いしずえ

第三巻激流の巻

 兄の近所の人達も、誰一人として、まだ疎開のことを考えている者はいなかった。だいたい東京の郊外に住む勤め人といわれるインテリは、半永住の知的出稼ぎ人ともいうべき種類の人が大多数であったから、ほとんどが田舎に郷里をもち、いよいよとなったら肉親や親戚のもとに転がりこんでいけるという、頼るべき拠城をもっていた。

 敵が日本本土にくるまでには、まだまだフィリピンもある、台湾もある、沖縄もある、動くのはまだ早い……アメリカの科学兵器の進歩に感嘆しながらも、戦局の推移を日本的尺度ではかっている兄の考え方が、知識人一般のものであったというべきであろう。

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  1. 2018/12/01(土) 15:26:37|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戦局の危急は、念仏か題目のように、繰り返し繰り返し唱えられ、戦意をあおりたてていたが、一般市民にとっては、それはあくまでも観念としての危機であって、彼らの実生活は、明けても暮れても、衣料や食品などの生活用品の調達に忙しかったのである。

「欲しがりません勝つまでは」こうした標語があちこちで眼に映り耳に入ってきて、国民の心にブレーキをかけていたが、それでも人々は、地位や知人や職場を利用し、或いは商人の機嫌をとったりして、手に入りにくい服地や嗜好品を獲得することに熱心であった。

「隣の家では白いごはんを食べていたわよ」

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  1. 2018/12/02(日) 13:17:07|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 子供の報告は、いかに隣家に対する羨望と嫉妬の情をそそりたてたことか、雑穀の混入量が多過ぎるといって、いかに米屋の主を罵ったことか、野菜の配分が不公平だといって、いかに不平をならしたことか。

 兎に角、東京生活は、けっして暮しよいものではなかった。だが、人々は動こうとはしなかった。

 山火事を予感する野蜂よりも、嵐を直感する白猫よりも、人間は危急にたいして鈍感なものである。

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  1. 2018/12/03(月) 10:17:10|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 人間は理性を尊重し、知識の倉庫を頭脳のなかに築きあげるのに懸命なあまり、神から与えられた直観力を無視し、ついに消滅させてしまったのであろうか。しかも、人間が誇りとするこの理性や知識なるものも、人間が自慢するほど、全能で正確なものではなかった。

 太平洋諸島の玉砕、ビルマ戦線の後退、支那大陸戦線の停滞が、つぎつぎ報ぜられているにもかかわらず、日本の理性は、情勢を綜合して、半年後を予測することすらなしえなかったのである。

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  1. 2018/12/04(火) 08:05:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 もし戸松が、この頃日本内地にいたならば(彼の当時の直観力と行動力は特に鋭敏で、歯車のまわる如き正確さと、野性の動物の如き機敏さと旺盛さがあったと、わたくしは信じている)彼の直観力は、戦局と国民生活の現実から何かを探りとり、何かを警告し、何か行動をおこしていたに違いないのである。

 日本の多くの理性が、決断に迷い、成り行きを眺めて、手を拱いたまま輝きを失っている時、彼は直向きになって動いたに違いない。怒濤の如く荒れ狂う時流の中にあっては、それは木の葉がそよいだ程の、微々たる動きに過ぎなかったかも知れないが、それでも彼は、主体的に動かずにはいられなかったに違いない。

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  1. 2018/12/05(水) 10:13:10|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戸松は叫んだであろう。

「マリアナの惨敗は、日米の戦勢を、決定的に逆転させてしまった。もはや敵は日本をみくびってかかるだろう。和平交渉の時期は永久に去った」と。

 また彼はいったであろう。

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  1. 2018/12/06(木) 08:50:28|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「敵がサイパンにきたら、吾が思う壺である―――と、東条がサイパンの守備を誇り豪語していたにもかかわらず、このありさまだ。もう、軍人の云うことは当にならん。軍人が政治を遣る限り、戦争はいよいよ収拾つかないものになる。日本は政治において、もう敗れている」と。

