いしずえ

第三巻激流の巻

 軍の必勝の確信に早くから不安を懐いておられた天皇は、この提案に満足され、さっそく木戸幸一内大臣にその実現を命じられた。木戸内府はただちに個別的に首相以下の各閣僚を説得し、さらに陸海空の最高戦争指導者たちを納得させ「国体の護持を条件とする講話」の線で和平の空気をまとめ上げていった。しかし半数はしぶしぶの賛成であったから、これを完全なる賛成一致に固めるため天皇に勅言を願った。天皇はただちに最高戦争会議の成員を招集され―「従来の観念にとらわれることなく、戦争の終結について速やかに具体的な方策をたて、実現に努めるように」―という意味のことを率直に述べられた。

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  1. 2020/04/01(水) 10:33:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 ことここに到るまで、黙して発することなかった現人神の告示であった。必勝の信念を固持し続けていた陸軍の代表梅津参謀総長も、聖断の前には返す言葉もなく恭順するほかはなかった。こうして状勢は一変し、和平の火は点じられたのである。

 早期和平は、ソ連の仲介による講話という方針のもとに進められることに一決した。政府は日本の漁業放棄や、満洲中立案などの譲歩を餌に日ソ和親を懇請したが、ソ連の態度には一片の誠意も手がかりもなく回答を避け続け、のれんに腕押しの有り様であった。宮中を中心とする和平派は焦慮し、天皇の親書を持って特派使節をモスクワに送ることとなり、特使として近衛文麿公が選ばれた。さっそく天皇御親書の内容を明らかにして、ソ連外相モロトフと近衛使節の会見を申し込んだが、ソ連政府は依然として確答をさけ続け、日本政府の再三の切願に対し冷淡な態度をとり続けていた。

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  1. 2020/04/02(木) 10:35:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 それもそのはず、ソ連は昭和十八年秋の米・英・ソ三国巨頭会談いらい、米・英と共に日本を壊滅する決意を堅め、そのころ交戦中であったドイツを屈服させた後、日本打破に参加する確約を米・英首脳と交わしていたのである。更にこの春二月には、ヤルタ会談によって、ソ連の対日参戦の代償までが、正式に約定されたのであった。

 このような世界の動きから遮断され孤立化していた日本は、ソ連の野望を読みとるとこが出来ず、ひたすらソ連にすがって有利な終戦を望んでいたのであるから、盲目者が火中に向うが如き見当違いな苦労をしていたものといえる。

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  1. 2020/04/03(金) 10:02:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 天皇を中心とする側近、政府の和平論者が、ソ連の態度に狼狽し慌てているとき、これを嘲笑するかの如く発表されたのが米・英・支・三国共同によるポツダム宣言であった。それは十三ヶ条からなる無条件降伏の要求であって、最後に「これ以外に日本の選ぶ道は、迅速且つ完全なる壊滅あるのみ」と結んであった。

 この宣言は日本の最高指導層を再び対立させてしまった。側近、政府の和平派はいよいよソ連の仲介を切望して工作をあせり、主戦派の軍部は激怒し、宣言を踏み躙って断乎として対抗することを主張した。

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  1. 2020/04/04(土) 15:10:32|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 当時、一般国民には和平か、抗戦かをめぐっての中央指導層の論争は知らされることもなく、ポツダム宣言の内容すら一部を削除し、七月二十七日の新聞紙上に小さく報道されただけであった。この報道を軍の統帥部は、将兵の士気と国民の戦意を挫くものであるというので怒り、鈴木首相に迫って記者会見を行わせ、

「あの三国声明は、カイロ会談の焼き直しで、政府としてはなんら重大なる価値ありとは考えていない。黙殺するだけだ。あくまでも戦争完遂するのみである」

と発表せしめた。

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  1. 2020/04/05(日) 02:08:26|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 新聞は軍部の要求に従ってこの鈴木談話を大々的に取り扱い、日本の三国宣言黙殺・聖戦完遂の挑戦的態度を報道した。この報道は米・英を刺戟し、やがて米国に原始爆弾投下の決意をなさしめる事になったが、一般将兵や国民にも、いよいよ死か生かを決する決定的な時が到来した事をひしひしと感じさせた。

「いよいよ一億玉砕の決意をする時がきたな。敵がやってきたら、わしも竹槍を持って向っていくぞっ」

 戸松の父は囲炉の辺で気焰をあげた。わたくしは、まるで給料目的のごとく、ぶらぶらと会社に通うことにいよいよ嫌悪を感じ、七月末限りで辞職した。この一ケ月の間、北秋田地区には一度も敵襲がなかったように記憶しているが、米国の艦隊はいよいよ本土に接近し、近島、本州、北海道の一部に砲撃を加え、機動部隊が関東や九州に来襲し、日本人には本格的本土襲撃の近いことを思わせた。

