いしずえ

第三巻激流の巻

 それに明治以来の国民教育そのものが、海国という地理的条件も、風雨の自然現象も、ことごとくを国体の尊厳にむすびつけ、日の本の国を犯すもの、必ずや神罰にあうものと国民の心の深くたたき込んできたのである。

 そのためか、ひそかに戦争を批判し、敗勢を憂え、悲観している者であっても、心の一隅では「あるいは」という奇蹟的勝利の期待を最後の日まで失ってはいなかった。

 戦後になって、自分はそんなことを思ったこともなかったと云い切る者があるとしたら、それは虚偽というものである。体制の転覆を狙う共産主義者でない限り、国体と民族によせる信頼は、誰の胸にも多少の違いこそあれあったはずだ。

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  1. 2019/12/02(月) 13:23:58|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 こうした民族的自信を背景に、自己過信と必勝の虜になって、米英撃滅の鬼と化していたのが軍部ことに陸軍であった。

 小磯首相は軍部の意向をくんで最後の一勝に希望をかけていたが、一方ではひそかに外交手段による和平の道をひらこうと手段を講じていた。しかし戦局の悪化のため外交工作は一向に進まず、政局の行き詰まりを打開することは困難となり、四月初旬、ついに辞表を提出した。深い霧に包まれ暗礁に乗り上げたような日本の形勢を打開していく方途を全く見失ってしまったのである。

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  1. 2019/12/04(水) 13:22:33|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 この頃、天皇を取り巻く重臣の間では、早期和平か、聖戦完遂かの二つの意見に分かれていた。本土決戦による敵勢撃破を唱える軍部を代表するのは、東条前首相で、この意見に対し、勇敢にも真向から反対し、このままいけば亡国的崩壊となることを力説し、戦力の残っているのを条件にして有利な降伏をすべきであると主張したのは近衛文麿氏であった。近衛氏は支那事変当初は優柔不断であったが、戦争末期における言論は誰よりも勇敢であったという。他の重臣は講話をするにしても一度戦果をあげてから、有利な時機を選ぶべきだという軍部よりの意見に傾いていた。

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  1. 2019/12/05(木) 13:16:31|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 天皇は科学者でいらせられるから、合理的に考えて、何一つ楽観すべきものもない日本の形勢を深く憂慮されたことに違いない。支那事変当初「三ケ月以内に解決してみせます」と奏上した杉山陸相の言以来、今度こそ今度こそと、軍部は幾度か天皇を裏切ってきたのだ。亡国寸前のこの時に至っても、軍の必勝の信念は、天皇をも重臣をも圧倒し、日本の真中は、濃い霧に閉ざされたままであった。

 四月上旬から中旬にかけての東京空襲は、明治神宮を全焼し皇居の一角を炎上したのみならず、小石川、豊島区、東京湾の西岸一帯を襲い、その破壊の悲惨は人々の心を一層暗いものにした。池袋が焼け、東上線の線路上に死体がごろごろしているという噂を聞くと、いよいよ戦火が身近くせまってきたことを感じた。

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  1. 2019/12/06(金) 11:01:58|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 丁度その頃、秋田の父から連日のように電報がとんできた。「早く帰れ」「いつ帰るか」「無事でいるか」 等等、矢継ぎ早にとんでくる。東京空襲の報に、戸松の父母が毎日肝を冷やしているさまが、手に取るようにわかった。

「早く帰れ」「早く帰れ」

 母や兄はしきりと急き立てた。しかしわたくしは東京の最後を見届けたいと考えていた。神風が吹かない限り、このままいったら、近い将来東京には必ず終末がやってくる。それは明治以来の日本近代化のシンボルとして誇ってきた若き都の死である。海より渡りきたアメリカの黒船の吐く巨砲に開け、空翔る銀翼の放つ火焔に包まれて崩れていく、誇高き都の死をぜひ見届けておきたかった。