 太平洋の防波堤といわれていたサイパンの呆気ない玉砕は、わたくしの心に、戸松の主張と印象を鮮明に呼戻した。そして、彼は再び、わたくしを支配しはじめたのである。

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  1. 2018/12/07(金) 18:16:50|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「なぜ、何時までも東京にぐずぐずしているのだ。今に空襲で交通を遮断されるような事になったら、どうするのだ」

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  1. 2018/12/08(土) 21:55:51|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 彼の声が、しきりにわたくしを、せきたてた。

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  1. 2018/12/09(日) 08:17:56|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 わたくしも又、兄を急き立てた。

「お兄さん、せめて子供達とお姉さんだけでも田舎に帰したらどうなの。小さい子供がこんなに沢山いたら、いざという時に大変よ。少し暢気すぎるんじゃない?」

 兄は気乗り薄そうに言った。

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  1. 2018/12/10(月) 10:11:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「そんなに慌てんでもいいさ。昨日も隣の松山さんと垣根越しに話したんだが、あの人も、なあに大丈夫ですよ、東京は広いですから、郊外の方は心配ないでしょう、といっていたよ。あそこの家では、たとえ空襲がひどくなったとしても疎開しないんだと云って、落着いたもんだった。家だけが騒ぎたてるのはおかしいよ、子供のことを思うと、一寸心配でもあるがね、まあ、成り行きに任せることにするさ」

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  1. 2018/12/11(火) 15:23:28|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 と、思案の外に放り出すように言った。眼の前で破壊が行われてない限り、本気になって対策を講ずることが出来ないのかも知れなかった。

 結婚いらい一年余の間、先々へと思いを走らせて計画し、行動する戸松の動きを見続けてきたわたくしは、成行きに任せている東京のインテリ―の理性が、無気力と思われる程、主体性と積極性にかけているように思われてならなかった。

 わたくしは政変のあった数日後、さっさと荷物を纏め、九時三十分の夜行列車で、東京を離れたのである。

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  1. 2018/12/12(水) 16:03:15|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 奥羽線まわりの青森行の夜行列車は、思ったより閑散としていた。東北方面に行く列車は、買出しの群でごった返すということを聞いていたがそれは土曜から日曜にかけてのことなのであろうか。

 三等車の仲程の一画に、わたくしと母は、ゆったりと席を占めた。

「すいていてよかったねえ、これなら明日の朝まで横になっていける」

 発車すると、母はすぐに座席の腕木にタオルを重ねてのせ、それを枕にしてごろりと横になった。

 開け放された窓からは、涼風が吹き付けるように入ってきて、暑さを吹き払ってしまったようだ。戦争という意識を捨ててしまえば、全く平穏そのものの汽車旅行であった。

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  1. 2018/12/14(金) 17:02:26|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 汽車の振動は、人の神経を軽いリズムにのせてしだいに解放感へと誘っていく。東京を刻々と離れることによって、戦争からだんだん遠ざかっていくように感じられた。

「ぐう……ぐう……」

 母はもう寝息をたて始ている。驚くほど、寝付きの早い人だ。

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  1. 2018/12/15(土) 17:00:37|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 白っぽい縮み浴衣を着ているせいか、色黒の顔がいっそうくすんだように見える。その顔を、薄暗い電燈の光が、無遠慮に照らして、彫りとったようなくらい陰影をつくっていった。

 高く大きめの鼻は、愈々物々しく頑固そうに聳え、閉じた瞼のあたりや、頬から顎にかけての筋肉の起伏の影が、深い嘆きと苦悩の色を滲ませているかのように、もの悲しく顔をくまどっていた。

 それは、これまでに見たことのない、疲れきったような母の顔であった。

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  1. 2018/12/16(日) 17:13:01|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 わたくしは驚いて、意外なものを発見した思いで、じっと母の顔を見つめ続けた。見れば見るほど、それは苦悩をたたみ込んだ顔に見えた。