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  1. 2020/04/06(月) 20:50:23|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

  暗い予感

 八月になった。暑い日が続いた。

 都市という都市が爆撃され、戦線が本土に迫ってきたというのに、田や畑の作物は例年に劣らぬ繁茂をみせ、見事な成長をとげつつあった。

 父が庭先に作った西瓜の玉も、この頃めきめきと膨らんできて、発生(なり)はあと三、四日もしたら食べられる程になっていた。これまで庭に西瓜を作ったことはなかったのだそうだが、戦時下には花よりも実を作るべきだと云うわたくしの主張を入れて、父が菊の間に西瓜の苗を植えたものであった。植え付けが晩かったせいか、八月になってやっと中身の充実が感じられる程に成長した。父はこの緑の玉を宝物のように大切にし、下に藁をしいたり、日がよく当るように外の蔓を移動させたりした。

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  1. 2020/04/07(火) 15:37:31|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「戦場では水もろくに飲めんだろう。この西瓜は戦地の息子に食べさせたいという一念を込めて作ったものだから、初生は、代りにあんたに食べてもらおう」

 父はこの一途で母性的な言葉を、何の衒いもなく率直に云った。そして日に何度か西瓜を見に行き、長い間そこにしゃがみ込んでいた。刻々と育つ生命の神秘に耳を澄ませているのか、それとも戦地の息子の上に思いを馳せているのか、みどりの蔓葉の中に蹲った浴衣の背は、憂愁の詩情をたたえているように見えた。

 忘れえぬ八月七日の夕、ふと庭に眼をやったわたくしは、数羽の鶏が西瓜の実にたかって何かしきりに争っているのを見た。急いで駆け下りて行くと、親鶏を交えた三、四羽がパッと逃げ去り、一羽残った白い雄鶏が、西瓜の実に頭を突っ込むようにしたまま尚も一心に突いている。「シッ、シッ、シッ」わたくしは飛びかからんばかりにして追っぱらった。

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  1. 2020/04/08(水) 12:12:18|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 西瓜はぱっくりと赤い口を開け、無惨に中を食い荒らされていた。わたくしの叫び声で駆けつけてきた父も暫し啞然として見つめていたが、いきなり下駄を脱ぐと、遠くでけろりとしている鶏の群をめがけて投げつけた。鶏はケッケッケッケッと異様な声を上げながら逃げ散っていった。よくも食べたものだ。西瓜には大きなトンネルが出来ていた。

 翌朝、悪戯ものの若鶏は、仲間を二、三羽ひきつれて堂々と玄関から上ってきた。コツ、コツ、コツ、爪で床を叩くような音がいくつか入り乱れて中廊下から響いてきて、あっ、鶏が上ってきたな、と思ったとたん、若鶏の姿が茶の間の前を横ぎって、台所の方に抜けようとした。

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  1. 2020/04/09(木) 10:38:27|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 わたくしが立ち上るよりも、父の火箸が飛ぶ方が早かった。太い輪で連なっている一対の鉄の火箸は、すっと空間を切って、小走りしている鶏の頭にはっしとばかりにぶつかったのである。鶏は声もなく倒れた。悲鳴を上げたのは他の鶏で、突然の襲撃に慌てふためき、二本の短い足をもどかしがり、羽を広げ首を伸ばして、救いを求めながら玄関の方へ逃げ散って行った。

 父は立ち上って若鶏を抱き上げた。

「おっ……死んでいる。なんも殺すつもりではなかったのに、死んでいる……。不吉だな」

と呟きながら、そのまま台所から裏庭に出て行った。

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  1. 2020/04/10(金) 08:08:58|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 川端で洗濯をしていた母に若鶏の死骸をみせて小言を云われたのであろうか。囲炉の側に帰って来た父は、

「昨日から嫌な事ばかり続くな」

と呟きながらしょげかえっていた。

 新聞が配達されたのは昼近くであった。人手不足のせいか一日一回の新聞が十時過ぎになってやっと届くのである。ラジオを好まない父は、一切の情報を新聞から得ていた。いつものようにゆっくりと眼を通した。