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  1. 2019/12/07(土) 10:00:12|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 しかし、どうしても東京を発たねばならぬ時がやってきた。兄の学校が富士山麓に疎開することになったのである。

 兄は母と私に田舎に帰るよう強要し、留守番として深川で羅災したという職人風の一家をつれてきた。五十年輩の老夫婦と、二十代の若夫婦と親戚の者だという中年の男の一群であった。

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  1. 2019/12/08(日) 13:30:13|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 彼らは着のみ着のまま逃げ出したのだと云っていたが、何処でかき集めたのか二、三組の蒲団と炊事道具だけは持っていた。下町の職人気質は、あけっぴろげで無遠慮で、世話好きで、三、四日もすると主客転倒して、彼らが主側でわたくし達が居候のようなありさまになってしまった。母やわたくしが容易に手に入れる事の出来ない鶏や卵や燃料などを、どこからか手軽に運んできた。わたくし達は貴重な食べ物のお裾分を貰っては、そのつど恐縮して礼を云わねばならなかった。不愉快ではあったが、断るには惜しかった。彼らは混乱、無秩序の中の実力者であった。日を重ねるにつれて、この家の中に占る彼らの座がぐんぐん広まっていくのを感じた。母もわたくしも兄の出立とともに、この家を出ることを決意した。

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  1. 2019/12/09(月) 13:27:53|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 母の切符は兄の学校の証明書ですぐ入手できたが、わたくしは姓が違う為、兄の家族の扱いを受けることは出来なかった。未明に起きて池袋駅に切符を買いに行ったが、焼跡に建てたバラックの小屋のような駅前には、徹夜で座りこんでいた人が二、三百名にも達し、切符の買えるのはその半数で、残りの者はこのまま明朝まで座り続けねばならないということであった。

 まる一日徹夜で座りこむには、それなりの用意をして来なければならない。一先ず家へ帰ったわたくしは「ああ、とうとう東京を出る自由もなくなったわ」と長嘆息した。

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  1. 2019/12/10(火) 13:55:50|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 その声を耳にした例の職人によって、困難はすぐ解決された。彼らの羅災証明書を譲ってくれたのである。もう利用するだけ利用したからあげましょうと云うのだ。羅災証明のおかげで秋田行の切符はすぐ手に入った。

 四月も既に下旬となっていた。沖縄戦の酣であったから、B29はもっぱら沖縄や南九州の特攻基地を襲撃し、関東には暫らく姿を見せなかった。その代りP51がしばしば来襲しては東京の空を我もの顔で飛びまわり、低空から機関銃で通行人を狙い撃ちしたり、屋根や庭先にぱらぱらと、霰の降るような音をさせたりした。これらは沖縄中部から飛び立ったもので、この頃すでにアメリカ軍は沖縄に上陸し、全島を南北に中断し、制海、制空権を完全に握っていた。

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  1. 2019/12/11(水) 16:37:03|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 兄の出立を見送ったのち、わたくしも母も東京を発った。涙に咽んで別れを惜しむ母を東京駅に送り、出発時間より二時間も早く上野駅に着いたのであるが、構内は人の渦でごった返していた。駅前の広場にも四、五列に並んだ人の波が、幾重にも折れ曲がって続いている。

 行季を担いだ男、大きなリュックサックを背負った女、どの男もどの女も、背負えるだけ背負い、持てるだけ持ち、ある者は喚き、ある者は怒り、苛々と殺気立っている。

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  1. 2019/12/12(木) 10:37:26|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 一時半ほどすると改札になったらしく、前方の人波が雪崩のようにだゞゞゞと動き出した。河川が氾濫したごとく列も順番もあったものではない。力ある者は押し分け押し退けて前に進み、力弱い者は荷物におされ荷物に挟まれて悲鳴を上げる。荷物と荷物が絡まり合って罵しり合う声、怒鳴る声、まさに人間獣のひしめき合いである。