 これまで、この母の苦労をしみじみと考えてやった事があったであろうか……と、わたくしは考えてみた。わたくしには、そういう優しさはなかったようだ。

 それどころか、母と向き合うと、わたくしは妙に母の意見に逆らってみたくなるのであった。母の高い高慢そうな鼻に対する反発か、それとも、あの眼尻の切れた大きな眼に光る、男勝りの気性に対する反感か、兎に角、母と話し合っていると、つい言葉を返したくなるのであった。

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  1. 2018/12/17(月) 16:02:50|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 わたくしは少女の頃、母がもっと繊細な詩情をたたえた、高尚な女性であってくれるといいと思っていた。母もまた、お前を我儘に甘く育て過ぎたようだと、こぼしてきたものであった。

 母を理解できる年頃になってからも、母とわたくしの心は、二本の平行線のように、しっくりと結び合うことは殆んどなかったようだ。

 こうして侘しげな苦悩の影をやどして寝んでいる母の顔をみていると、自分が本当に我儘に過ぎて、母を理解し、その苦衷をくみ取ってやろうという思いやりを持っていなかったこと、母に対する娘としての感情が未熟だったことに、思いあたるのであった。

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  1. 2018/12/18(火) 16:57:31|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 実際、わたくしは、自分の知らない母の半生、田舎の大家族主義の家庭や社会の中で揉まれ続けてきた複雑な母の人生を、一度も考えてみたことはなかった。第一、十三歳の時に郷里を離れたわたくしは、生活の中で母とふれ合うことが殆んどなかったのである。

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  1. 2018/12/19(水) 10:11:55|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 四十七歳で未亡人となった母は、傾きつつある祖先伝来の家を支えて、苦闘し続けてきたものに違いない。わたくし達には何一つ知らせなかったが、田舎の狭い社会のなかで、相当苦しんできたに違いない。

 人間の表裏を知り過ぎ、人の裏を考える老獪な母の一面は、その苦闘のなかで長じたものであろう。母のそうした内面が、その表情や言葉にちらちらと出てくるとき、わたくしの若い感情が刺戟され、爆発したのではないかと思われる。

 つい半日前、つまり今朝もこんなことがあった。食事の後、母は立ち上ろうとした兄を呼び止めていった。

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  1. 2018/12/20(木) 16:07:31|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「肇、おまえ、どう思うかい。登志子が戸松のお金を預かっているようだけどね。こんど秋田に帰ったら、全部両親の前に差し出してしまうと云っているんだよ。

 わたしは全部差し出すことはないと思うんだけどねえ。むしろ、そのお金はそのままとっておいて、戸松が帰還して新たに家庭を持つ時に用立てるべきだと思うし、それに万一、帰還が長びいたときには、自分のお金を持っていないと不自由だからねえ。

 金というものは、一度出してしまったらもう自分の思い通りにならんものだから、自分の手から離してはいけないと、わたしは云っているんだよ」

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  1. 2018/12/21(金) 16:53:05|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 母はこれまでに二、三度、この事を繰り返して云っていたのであった。

 元の席に座って、煙草に火をつけ乍ら聞いていた兄は、吸い込んだ煙を「何んだくだらない……」とでも云うように、ぷうっと吹き出したまま黙っていた。左の手で顎を無精髭をいじり乍ら何も聞かなかったような顔をして、いつまで経っても、ぼんやり窓の外を眺めていた。

「ねえ、肇、どうだろう。わたしは反対なんだけどね」

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  1. 2018/12/22(土) 10:00:30|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 母は兄の関心をうながすように、声を強めていった。
 
「出すにしても、せめて半分はとっておくようにと云うのだけど、この子は、それは自分が私有すべき金ではないといってきかないんだよ。戸松の帰りが五年六年と長びいたら、自分が不自由することはわかりきっているんだけどねえ。わたしがいくら話してきかせてもきかないから、お前から何んとかいってやっておくれ」