「おっ、アメリカは新型爆弾を作ったな」

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  1. 2020/04/11(土) 08:50:06|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 突然大声を発し、老眼鏡を指先でぐっと上に押し上げるようにして、父は再び活字に食い入っていった。

 新聞には簡単に、八月六日、広島市が敵の新型爆弾によって相当の損害を蒙ったことを報じていた。唯それだけの記事であったが、B29の爆撃の凄まじさを見聞きしている者には、戦争がいよいよ末期的激烈さを加えてきた事を予感させた。

 毎日、新聞の報道を隅から隅まで読んで、一喜一憂を重ねてきた父には、特に強い衝撃であったらしい。

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  1. 2020/04/12(日) 13:33:50|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「本土決戦になれば陸軍の実力を結集できるから必ず勝つだろうと思っていたが、威力をもった新型爆弾でやっつけられたら、ひょっとしたら相撃になるんじゃなかろうか……」

 父は心配そうに独り言を云っていた。死んだ若鶏の肉に葱を入れて煮立てた鍋が昼食に出されたが、父は箸をつけようとはしなかった。

「わしは食いたくねえ。息子に食べさせたいなあと思いながら作った西瓜を食荒らした憎い奴だが、息子がこの鶏のように弾に当たってころっと死んだりしないように、わしはこいつを食べないことにする」

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  1. 2020/04/13(月) 10:00:03|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 父の微妙な連想にわたくしはぎくりとした。既に口に入れてしまった肉片を暫しもて余しやっとの思いで呑み下したほどであった。

「アメリカやイギリスが降伏を要求してきたり、被害の大きい新型爆弾が出来たりしたところを見ると、敵は大分優勢だな。昨日の西瓜のように、日本軍はあっちでもこっちでも相当に食荒らされているんじゃないか」

 父は病的なほどに西瓜と鶏にこだわっていた。不吉な予感が心に沁みついて離れないもののようであった。

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  1. 2020/04/14(火) 10:23:52|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 父の朝夕の祈りも、この日から一段と真剣になっていった。家の神棚を拝み、表庭の祠を拝み、さらに裏庭にまわって南の空に向って何か一心に呟きながら祈った。皇軍の勝利と、息子の武運を祈っているのに違いなかった。

 しかし、それにも拘らず、新聞の報道は一日増しに悪化していった。十日の新聞には情報局の発表として、敵米英が人類史上かつて見ざる残虐無道なる新型爆弾を使用して、日本国民に惨害を加えようとしていること、中立国であったソ連が突然敵側にまわって一方的に宣戦し、攻撃を加えてきたこと等を報じ、国体護持という最後の一線を守るために、一億国民が困難に打ち勝っていかねばならないことを訴えていた。

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  1. 2020/04/15(水) 13:58:26|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 降伏を感じさせるような字句は一つもなく、むしろ全軍玉砕の覚悟を要求する激烈なもので、いよいよ最後の時が来たという印象が深かった。

 十三日は旧のお盆で、母は土地の習慣どおり、強飯を蒸かし、鮨を漬け、天ぷらや煮〆を作って先祖の霊に供し、家族にもたらふく食べさせた。傷心の父の胃腸はこの強飯と天ぷらに傷つけられたものであろうか。十四日から激痛を訴え一時は注射で止まったが、頻繁に痛みを発する騒ぎとなり、翌十五日も昼近くになって痛み出し、医者が来るまでの一時間余、母とわたくしはおろおろするばかりであった。

 正午に終戦の玉音放送があったことを、駆け付けてきた医師から聞いた。

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  1. 2020/04/16(木) 11:20:05|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

「降伏の玉音を聞くことになろうとは思わなかった……小さくてよく聞きとれなかったが、厳かなお声であった」

 医師は多くを語らず、そそくさと帰って行った。腹の痛みの静まった父は、放心したようにぼんやりと天井を見ていた。やがて両の眼にしずくが溜まり、糸を引くように眦から溢れ落ちていった。

「天皇陛下が戦争を止めると云われたのか……降伏すると云われたのか……とうとう負けたのか」

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  1. 2020/04/17(金) 13:33:13|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 父は同じようなことを繰返し云った。父の不吉な予感は当たったのだ。それにしてもつい二、三日前まで鬼畜米英撃滅が叫ばれ、本土決戦論が日本全土を圧していたのに、この急変は一体どうしたことであろうか……。