 わたくしも一方の荷物が隣りの人の大きな荷物の後に挟まり、どうしても抜き取ることができない。並んで動いている間はよかったが、進む速度に違いが生じてくると、身体と荷物が離反し荷物を手放さざるを得なくなった。荷物に執着すれば人の波に逆うことになり、押し倒され、踏み潰されてしまう。残った片方の荷物をしっかと小脇にかいこみ、わたくしは夢中で改札口を駆け出していった。

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  1. 2019/12/13(金) 17:18:10|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 駅員はいたようであったが、切符を見せる者は一人もいない。後の圧力で改札口から絞り出され、ホームに入っている列車めがけて無我夢中で走っていく。その列車が何行であるか、見定める余裕などなかった。みんなが死物狂いで走っているから、自分もその後を必死になって追っていくだけだ。

 やっと汽車に乗りこんだが、既に超満員で、通路にも洗面所にも人が溢れていた。

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  1. 2019/12/14(土) 13:08:32|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 人の波は止まることを知らぬように後から後から流れ込み、やがて座席の間にもぎっしりと詰め込み、身動き一つも出来ない。たとえ座席に着けたとしても、三人、四人掛けであるから、尻を半分に細めて固くなっていなければならないだろう。

 ガラスの壊れた窓、煤煙で真黒になった窓枠——わたくしはふと、一年半前、杭州の旅に出る時、上海駅で見かけた中国下層民の列車を思い出していた。家畜を無理矢理に詰め込んだように、窓という窓にぎっしり並んだ虚ろな顔、どの顔もどの顔も薄汚れ、疲れ、濁っていた。が、今わたくしの乗っているこの汽車は、それ以上に汚れ壊れ、しかも人々は非情で殺伐である。

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  1. 2019/12/15(日) 17:26:21|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 押され押されている中に上体は傾き、足は爪先立ちになったまま安定を失う。更に押され、押し返され、やがて怒声となる。

 皇大神宮の一部や明治神宮が敵弾に犯されたとき、国民の魂も犯され炎上したのであろうか。人々は我のみ、我のみを思う人間獣になり下っていた。

 B29が鉄道や水源地や電源地を破壊しなかったことは、日本にとってはまだしも大きな救いであった。もし最初に狙われていたら、東京の混乱はいかばかり凄惨であったことか……。

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  1. 2019/12/16(月) 10:33:03|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

  敗戦の日近し

 インパール戦争が完敗に終ったことは、もはや疑うべくもない事実であった。

 しかし、戸松はまだ失望はしなかった。タイもマレーも仏印も、まだまだ健在である。敵の空軍力と機甲力が、圧倒的に優勢であるとはいうものの、南方軍の総力を一つに結集したならば、残った戦域を城塁として、南西の敵を喰い止めることは可能なことであると彼は考えていた。

 連日のように、ビルマからタイに落ち延びてくる破衣痩身の傷病兵や民間人の群をみながら「ようし、戦いはこれからだぞ」と、その都度彼は自分自身に強く云いきかせた。

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  1. 2019/12/17(火) 12:55:33|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 だが、そのうちに、さまざまの報道が、次々と耳に入り、凄まじい変化は、彼を愕然たらしめたのであった。

 フィリピンの失墜、硫黄島の玉砕、爆撃機による本土の猛襲——ビルマの日本軍が、英支軍を主力とする連合軍に、嵐の如き追撃をくらっているとき、一方アメリカ軍は、大型の颱風のような攻勢をもって、南方の島々を征服しつつ北上し日本本土に肉迫していたのだ。

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  1. 2019/12/19(木) 10:26:22|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 敵が中部太平洋を攻略しない中に、講話の機会をつかまねば一切が手遅れになる——と、一年半前、時の首相東条大将に意見具申して反戦主義者の烙印をおされた彼の主張は、見事に適中したものというべきであった。

 しかし、この主張の適中は彼を苛立たせ、失望させた、僅か二、三ケ月の間にフィリピンを奪還され、沖縄までが危機に瀕しているようでは、もはや講話の余地はない。敵は降伏を要求するだろう。

