いしずえ

第二巻受難の巻

 すると、編物をつづけながら黙ってきいていた彼女が、わたくしの言葉がおわるやいなや、手をとめ、憤然と眼をあげ、忍耐の堰が切れたかのように急込んでしゃべり出した。

 「わたし、堀下とこんなに遠くはなれて住むんだったら、わざわざ上海になんか来るんじゃなかったわ。ひとりでいるんだったら何処にいても同じことよ。上海でちゃんとした家庭が持てると思ったから来たのよ。それなのにどうでしょう、堀下はさっさと南支の奥地へ行ってしまったじゃないの。手紙なんか月に一回来るだけよ。それもわたしからやった返事がくるだけよ。わたし、次の手紙がくるまでの間、前に来た手紙をこの部屋に来て繰返し繰返し読んでいるのよ」

 彼女は涙をうかべて帯の間をまさぐっていたが、二、三通のうすい手紙をひっぱり出し、その一通をひらいて、

 「ごらんなさい。わたし七月に虹口にいったときハンドバッグをとられちゃったのを知らせたら、こんな手紙がきたのよ。今度会ったらうんと上等のを買ってやるから気をおとすなって……

 いつ会えるのよ。ねえ、いつ会えるのかさっぱりわからないじゃないの。発つときには、一月に一回は帰るっていってたわ。だのに半年たっても帰って来ないじゃないの。

 早く帰ってきてくれと云ってやっても、仕事がおわったら帰るってそれだけよ。一年のちか二年のちかわからないわ。それまでわたし、ハンドバッグなしで暮さなきゃならないわ」

                  (43 43' 23)

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  1. 2015/12/07(月) 13:44:05|
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