 あれほど苛烈な戦争が、天皇の一声で突然ぴたりと終るということに、わたくしは不思議な思いがした。こんなにも急に止めることのできる戦争だったら、なぜもっと早く止めなかったのか。一年十ケ月前、戸松のような若輩ですら、この戦争の危険性を感じ、命をかけて早期和平を主張したのに、敵に降伏要求を突き付けられるまで、なぜずるずると戦い続けてきたものであろうか。天皇陛下の一声で、ぴたりと戦争が止められるものならば、天皇はなぜもっと早く、爆撃による破壊が全土に広がらぬ中に、止めようとはなさらなかったのか。

 この終戦を悲しんでよいのか、怒ってよいのか、喜んでよいのか、自分の気持をどう処理すべきかも分からず、わたくしは黙然として父の枕辺に座り続けたまま、空洞と化した西瓜をぼんやりと思い浮べていた。

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  1. 2020/04/18(土) 08:20:28|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

  講 話

  御前会議

 敵機の本土空襲が激しくなった頃、このままでは負けるのでないか―という懐疑が人々の脳裡を去来した。しかし一方では「まさか」と否定するつよい意識も根強かった。

 来る日も来る日も「必勝」「本土決戦」「一億特攻」のかけ声に追い立てられ、土を食み、草の根を齧っても、勝つまでは戦わねばならないものと心の底まで凝り固まったころ、何の前ぶれもなく終戦が宣せられたのだ。しかも九重の紫雲の彼方から、玉音も切々と、陛下が戦争を止めると仰せ出されたのである。

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  1. 2020/04/20(月) 08:26:01|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 なぜ急に降伏することになったのか、国民にはさっぱり分らなかった。だが、陛下の勅命ならば、国民はこれを無心に受けとめて随順しなければならない。陛下のお言葉が、あだやおろそかには軽々しく下されるものではない。降伏を宣せられた陛下の御苦哀はいかばかりか、そのことを思いしのんだとき、国民はすべてのことが直感的に理解されたように感じたのであった。

 このように、終戦は国民には極秘裡に、皇居を中心にすすめられたのであるが、今ここに大東亜戦争の記録をたどりつつ、当時の天皇陛下の最高指導層の対立と苦悶を偲んでみることにしよう。

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  1. 2020/04/21(火) 15:02:16|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 戸松が十八年の秋、単身和平運動を起こしたとき、当時鎌倉に閉居していた中国革命の志士、萱野長知は、説得に行った戸松を駅まで送り、訣別の際「遅かりし由良之助」と戸松の背中をぽんと叩いた。中国を知り、世界を知っている者は、その時すでに和平の機を逸したものと見ていたのである。

 あれから一年半「遅かりし由良之助」どころではない。もはや手の打ちようもないこの期に及んで、天皇の側近重臣たちは、やっと恐る恐る和平の動きを表面化し、溺れる者は藁をもつかむ心理から、誰一人信頼をおくものもないソ連に仲介を頼んだのであった。

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  1. 2020/04/22(水) 07:56:13|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 三ケ月前すでにドイツを降伏せしめ、近々日本を攻撃すべく準備をすすめていたソ連が、せせら笑うごとく相手にしなかったことはいうまでもない。ソ連首脳は袂にすがりつく日本を振りはらって、ドイツのベルリン郊外のポツダム宮殿において開催中の、連合国軍の首脳者会議に出席したのである。そしてソ連の回答を待ち望んでいる日本に、ポツダムから発せられたのが、無条件降伏を要求する米・英・支の三国共同宣言であった。

 この宣言によって、せっかく和平に傾きつつあった日本首脳群の意見は、再び真二つに分かれた。天皇側近の和平派はこれに狼狽し、少しでも有利な条件で降伏しようとしてソ連の出方にいよいよ期待をかけ、もともと主戦派である軍部は激怒し、こんな宣言は踏みにじって本土決戦で鼻をあかしてやろうと、共同宣言拒否を唱える声が高かった。

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  1. 2020/04/23(木) 08:50:00|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 更にこれを国民に発表するにあたって、両派の対立は再び白熱し、けっきょく国民の戦意を失わしめるような二、三の箇条を削り、「政府はこれを無視するらしい」という観測をつけて公表した。更にその翌日には首相談として「三国宣言黙殺」「戦争完遂」の挑戦的態度が新聞紙上に掲げられた。もちろんこれは、軍統帥部の要求によってなされたものである。

「ポツダム宣言黙殺」の首相談話は、アメリカの新聞には「拒否」と報道され、これはアメリカに原爆投下の口実を与えることとなってしまった。アメリカは十八年四月より原子爆弾生産に着手し、十九年九月には原爆攻撃部隊が編成され、準備万端ととのって、原子爆弾がB29の基地テニアン島に到着したのが、ポツダム宣言の発表された当日であった。