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  1. 2019/12/20(金) 15:37:36|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

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 アメリカ軍が凄まじい勢いで本土に肉迫し、故国が危急にみまわれているとき、イギリス軍を泰緬国境やマレーで防いでみたところで、何になるだろう。彼は異国で戦う意義を見失ってしまいそうであった。

 更に、四月にイタリアが敗北し、五月にベルリンが陥落し、全ドイツ軍が降伏したということを知ったとき、世界に包囲され、孤立無縁となって奮戦死闘し続けねばならぬ日本の窮地を思い、胸が痛んだ。

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  1. 2019/12/21(土) 15:15:22|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 その頃、南方軍の間で「挙軍特攻、一人十殺」の合言葉が流されていた。本土決戦が免れえぬ事態となった今、総群は、戦況をあきらかにして、全軍の奮起と決意を促す必要を感じたのであろう。

 全員特攻となる日も、そう遠いことではあるまい、と戸松は思った。奇蹟を頼み前途を楽観するには、状況はあまりにも窮迫しているように考えられたのである。

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  1. 2019/12/22(日) 13:56:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 インパール戦の敗北、その後の終結にあたって、ぜひ、ここに書きとめて置きたい事が一つある。日本陸軍の明暗を、対照的に示すものとして、この戦い末期の退却戦に注目してみる必要がある。

 ビルマ方面軍は、十個師団からなり、本営を首都ラングーンに置いていた。ビルマ国境の西北部、インパールの攻略にあたったのが既に述べた通り第十五軍で、インパール戦を成功せしめるため、北部と北東部の米、支軍を国境にくい止める任を帯びていたのが、主として第三十三師であった。これまで繰返し述べてきたとおり、この第十五師、第三十一師団は国境線に惨敗し、折重なって敗走を続け、敵の勢いは燎原の火のごとく、ビルマの原野をなめつつあった。

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  1. 2019/12/23(月) 12:36:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 ひとり、印緬国境の西南部にあった第二十八軍だけが、敵の正攻を受けることなく、健全無傷のまま、長い戦線を固守していた。司令官は桜井省三中将で、その麾下には、インパール戦でもっとも勇猛であった宮崎繁三郎少将が、五四師の師団長として加わっていた)。宮崎師団長は、上海十三軍時代、戸松の直属上官で、戸松の言葉に深い理解を示した人であった)

 桜井中将は、度量と大局的戦略観をもった武人であったから、敗走中の主力軍団の弱体化を憂え、自分の軍団中から一個師団を割いて、苦闘中の友軍に送ることを方面軍司令部に申出、惜し気もなく三分の一の軍力を割譲した。

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  1. 2019/12/24(火) 10:17:06|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 しかし、せっかく割いて廻した兵力も、南方総軍(司令官寺内大将)の命により、タイ国の防備のため、ビルマから引きぬかれてしまった。総軍はこの頃すでにビルマを諦め、タイ、マレーの防備の強化を考えていたのである。

 敵は折から、中部ビルマに怒涛の勢いで殺到中である。この敵を防ぐべく戦力の不足を投げていたビルマ方面軍司令官、木村中将はこの申込みを承知し、五五師(花谷正師団長、北垣征四郎、石原菀爾と供に満州事変を起こした三羽鳥)を自軍から割いて主戦場に送ったのであった。

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  1. 2019/12/25(水) 13:38:51|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 三箇師のうち、二箇師を気前よく他の軍団に譲った第二十八軍は、宮崎少将の五四師団を主力とする三分の一の弱小兵力をもって、西部から攻めよせてくる敵軍に強靭な抵抗を続けていた。しかし、このような桜井中将の犠牲的度量もなんらの効なく、ビルマ軍主力は中原戦に悉く崩れ、首都ラングーンに、総退去を始めたのであった。

