまま肯定し、日本人として現実に生きていかねばならない……と、思いをかため直したのである。

 更に彼は、この戦いの中から発見し掴みえた現代の多くの矛盾、邪悪、虚偽を分析して、それを解決し、人間の未来を方向づけるような思想原理を残しておかねばならないと考えた。

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  1. 2018/08/29(水) 13:58:03|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戦死すれば、戦後にのこった同志への遺言となり、生還すれば、世界平和の原理として、これをもって祖国の未来を開いていくべく半生を捧げていこうと心に誓ったのである。

 その日から彼は紙を求め、作業のひまひまにこつこつと日々の思索を綴っていった。これが戦後間もなく出版された「生存法則論」の「思想篇」草稿であった。

 インパール敗退は、軍事評論家のいうとおり、日本の敗戦を早めた一つの契機となったことは確かであった。

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  1. 2018/08/30(木) 13:39:25|
  2. 永遠の道 戸松登志子著
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國 乃 礎

Author:國 乃 礎
   綱 領
政官財・癒着根絶
マスコミ横暴撲滅
国賊売国奴殱滅
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