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  1. 2020/04/24(金) 07:37:21|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 アメリカは日本がソ連を頼りにし、これに縋っていることを知り、ソ連の参戦により日本を降伏させるより、アメリカの力によって降伏させ、対日戦における絶対優位を勝ち取ろうとしたものであろう。ソ連の参戦に先だって、八月六日、広島に史上第一弾の原子爆弾を投下したのであった。わたくしが西瓜や鶏の事件に明け暮れているころ、広島市は一発の爆弾によって一瞬の間に葬られ、数十万の市民が半数は惨死し半数は傷ついたのであった。

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  1. 2020/04/25(土) 18:06:53|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 広島市に新型爆弾が投ぜられたことは、前にも述べた通り八日に報道され、一般国民は一様に恐怖を感じたが、まさかこんなもの凄い破壊力をもったものであろうとは、想像することすらできなかった。ましてやその爆弾がどういう種類のものか推測できるはずもなかったが、中央では仁科博士の現地調査によって、八日には既に原子爆弾であることが報告されていた。そのため、天皇と和平派は一層戦争の終末を焦り、陸軍は依然として「最後の一戦」に希望をかけて、天皇をも動かそうとしていた。海軍はすでに戦力を失い、和平に傾いていたが、陸軍はまだ余力あり、本土決戦においてアメリカとの大合戦を果したいと渇望していたのである。

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  1. 2020/04/26(日) 06:32:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 ソ連が参戦して、ソ満国境を突破し、関東軍に攻撃を開始したのはその翌日九日の払暁であった。当然予期すべきことであったにもかかわらず、日本の和平派は、ソ連から宣戦を布告される瞬間まで、ソ連に縋り救いの手を期待していたのである。

 ことここに到ってはポツダム宣言を受諾するかそれとも新兵器に対抗しての一億玉砕か、生か死か、何れかを選び、速やかに断じねばならなかった。

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  1. 2020/04/27(月) 07:56:16|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 気をもまれた天皇は、木戸内大臣を通じて急速に終戦を決定するよう仰せ出された。聖慮を体した鈴木首相は、九日午前、戦争最高指導会議を開催した。この会議でポツダム宣言を鵜吞みにせず、条件を附して受諾することに全員が一致した。しかし附すべき条件について、又もや紛糾し対立した。すなわち東郷外相が、条件を団体護持に限るとしたのに対し、阿南陸相・梅津参謀総長・豊田軍令部総長の軍代表は、国体の護持のほかに「戦争犯罪人の自主的処罰」「自主的武装解除」「保障占領(本土は占領しない。やむをえない場合は東京除外)」の三条件をつけることを強調して譲らなかった。

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  1. 2020/04/28(火) 10:02:08|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 和平論の先頭にたってここまで引き摺ってきた東郷外相は、国体護持は談判の可能性あるとしても、他の三条件を持ち出すことは交渉決裂を意味し、国体護持すら難しくなるというので、軍指導者の意見に反対した。陸相及び参謀総長は、日本の軍力はポツダム宣言を無条件に受諾するところまで無力化していない。無条件に受諾するくらいなら、最後のチャンスを試みるべきであると主張して止まなかった。会談はこの両論に分かれたまま対立し、論議は決定するどころか白熱化するばかりであった。その会議の最中に、原子爆弾第二号が長崎に投ぜられたのである。

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  1. 2020/04/29(水) 07:08:58|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

第三巻激流の巻

 意見対立したまま戦争最高指導会議は一応打ち切りとなり、午後からは和平か抗戦継続かの閣議が開かれた。この閣議でも、外相と陸相が和戦両論を代表して激論し、半日たっても結論は得られなかった。休憩後の再開において、最高指導会議で決した「条件をつけて共同宣言を受諾する」旨が発表された。この時も、東郷外相は「国体護持を得られれば日本民族は亡びない。将来かならず再興の日があるのだから、この一点を条件に降るべきだ」と説き阿南陸相は「国体護持のためにも他の三条件が大切である。これを失えば護持が危ない。四条件をもって受諾するか、それとも戦うのか外はない」と反駁した。条件を一つに絞るか、四条件をつけるかは、どこまでいっても平行線を走るだけで、閣議は一致点に達することが出来なかった。

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  1. 2020/04/30(木) 10:27:33|
  2. 永遠の道 戸松登志子著

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Author:國 乃 礎
   綱 領
政官財・癒着根絶
マスコミ横暴撲滅
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