 そのうちに、北から日本軍の主力を追撃してきた敵の一軍団が、桜井中将の軍団の東方に攻め下り、第二十八軍は完全に敵の大軍に東西から挟まれる結果となってしまったのである。

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  1. 2019/12/26(木) 19:18:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 軍はひとりビルマの西端に孤立し、二面から敵の攻撃をうけ乍らも、ラングーン本営からの命令を待っていた。やがてのこと、ラングーン方面軍司令部が逃げてしまったという噂が伝わり、よもや、と思いつつ、参謀をラングーンに派遣してみると、はたして、本営は蛻の殻であった。電話も電信も通じているにもかかわらず、配下の軍団に一言の報せもなく、川辺軍司令官ほか幕僚が慌てて逃げ出してしまうとは、統帥の無法も甚だしいものというべきであった。

 兎に角、ラングーン撤退が、いかに混乱を極め、慌しいものであったかは、貴重軍需品を撤送するために用意された発動機船に婦人従業員が満載され、貴重軍需品は置去りとなり、慰安婦が優先的に撤退の便を図られ、民間邦人のみが、徴発されて、強制的に都市の死守につくという乱脈ぶりによっても推量るができる。

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  1. 2019/12/27(金) 18:30:21|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 既に汽車は不通となり、ラングーンからモールメンを経てタイ国にいたる街道は、逃走の人で犇き、置去りにされた軍需品の倉庫には、ビルマ人が蟻のようにたかっていたという。方面軍司令部ともあろうものが、このような醜い卑劣な逃走をしなければならぬとは、よほど統率と秩序を欠いていたものと思わせる。しかも出先の運団に連絡も取らず、民間人のみに死守を命じて逃げるということは、当時の緊迫した事情のいかんをとわず、総帥部として許されるべきことではない。

 兎に角、このようにして方面軍司令部は逃げ去り、主力軍団も裸になってタイ国境近くに落延び、桜井中将の第二十八軍のみが、ひとりビルマ西部に置去りにされ、米英文の連合軍の中に全くの孤立状態におちいってしまったのである。ことここにいたっては、桜井中将も全軍の退却を決意し、ベター山系のジャングルの中を集結地ときめ、広大な戦域にちって敵と戦っている部下に引き上げの命令を発した。

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  1. 2019/12/28(土) 08:16:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 宮崎少将は最後の中隊を掌握するまで、四十日余を待っていた。前線から帰りついた将兵たちが、師団長の恩愛に泣いたことは言うまでもない。昼間は隠れ、日没ともなれば渡河し、行軍するという苦難を重ねて、五四師の将兵が指定されたジャングルに辿り着いた時には、集結命令を受けてから既に三ケ月余も経っていた。もはや軍司令官は撤退してしまったものと観念していたところ、桜井中将はそこから更に百キロも深いジャングルの中で、部下全部が集結するのを待ち続けていたのであった。今度は宮崎少将が司令官の恩愛に感泣する番であった。

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  1. 2019/12/29(日) 15:01:15|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 そのあと二十八軍は、敵軍包囲の中を、爬虫類の巣のような大ジャングルを抜け、大河を渡り、膝まで没する湿地帯を抜け、竹の子を主食としつつ退却行を続けていった。その苦難が一通りのものでなかったことは、ビルマ南東部に引揚げたとき、全軍の半分になっていたことによっても知ることができる。

 このことは、見捨てられ孤立した軍団部隊が将師の情愛ある統率により引揚げを成功した美談として、長く人々の記憶に留めるべきことである。と同時に、このような大局観と統率力に優れた将軍が、一軍団の司令官に留まり、大勢を決断できず、慌てて卑劣な撤退をなす将軍がその上部にあったという、日本軍の人事の拙劣さを露出したものとして注目すべきことでもある。

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  1. 2019/12/30(月) 08:32:28|
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國 乃 礎

Author:國 乃 礎
   綱 領
政官財・癒着根絶
マスコミ横暴撲滅
国賊売国奴殱滅
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