 兄は迷惑そうに、口をへの字にぐっと曲げた。尖った顎の小山に、小さい隆起がいくつできた。兄が不機嫌な時の表情であった。しかし、彼はわたくしの方に向って、穏やかに言った。

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  1. 2018/12/23(日) 11:01:05|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「よほどの大金か」

「そう、中国の将軍から餞別に貰ったのよ」

 わたくしは冷やかに笑いながら答えた。この問題にあなた方の意見は入れられませんよ、という、嘲笑的な気持ちがあった。

「戸松君はその処置について、何か云いのこして行かなかったのか」

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  1. 2018/12/24(月) 07:13:22|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 兄の手にもっている煙草の灰が、ゆらりと落ちた。母は何か云いたそうに、頬をふくらませながら、黙ってそれを拭き取ってやった。

「いったわ。これだけあれば、三年や四年親に孝養をつくすことが出来るって、お前にやるとはいわなかったわ。だから、これはお母さんの云うようなお金ではないのよ」

 わたくしは、突っぱねるような調子でいった。

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  1. 2018/12/25(火) 11:15:37|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「なんという頑固者だ」

 母は呆れたように眼をぱちくりさせていたが急に声の調子をやわらげて、

「戸松は男だから細かいことに気がつかないのよ、そこはそれ、女の立場で、ずっと先のことまで考えておくものですよ」

と、ねちねちと説得するようにいった。

 高飛車な調子から、ものやわらかな懐柔調に変じていく母の老獪さに、わたくしの神経はぴりぴりと刺戟された。

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  1. 2018/12/26(水) 10:26:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「なんだって自分の心を汚してまで、自分の将来のことばかり考えなくてはならんのよ。わたしの精神的誇りの始末はどうしろというの?わたしは、親のために何かを残してやりたいという戸松の意志を実行するだけだわ。この問題に関しては、誰の意見もきき入れません」

 自ら驚くような癇ばしった声を、わたくしは母の鼻面に投げつけたのであった。

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  1. 2018/12/27(木) 08:57:50|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 兄も瞬間おどろいたようであったが、すぐにやにや笑いながら、煙草の吸いさしを灰皿にねじつけて、笑いをふくんだ声でいった。

「お母さん、これは少しお母さんが出しゃばり過ぎているようですよ。登志子の意志を尊重してやりなさい。

 戸松君は両親を信じているんですよ。これで孝養をつくせという戸松君の言葉もなかなか味があるし、これは私有すべきでないと頑張る登志子もいいところがあるよ。戸松君の両親は、きっと可愛がって面倒をみてくれますよ」

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  1. 2018/12/28(金) 19:56:13|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 兄はこれ以上の問答は無用と考えたものか、そそくさと立上って、茶の間を出ていった。

 廊下の向こう座敷では、先に食事をすませた子供たちが、どたんばたんと大騒ぎであった。小学校も幼稚園も夏休みに入ったばかりであったから家の中は奇声や泣き声が絶えなかった。

「静かにせんか」

 兄は大して効果のない叱声を残したまま、玄関脇の書斎に入っていったようであった。

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  1. 2018/12/29(土) 10:56:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 わたくしも、不機嫌な顔をした母を茶の間に残したまま、荷物の整理にかかった。東京空襲ももはや仮想でなくなった今、目ぼしいものは全て持って行きたかった。

 娘のころ着た人絹の古着まで行季に詰込んだ。ただ小学校、女学校のころ着た着物だけは、そっくり置いて行くことにした。これらはほとんど木綿とメリンスであった。そしてその全部が、亡き姉のお下がりであったから、母にとっては姉の思い出を偲ぶ唯一の手がかりとなるものであった。

 昼ごろまでには、すっかり荷物が出来上った。いよいよ切符を買い、チッキにつけて送り出そうという頃になって、母が思い余ったような顔でいった。

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  1. 2018/12/30(日) 13:31:13|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

新聞 いしずえ 新年号 1月1日発行 №46

新聞 №46

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  1. 2018/12/30(日) 13:55:38|
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政官財・癒着根絶
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