わたくしは尚も黙したままであった。彼の眉間に、さっと苛立たしそうな影が走った。
しかし彼は努めて優しさを保とうとして、大きな呼吸と共に神経の沸きたてる波を腹中に収めた。わたくしがコスモスを背にした彼を、この上なく優しく穏やかな夫の姿を見たとき、彼も又わたくしの中に生気が枯れ萎んでいるのを感じとったのであった。わたくしの顔が蒼白に萎えきっているのに、彼は不安と憐憫を感じたのである。
彼は東京から帰ると、さっそく能代市で一番大きな織田病院の内科に行くように勧めた。ここで、わたくしは胃下垂という病名を貰った。
(43 43' 23)
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テーマ:このままで、いいのか日本 - ジャンル:政治・経済
- 2021/12/07(火) 16:46:19|
- 永遠の道 戸松登志子著
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